コスト削減の取り組み 現場レポートNo.3

小さな金物を活かす大変革。

物流のシステムからマネジメントまで、全ての更新が求められたリユース。

物流のシステムからマネジメントまで、全ての更新が求められたリユースのイメージ写真

資材のリユース対象を拡大し、調達コストを削減。

これまでも東京電力では、変圧器などの高額機材については積極的に修理を行いリユース・延命化を実施してきました。今回の取り組みでは、そのリユース・延命化の範囲を比較的低単価な金物類にまで拡大し、新しいリユース基準の確立や、流通システムの品質向上を図っています。
その成果として、2010年度約33億円だったコスト削減効果を、年間約37億円(▲約4億円)まで拡大しています。

調達コストの削減のしくみ

事業変革が求められた、圧倒的な物量を扱う金物類のリユース。

これまでも高額機材について実施してきたリユース・延命化を、単価の低い金物類まで拡大する。購入費用低減と廃棄物低減に貢献する取り組みだ。しかしその任に就いた配電技術グループのチームリーダー・鈴木は、一見シンプルにも思えるこの取り組みが、実は多くの課題をともなうことをいち早く把握し、あらためて気を引き締めた。
金物類は、単価は低いが物量は圧倒的に多い。東京電力の全地域の使用量をトータルすれば、調達費用の大きな低減効果を見込める。しかし、トン単位、何千人もの人員が関わる現場でリユース品のルールを変更するためには、運用の工夫や生産性の向上といった、スキームの簡素化・標準化が不可欠だった。
そこで避けては通れないのが、リユース品を含めた物流全体で、修理可能なものを選別し、修理内容により簡易なものは自社グループの資材センターで、部品の交換などオーバーホールに近いものはメーカーへという流れをあらためて構築することだった。そのためには、まったく新しい選別基準、新しい塗装技術を、自社で扱う必要があった。
これらが実現されれば、機材の新規購入費用や運送費用も抑制でき、しかも自社の修理技術も向上できる。メーカー依存から脱却し、技術力向上による東電グループ内での機材の内製化推進に繋がる発想だった。
鈴木は早速、技術・流通の現場に従事するスタッフと共に、具体的な検討を開始した。

リユースの全体設計を行う鈴木千秋(パワーグリッド・カンパニー 配電部 配電技術グループ)

わかりやすい選別基準を。その決め手は「色」。

「金物類のリユース・延命化にあたって、品質の確保が大前提と考えました」と、配電機材技術センターのチームリーダー鹿嶋は語る。鹿嶋が取り組んだのは、誰が行っても間違いが起こらない再利用の判断基準作りだった。
これまでは、塗装のはがれや錆がある金物はほとんど廃棄されてきた。しかし同じ「錆がある」でも、表面的な錆は防錆性能の低下に影響し、金属素地まで浸食した錆は強度に影響する。この違いを見極め、塗装をし直す工程を設ければ、金物類もリユースができるはずだ。これまでも再利用の判断や、メーカー修理の基準は存在したが、そこに「自社グループ内での修理が可能なレベル」という新たな基準を追加することになった。これが実現すれば、従来は廃棄処分となっていた金物にリユース・延命化の道が開ける。
鹿嶋はまず基準作りに取りかかった。錆が金属素地まで至っていなければ再利用が可能という推定のもとで、どの程度のめっき厚が保たれていれば塗装により再利用できるのかを試験・評価し、基準を確立した。さらに防錆効果を復活できる塗装技術を採用。加速劣化試験(意図的に劣化を早め製品寿命を検証する試験)によるリユース品と新品との劣化程度の比較をもとに、修理の仕方や塗料の選定など数々の課題をクリア。リユース品を新品同様に使用するための技術的なベースが整った。
しかしまだ問題はあった。修理・リユース可能かどうかを判断するのが、現場を担当する工事会社の「人の目」だということだ。複雑な判断基準では、見る人によって判断が異なる可能性がある。そこで鹿嶋が目をつけたのが、金物の表面上に付着した錆の「色」だった。金物表面は通常、溶融亜鉛めっきという防食加工を施してあるが、ミクロレベルでその断面を見ると幾つもの層で構成されており、錆の進行により現れた層の色が変化する。リユース可能な、軽微な錆の金物は表面が黄色っぽく見えるのだ。鹿嶋はこの「色」で識別できることを活かし、黄色い錆は修理対象、赤い錆は廃棄と、誰でもわかりやすい判断基準を見いだした。
さらに3ヶ月程をかけて物流拠点を回り、各所の責任者を対象に研修を行った。新基準の背景にある化学的な理論から設備の使い方、修理の仕方、確認のテスト、修理実施者の技能習得まで、その内容は金物リユース・延命化の全般にわたった。また選別方法についても、全ての工事会社を対象に説明会を実施した。
それでも立ち上がり当初は、鹿嶋のもとに多くの迷い・悩みの声が現場から集まった。「現場の声にはその都度丁寧に応えるようにして、できるだけリユースに回してくださいと伝えました。なによりも効率的にリユース品がまわることを心がけました。様々な問題が発生する中でも、選別の要である工事会社、簡易修理と物流の拠点である東電物流、関係者の皆さまにご理解いただき、真摯に取り組んでいただいています」と鹿嶋は当時を語る。物流拠点を回り、工事会社に足を運び、問い合わせにひとつひとつ応える。きわめて多忙な日々が鹿嶋の日常となっていた。

