コスト削減の取り組み 現場レポートNo.4

タンク回転数アップへの挑戦。

電気を安定供給するために。その使命感の下で成し遂げられたこと。

電気を安定供給するために。その使命感の下で成し遂げられたことのイメージ写真

LNG(液化天然ガス)基地における世界最高水準の運用効率をさらに進化。

東京電力では、LNG(液化天然ガス)基地の運用効率を測る指標“タンク回転数”を、2010年度に約23回転という世界最高水準にあった東扇島LNG基地において、震災後に約29回転まで向上しました。
当社は、石油に比べ経済的で、かつクリーンなLNGを、最大限かつ効率的に活用することに取り組んでおり、それによる2014年度の燃料費削減効果は約700億円強を見込んでおりますが、タンク回転数の向上はそれに大きく貢献するものです。

タンクの回転数をアップ

既に世界最高水準だったLNG基地の運用技術。

東京電力東扇島火力発電所のLNG基地。ここでは、容量6万キロリットル×9基のLNG地下式タンクから、東扇島・川崎・横浜の各火力発電所、またJR川崎発電所などへのガス供給を行っている。
2010年には年間約570万トンのLNGを扱っており、扱い量を基地のタンク容量で割り戻した指標である“タンク回転数”では23回転に達していた。東扇島LNG基地にはバースが1つしかなく、かつタンク容量の少ない基地であることから、受け入れ量を増やすためにはバースの稼働日数とタンクの回転数を上げるしかない。湾内の他LNG基地では1バースあたり年間400~500万トン程度の受け入れを行っており、タンク容量は東扇島LNG基地の約2~5倍となっている。
「23回転というのは、一般的にはフル稼働の状態。日本国内では突出した回転数で、世界でも最高水準※1。」とLNG管理グループの堀内は話す。
当時、東扇島のバースには毎年100隻近いLNG船が入港していた。言い換えると、1隻分のLNGを3~4日で消費しているということだ。LNG船の受け入れには、接岸から荷を降ろして離岸するまで、1隻につき1泊2日の24時間ほどを要する。その間、受け入れ制御室には荷役管理責任者をはじめとする9名一組が、作業終了まで付きっきりで管理を行っている。
年間の入港スケジュールは月毎に決められているが、その通りに運用できることはまずない。その理由は、LNG液化基地の不具合による生産の遅れ、運航している船の遅れ(気象・海象の影響や船の不具合等)があげられる。予定通りに東京湾に到着しても入港日の風、波の状況によってはLNG船の接岸ができないこともある。
さらに、気温や天候の影響で電力需要が予定通りにならず、発電所のLNG消費が進まないと、タンクの空き容量が確保できず受け入れができないこともある。また、LNGの消費先である発電設備の定期検査などのメンテナンスも考慮しなければならない。
以上のような状況を踏まえ、発電所ではLNGの消費状況やタンク1基1基のLNG液位、さらに液体のLNGをガス化するガス製造設備の状況を常時監視し、次回受け入れ、次々回受け入れ、さらに次々々回受け入れ時のタンク液位の予想と受入れ可否の判断を日々おこなっている。一方、本店はLNG液化基地、船の動向を確認し、異常があればすぐに発電所と情報共有し、LNG船の配船スケジュール変更を含めた社外調整を行っている。
設備を高稼働で運用していく上では、メンテナンスを適切に行う事も重要。船が停泊している年間200日ほどは受け入れ桟橋上設備のメンテナンスはできない。気象条件等による入港スケジュールのズレなども発生するなか、この合間を縫って必要なメンテナンスを行っている。
しかし東日本大震災で状況は一変した。原子力発電所が停止し、LNGで賄うべき電力需要が一気に増大したのだ。人々の生活は、計画停電など既に電力不足に見舞われている。一刻の猶予もない。フル稼働の状態だった東扇島に、東京電力本店から更なるLNG受け入れの要請が下った。
※1:2010年度 日本国内LNG基地の回転数ランキング
1位 東扇島23回転、2位 東電富津基地18回転、3位 知多LNG基地(中部電力・東邦ガス)14回転

入港スケジュール、着桟、受け入れ、離桟の一連を管理する堀内勝(東扇島火力発電所 LNG管理グループ)

急激に増加したLNG船の入港。安全荷役を完璧なものにするために。

もともとLNGは、安定的な供給を確保するための長期契約が主で、需要の変化に対応するための短期・スポット契約は限定的であった。震災後、需要の増加に対応するため、短期・スポット契約による調達が一気に増加した。次々と本店が掻き集めたスポット船は、待ったなしに基地に受け入れなければならないこととなる。
LNG船の受け入れは、安全の確保が絶対条件だ。「船が入港する際には“船・陸整合”という作業を必ず行います。船が桟橋に問題なく着けられるか。出港まで安全に係留できるか。危険物の係留ですから、それらが事前に確認できて初めて新しい船を入港させられます」と堀内。船体サイズが僅かに異なるだけでもリスクになるため、たとえ入港する船がどれほど増えたとしても、省くことはできない工程だった。
震災前は、タンク容量の大きい富津基地が大型スポット船の受け入れを担っていた。大型船の頻度が増し、富津だけでは対応できないことから、東扇島でも大型船を受入れることとなった。
東扇島のタンク容量は比較的小さいことから、大型船の受け入れにあたっては通常時受け入れタンク数(3タンク)では対応できない。これまでは3タンクを1グループとし3グループでローテーションを組んでいたが、受け入れ毎にグループを考える必要が生じ、細心の注意を払い対応することとなった。
さらに担当者のスケジュール調整、受け入れ設備のメンテナンス計画と、受け入れ対応業務もタイトを極めていた。 LNG受け入れ量の急激な増加に対応する体制がスタートしてから1ヶ月ほどが経過した。気付けば、100隻前後が限界といわれていた東扇島への入港が、年間換算で120隻を超えるペースにまで増加していた。

