コスト削減の取り組み 現場レポートNo.5

仕様・用語の壁を越える。

地域の枠にとらわれない、新規工事会社導入のために。

地域の枠にとらわれない、新規工事会社導入のためにのイメージ写真

新規工事会社の参入促進でコスト削減へ。

ケーブル工事には、専門用語や専用器具、そして長い歴史の中で積み上げられてきた施工方法・安全対策・品質管理など細かなルールがあり、東京電力が委託している工事会社は、明文化が困難な部分までも熟知しています。このような環境のもとでは、新規会社への委託にはリスクが生じる懸念があります。しかし更なるコスト削減のためには、新規会社への委託を促進し、競争環境をつくる必要がありました。
本取り組みは、競争環境の強化によるコスト削減や、新たな視点からの技術的な提案などによる合理化に貢献。従来比▲30%程度のコスト削減を実現しました。

コスト削減のしくみ

新規工事会社の導入。その現場で直面した思わぬ困難。

東京電力にとって、厳重な安全管理が求められる6万ボルトの高電圧ケーブル工事に、新規の工事会社導入を図るのはおよそ20年振りのことだった。速やかな導入のために、本店・支店を横断したタスクチームが結成された。中心となったのは若手・中堅社員。入社15年目の五十嵐が三島支社での現場を担い、6年目の豊田は下準備の段階から本店業務を担った。新しい発想とスピード感を求め、従来の枠組みにとらわれないことを重視した異例のスタッフィングだった。
新規参入工事会社による第一号案件となったのは、劣化による事故を防ぐために、変電所内のケーブルを敷設し直す工事だった。
「これは一体、どうなっているんだ……」。現場の責任者となった五十嵐が、新規参入の工事会社から提出された施工計画書を目にして、思わず唸った。
新しい工事会社は、過去に多くの他社工事実績があり、その高い技術力は疑うべくもなかった。しかしその施工計画書に記載されていたのは、器具や仕様の名称から、項目や精算の区分まで、五十嵐が知る東京電力の体裁とは大きく異なるものだった。同一と思われる機材の名称が違うため、それが単に呼び名が違うだけの同じ物なのか、あるいは仕様も異なるのかすら判断がつかない。施工計画書からでは、新規会社の工事内容を正確に把握することは不可能だった。
仕事の内容や流れ、ルールの違いに起因する勘違いや間違いは、絶対にあってはならない。6万ボルトを扱う高電圧ケーブルの工事においては、その些細な勘違いやミスが命に直結するのだ。安全確認や作業のルールなど、東京電力との違いを確認すべき点は多岐にわたる。とりわけ五十嵐が衝撃を受けたのが、感電を防ぐためのアース線(接地線)の運用ルールの違いだった。東京電力ではまず社員が電気が停まっていることを確認し、アース線をマニュアル通りに設置して、感電しない状態を確認してから、作業を工事会社に移行する。しかし計画書には、そうした東京電力が担っていた準備も工事会社が行うことになっていた。「違いがあるとは思っていたがここまでとは」と五十嵐は愕然とした。
このままでは互いの意思疎通もままならない。しかし新規会社の導入は既に決定事項だ。五十嵐の頭に不安がよぎる。新規工事会社の参入促進が、工事コストの削減に向けた大きな一手であることは、五十嵐も重々承知していた。つまりそこに障害があれば、如何にしても解決しなければならないのだ。五十嵐は早速、本店との情報共有を図りながら、課題解決へと動き出した。

左から、多摩支店工務サポートグループ
豊田泰文、三島支社地中送電保守グループ 柴原弘幸、湯山羽矢登、五十嵐寛文

作業名称や工具・器具名称の違いを、一から洗い出す。

現場で五十嵐が動き始めるのと同時に、本店駐在中にタスクチームの一員となった豊田に、ある課題がもたらされた。それは新規参入工事会社に向けた、ケーブル工事の手引書をまとめ上げるというものだった。
新規参入する工事会社は3社。それぞれの会社の施工計画書を目にしたとき、豊田は五十嵐と同様に「どこから手をつければいいのか」と途方に暮れた。各社とも、他の電力会社のもとで長年培ってきた異なる文化を持っていることが計画書から伝わってきた。これらを包括した手引書を作成するためには、単なる用語や仕様の置き換えだけでなく、技術水準の認定から発注、工事、そして完成に至るまで、全てのフローを東京電力の仕様と照らしつつ、違いを整理しなければならなかった。どれほどの情報量になるものか予測もつかない。
ただ手引書がなければ、東京電力が求める施工や安全面の品質を確保するのが難しい。「手引書の制作は、不可欠な作業なのだ。やるしかない」。豊田は腹をくくった。
まず豊田は「現場実践に向けた懸案事項」の精査に取りかかった。安全品質、工事ルール、施工品質の各細目にわたり懸念事項をまとめていく。案の定、実際に作業を始めると、事前予想の2-3倍に及ぶ情報が溢れた。
また現場でしか確認できない項目も多かったため、豊田はその都度支店と連絡を取り合った。やがて工事の現場で認識された相違を吸い上げるのも豊田の役目となった。新規工事会社を受け入れた3つの支店と密な情報交換を繰り返し、全ての情報が豊田へ集約された。現場のミーティングにも出向いた。普段苦労を口にしない豊田の横顔に、疲れがにじんだ。