選別基準を作り新党させた鹿嶋一也(パワーグリッド・カンパニー 配電部 配電機材技術センター)

錆の色で判断する基準表

製品メーカーレベルのマネジメントを目指して。

「リユースした金物類は有価品ですから、物が動けばお金の流れが発生します。そうしたお金の授受を経理的にどう処理するか、どこまでロスなく、わかりやすく、効率的にするか。議論を重ねました」と言うのは、配電管理グループで資材運用管理を担当する佐藤だ。
リユースされた品は、当然のことながら次の現場で使用される。つまりその分の新品購入が不要となる。コストを考えればより多くリユース品を使いたいところだが、リユース品は設備撤去工事の結果発生するため、毎月の工事数によって量が異なる。つまり、撤去された量、良否の選別、新品購入量の調整の一連がリンクしていないと、金物類の調達そのものが立ち行かなくなってしまうのだ。そこで不可避となったのが、在庫管理、生産管理、流通管理といった、綿密なマネジメントの確立だった。
そうしたマネジメントから、簡易的な修理までを一手に引き受けたのが物流現場だった。物流現場には、150以上の事業所で選別された年間数十万トン単位の物品が集約される。在庫を管理するだけでも、新たに広大なスペースを用意する必要があった。

東電物流検査部の工藤は、当時を振り返りながら語る。「工事で撤去された金物類はスクラップとしてトン単位で扱われるため、どんな種類の金物が含まれるかは搬入されるまでわかりません。それらをひとつひとつ選別し、修理をするものは修理へ回し、さらにリユース品も日々流通させなくてはならない。リユース品の量に合わせて新規購入の量をメーカーと調整する必要もありました。また各拠点によって撤去品の搬入量にばらつきが生じるため、拠点間で物量を調整しつつ一定の修理生産性を確保することも求められ、そのため拠点と拠点を結ぶ便を増発するなどして対応しました」。在庫管理、生産管理、流通管理、その全てがゼロから、試行錯誤の繰り返しによって徐々に整備されていった。こうした物流現場の働きが、リユース・延命化の拡大には不可欠だった。このタスクに携わった関係者は、そう口を揃える。

リユース品のマネジメントを確立する佐藤竜也(パワーグリッド・カンパニー 配電部 配電管理グループ

物流現場の整備を担った工藤裕之(東電物流株式会社 検査部)

コスト削減の使命感がもたらした、資材流通の変革。

このリユース・延命化拡大によって、従来のリユースで年間約33億円だったコスト削減に、さらに▲約4億円が削減できた。この削減額は年間の撤去される金物類の量に依存するため一定ではないが、毎年、積み上げていくことができる成果である。
リユース品を増やすことで、それを流通させる物流システムの再構築が必要になった。従来、リユースの拠点は東京電力管内で155箇所の配電工事会社に分散していたが、それらを10箇所に集中化するなど組織を改編した。基準を設け、人を育て、他の業界の事例を一から学び、流通システム自体を変える。業界に先駆けた、東京電力にしかできないリユース革命を実現することができたのである。
この変革は、現在も進化を続けている。撤去され搬入される物品についてのノウハウが蓄積され、搬入される金物の種類や量が、データ化され想定できるようになった。その結果、トン単位ではなく「個数」でリユース品を把握できるようになり、より緻密なマネジメントが可能になった。また選別に関する技術の認定制度も導入。現在は東電物流が工事会社への指導を担い、工事会社内でも人材を養成できるような仕組み作りを行っている。
最後に鈴木はこう締めくくった。「選別技術や修理の技術、試験から物流全体のマネジメントまで、ほぼゼロから取り組みました。これは東京電力、東電物流、そして工事会社が一緒になり、トータルに動いたからこそ実現できたものです。今後もこのチェーンをきっちりと活かし、コスト削減に貢献していきます」。

協力会社:東電物流株式会社
「リユース拡大を目指して、思いを一つに。」

従来の再利用基準は、良品、メーカー修理、廃棄と3つの選択がありました。そこへ今回の「簡易な修理」が加わったことで、従来の3項目の境目もまったく変わることになりました。しかも金物の亜鉛めっき塗装は修理の現場も初めての体験です。これまでと違う手法を習得するために、単にやり方を教わるだけでなく、自分たちでも勉強会を実施して技能の向上に努めました。
元々なかった仕組みをゼロから作り上げるために、東電物流内でもタスクチームを立ち上げました。スペースの確保ひとつとっても、各拠点でどういう条件ならできるか、意見を出し合い、機材の置場をお互いに融通し合ったり、機材を整理したり、横の連携を最大限に活かしてリユース・延命化の拡大に対応しました。

(取材•執筆:経営合理化現場取材チ一ム)

肩書は取材時のものです。

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