専用の桟橋に係留されるLNG船

様々な性状のLNGをいかに安全に受け入れるか。

船だけでなく、LNGそのものにも細心の注意を払わなければならない点がある。それは産地ごとに密度などが異なる、LNGの性状だ。東扇島では長年のノウハウにより、性状の異なるLNGを混合貯蔵してきたが、この混合を不用意に行うと、密度の違いによりLNGタンク内で十分に混合せず、ロールオーバー(急激な沸騰)が発生し、タンク内圧が急上昇する危険性があるのだ。異なるLNGの混合貯蔵には、厳密な受け入れ条件を組み合わせた事前のシミュレーションと受け入れ時の慎重なモニタリングは不可欠なのだ。
短期・スポット調達によって世界中の産地から集められたLNG。そこには当然のごとく様々な性状のものが混在している。どのタンクにどのLNGを貯蔵するのか。これまで以上に高度な管理が求められた。一方では大量のLNGが押し寄せる中で、入港予定や需要がほんの僅かにずれただけでも、タンクの受け入れ容量を確保できなくなるリスクが高まっていた。過去の常識にはない取り組みが東扇島で始まった。従来のタンク繰りにとらわれず、需要変動等による計画変更に応じて柔軟に9基のLNGタンクを組み合わせ、受け入れる体制を整えたのだ。多様化するLNG船とLNG性状。そして、適正なタンクレベル管理は複雑化を極めた。多様化するLNGを安全に完全混合貯蔵させるためのシミュレーションと1ヶ月先までのタンク液位管理のためのシミュレーションを繰り返し行った。日々の変動に対してきめの細かい管理を実施しなければ、限られたタンク容量を効率的に運用できないのだ。
ギリギリの運用を維持している東扇島LNG基地だが、気象•海象の影響により計画しているLNG船が遅れたときに活用されたのが、東京湾の対岸にある富津LNG基地との連携だった。二つの基地は東京湾の海底に延びるガス管で結ばれていたのだ。東京湾全体で弾力的かつ効率的にLNGを運用するために敷設されたものだった。電力供給の多くを占めるLNGに向けられた厳重なリスクヘッジの備えが、ギリギリの運用を迫られていた東扇島を救った。
無駄がなく不足も生じさせないLNG在庫管理と世界最高水準のタンク回転数の両立は、これら緻密な運用ノウハウの数々とLNG混合技術を初めとする技術をひとつひとつ積み重ねた結晶だった。

混合貯蔵を行うLNGタンク群

電力供給を停めない。それが企業としてのDNA。

ここで単純な疑問が生じる。平成22年度の段階で常識的にフル稼働とされていたタンク回転数を、どうしてさらに引き上げることができたのか。なぜ年間100隻前後が限界とされていた入港の受け入れを、120隻あまりまで対応できたのか。その疑問に、LNG管理グループマネージャーの高田はシンプルな答えを口にし、その横で堀内も頷いた。「やるしかないからです。もちろん、これまで長い時間をかけてひとつひとつ積み重ねてきた緻密な運用ノウハウの裏付けがあってこそなのですが」。
いかなる時も電気というライフラインを停めてはならない。それは東電社員に染みついた、全ての前提となる意識、いわばDNAのようなものだという。全てはお客さまへ電気を安全に、安定供給するため。そうした想いを多くの先輩から学び、やがて日常の業務を続けるなかで自分の使命感となっていく。
「安定供給は、僕らの、会社の存在意義そのもの」と高田は言う。約23回というタンク回転数を、僅かな期間で約29回転にまで引き上げる。それも世界最高水準云々が問題なのではなく、現有の設備で需要に応えていくために何ができるか、どうやったらできるかを突き詰めた結果として示された、一つの数字に過ぎないのだった。「たとえ現状が100%であり、それ以上を求められたとしても、なにより電気を停めてはいけない。やるしかない、そのために自分たちがここにいないと駄目なんだという意識を、全ての社員が持っているはずです」という高田の言葉に再び堀内も頷く。そうした社員の思いを支える体制づくりも進む。現在東扇島でLNG基地の運用に携わるのは18名。限られた人数でタンク運用をより効率的にできるよう、一人が様々なスキルを有するマルチ化が推進されている。
東扇島では今後、川崎火力発電所で新設される高効率発電施設へのLNG供給にも対応しなければならない。また東京電力として、今後はシェールガスに代表される軽質LNGの活用を、時代に先駆けて推進していく方針がある。経済的であり環境負荷も比較的少ないLNGは、今後も火力発電の主力燃料として重要な役割を果たしていくはずだ。「電気の安定供給を陰で支えていくのが私たちの仕事。どんな状況になっても、自分たちがやらなければという気持ちは同じです」。高田や堀内をはじめとする社員たちのそうした思いがある限り、24時間365日体制で電気の供給は守られ続けていくだろう。

(取材•執筆:経営合理化現場取材チーム)

肩書は取材時のものです。

「安定供給こそ全て」と語る高田尚志(東扇島火力発電所 LNG管理グループマネージャー)

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