オン・ザ・ジョブで進むプロジェクト。繰り返される討議。

このプロジェクトは、新規参入に関わる各種の手続きをスピードアップするため、実際の工事を前提としたオン・ザ・ジョブで進行した。五十嵐は多くの確認・調整事項が発生することを予測し、通常の工事業務よりも大幅にスケジュールを前倒しして事前準備の時間を多くとった。それでも予想を上回るほど、工事計画の進行には通常の倍以上となる時間が費やされた。施工計画書を見比べ、一緒に現場をまわり、現場で相違点に気付けば手引書を作成する豊田にフィードバックした。しかも契約・発注に必要な、本店での技術水準認定も並行して行うため、手続きに要する時間も鑑みつつ、全体のスケジュールを調整していく必要があった。
そうした目まぐるしい動きの中で、五十嵐は常にあるプレッシャーを感じていたという。それは新規工事会社にとっては、自分の発言=東京電力の発言として受け取られるということだった。しかも事前に上司から、業務拡大を果たすべく新規工事会社はエースを投入してくるだろうと言われていた。間違いや曖昧さを現場で残すわけにはいかない。自分が工事会社のエースと対峙し、東電の顔になるのだ。五十嵐は、工事に関する東京電力の仕様を「相当勉強し直しました」と当時を振り返る。
その五十嵐に、ある本店判断が届いた。新規参入会社からの提案が品質を担保しつつ一層のコスト削減に繋がるものであれば、東電の仕様やルールに定められていないケースであっても積極的に導入するようにとの指示だった。絶対譲れない部分は守るが、可能なことは積極的に採り入れる。コストダウンになるのなら、本店が動いて新たな標準化を図るというスタンスがとられた。この指示によって五十嵐には、東京電力のマニュアル通りにやるのではなく、現場責任者として様々な判断を下すことが求められた。本店はそうした五十嵐をバックアップすべく、より速やかな審査や認定の手続きに全力で動いた。
目が回るような日々の中だったが、五十嵐の中には常に、揺るがない思いがあったという。それは、お客さまに対して、電気が通ると約束した日にちだけは絶対に動かさないというものだった。どんな事情があれ工事は完遂しなければならない。電気というライフラインを扱う事業者としての思いが、五十嵐を支えていた。

討議の末に互いの認識を共有。更なる新規工事会社の開拓へ。

膨大な討議と業務や作業調整を経て、無事に工事が完了した。通常の新規参入なら、本店での審査や技術水準認定などの手続きだけで1年以上かかるところを、五十嵐や豊田を初めとするタスクチームは、手続き以外に実際の現場も動かしながら半年で成し遂げたことになる。新規参入したのが他の電力会社で実績のある工事会社だった点も、スピードアップさせる要因となった。電気が通った瞬間、五十嵐はなにより「ホッとした」という。
一方、豊田が作成した手引書には、今後の新規工事会社の導入促進に向けたノウハウが集約された。これまで手付かずだった新規参入に関するルールが、ゼロから作られたのである。「手引書の完成度をさらに高め、リリースさせるまでが自分の役目」と豊田は言う。挑戦は続いているのだ。
三島支社では、新規の工事会社による第二、第三の案件に着手している。それらの工事を担当する柴原、湯山は、五十嵐と同様に緊張感を持ちつつ、工事会社との密接なやりとりを現場で続けている。エースを投入し、新規参入を果たした工事会社も東京電力の現場に慣れ、やりとりで困ることも少なくなってきたという。若手中堅を中心に達成したタスクは、既にその後輩たちによって活かされつつある。

協力会社:中央電気工事株式会社
「東京電力の工事に携わる一員として。」

新規参入にあたり、書類の書式や言葉の違いなど、当初は戸惑うこともありました。特に工事現場で、撤去作業において、初めに必ず東京電力社員の方が自ら電線を探知切断するという決まりや、安全票というものを毎朝受け渡しするルールなど、安全管理の厳密さ(施策)はこれまで経験のなかったものです。今後も東京電力管内の工事に、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

(取材•執筆:経営合理化現場取材チーム)

肩書は取材時のものです。

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