生物多様性保全に向けた取り組み
<GRI304-1, 304-2, 304-3, 304-4>

東京電力グループは、自然環境や生物多様性がもたらす様々な恵み(生態系サービス)が事業活動に必要不可欠であるとの認識のもと、電気事業連合会の一員として、持続可能な事業活動を目指すことを行動理念とする「電気事業における生物多様性行動指針(2010年4月策定、2020年6月改定)」に従い、自然共生型社会の構築に貢献するべく、①環境負荷の低減、②社有地等での希少種の保全、③生物多様性保全に関する理解活動の推進、等の生物多様性の保全と持続可能な利用に関する取り組みを進めています。

事業活動が生物多様性に及ぼす影響 <GRI304-2>

森林破壊の防止

東京電力グループは、直接的な森林破壊防止の観点では、設備設置等により森林開発が必要な場合、その地域の森林諸法令に定められた規制等を遵守し、森林が持つ多面的機能を損なわないよう保全措置を実施しています。また、尾瀬国立公園等、地域の水源涵養林等の保全・管理を継続して実施しています。間接的な森林破壊防止の観点では、グリーン調達を通じて、紙類や木質資源の原料が持続可能な森林経営に配慮されているものを採用するように努めています。

開発による影響の緩和

発電所や送配電設備等の電力設備の建設に際しては、土地の改変等が生物多様性に影響を及ぼす恐れがあります。東京電力グループは、事業地域の環境諸法令に従い、第三者との合意形成及び科学的な根拠に基づく環境アセスメント等を通じて、開発行為による生物多様性への負の影響を可能な限り少なくするよう、回避、低減、代償の順に保全措置を採用する考え方(ミティゲーション・ヒエラルキー)に従い、適切な自然環境の保全措置に取り組んでいます。

施設の存在による影響の緩和

施設から排出される環境負荷物質は、生物多様性に影響を及ぼす恐れがあります。東京電力グループは、環境負荷物質の排出基準・条例値を遵守するとともに、長期的な視点から、温室効果ガスGHGの排出についても、再生可能エネルギーの主力電源化に取り組むなど、環境負荷を低減する取り組みを実施しています。また、施設における緑地の管理を適切に行い、環境・景観維持に努めています。

尾瀬国立公園における保全活動 <GRI304-1, 304-3>

群馬・福島・新潟・栃木の4県にまたがる尾瀬ヶ原及び尾瀬沼を中心とする尾瀬は、高層湿原を主体とする湿原としては日本最大、900種を超える植物、160種の鳥類、40種のトンボなど豊かな動植物と変化に富んだ地形により学術的にも貴重な生態系から成り立ちます。2005年にラムサール条約湿地(基準:1、高層湿原・淡水湖、湿地タイプ:U,O、登録面積:8,711ha)として登録されました。

※ラムサール登録情報サイトはこちら(英語サイト)

当社はこの地域に16,334haの土地を保有しています。このうち尾瀬国立公園に該当するエリアは公園の約4割、特別保護地区(ラムサール条約登録湿地)の約7割(6,277ha)に及びます。これらの土地は当初は発電用地として、発電所建設計画撤回後は水源涵養林として保有し、およそ60年にわたり地域のパートナーとともに生態系の回復と保全活動に取り組んでいます。1995年の尾瀬保護財団設立後は同財団の参加メンバーの一員として、地域の皆様と共に尾瀬の自然保護や環境施策の促進を進めるとともに、尾瀬利用者への適正利用の働きかけ等を進めています。

尾瀬希少種リスト <GRI304-4>

ラムサール条約湿地情報票(RIS)より
学名 (英名) [レッドリスト※1]
和名 [レッドリスト※2]
植物(flora)
Nuphar pumilum [(VU)] オゼコウホネ [(VU)]
Chara globularis [(CR)+(EN)] カタシャジクモ [CR+EN]
Amitostigma kinoshitae [(VU)] コアニチドリ [VU]
Iris laevigata [(VU)] カキツバタ [NT]
Cirsium homolepis [(VU)] オゼヌマアザミ [VU]
Pogonia japonica [(VU)] トキソウ [NT]
Habenaria sagittifera [(VU)] ミズトンボ [VU]
Drosera anglica [(VU)] ナガバノモウセンゴケ [VU]
Viola kamtschadalorum [(VU)] オオバタチツボスミレ [NT]
Carex nemurensis [(VU)] ホソバオゼヌマスゲ [NT]
Utricularia uliginosa [(VU)] ムラサキミミカキグサ [NT]
動物(fauna)
鳥類 [Birds]
Aquila chrysaetos japonica(Golden eagle)[(EN)] ニホンイヌワシ [EN]
Spizaetus nipalensis orientalis(Hodgson's hawk-eagle) [(EN)] クマタカ [EN]
Accipiter gentilis (Goshawk) [(VU)] オオタカ [NT]
Falco pergrinus japonensis (Peregrine falcon) [(VU)] ハヤブサ [VU]
Pericrocotus divaricatus (Ashy minivet) [(VU)] サンショウクイ [VU]
Lanius tigrinus Drapiez (Thick-billed shrike) [(VU)] チゴモズ [CR]
Emberiza yessoensis (Japanese reed bunting) [(VU)] コジュリン [VU]
Gorsachius goisagi (Japanese night heron)[(NT)] ミゾゴイ [VU]
Pandion haliaetus(Osprey) [(NT)] ミサゴ [NT]
Pernis apivorus (Honey Buzzard) [(NT)] ハチクマ [NT]
Accipiter nisus (Sparrow hawk) [(NT)] ハイタカ [NT]
Lanius cristatus (Brown shrike) [(NT)] アカモズ [EN]
昆虫類 [Insects]
Nehalennia speciosa [(NT)] カラカネイトトンボ [指定なし]
  • ※1 

    ラムサール条約登録時(2005年11月)における環境省レッドリスト

  • ※2 

    本サイト更新時(2021年8月)における環境省レッドリスト
    CR+EN: 絶滅危惧Ⅰ類
    CR: 絶滅危惧ⅠA類
    EN: 絶滅危惧ⅠB類
    VU: 絶滅危惧Ⅱ類
    NT: 準絶滅危惧種

環境コミュニケーション

尾瀬における環境教育支援活動

当社にとって尾瀬はステークホルダーのみなさまとのコミュニケーションの場でもあります。特に、小中学校等の次世代層を中心に、尾瀬の貴重な自然を体験し、自然保護や生物多様性の重要性について学んでいただくため、環境教育支援活動を実施しています。

<参考>

  2018年度 2019年度
出前授業(件) 16 14
現地解説(件) 31 40
イベント対応等(件) 8 20
合計(件) 55 74