コスト削減の取り組み 現場レポートNo.6

情報を速やかにつなぐ。

多くの人手を費やしていた「確認・多重チェック・登録」を、新たな視点で省力化・効率化。

多くの人手を費やしていた「確認・多重チェック・登録」を、新たな視点で省力化・効率化のイメージ写真

契約変更にともなう確認・入力作業をシステム化してコスト削減。

東京電力では、お客さまから契約変更(引っ越し、プラン変更など)のご連絡をいただいた際に、係員が現地でメーターなどを確認します。これまではその確認結果を書面にし、人手をかけて審査・データベース更新といった作業を行うことで正確性を担保してきました。
この工程を効率化するために、現地で直接入力するシステムを導入し、円滑に運用できる環境を整備。当初は埼玉支店のプロジェクトとしてスタートしたこの取り組みを、全店に展開した結果、業務量にして約45万件、費用にして年間約5,000万円のコスト削減を実現しました。

契約変更にともなう確認・入力作業をシステム化

業務改善の取り組みで気付いた、ある疑問。

東京電力では、業務改善のアイデアを広く社員から募る取り組みを、日常的に実施している。埼玉支店・中桐も、その一環として社員同士のグループで集まり、なにか事業の改善に繋がるアイデアはないだろうかと模索し、話し合っていた。
そんな中、ある疑問が中桐の中に生まれた。それがお客さまの契約変更情報の確認・登録作業フローだった。
お客さまから引っ越しや新規契約・解約といった契約変更のご連絡をいただいた場合、受付後に検針など現地での確認を行い、その情報を書面で報告、さらに社内で再チェック・審査を経てからデータベースに入力する。情報の正確さを最優先する作業フローが築かれていた。
この一連の作業に対し、実は、現地確認以降の作業を自動化するシステムが2010年度に開発され社内で発表されていた。中桐が疑問を感じたのは、そのシステムの活用率が著しく低いことだった。上手く活用すれば作業の省力化・コスト低減ができるのに、なぜ使われていないのだろう……中桐は自分からシステム開発の部署と連絡をとり、システムの開発意図をあらためてヒアリングした上で、なぜ現場で活用されないのか追求したいと申し出た。こうして中桐の業務改善の取り組みは、埼玉支店の「つなぐプロジェクト」としてスタートを切った。

現場で使う端末を手にする中桐晋平(埼玉支店 営業サポートグループ)

システム活用を妨げていた不安の存在。

中桐は早速、関係者へのヒアリングを開始した。まずそこではっきりしたのが、自分たちの目で重層的にチェックをかけることで、間違った処理を防ぐという段取りが、現場に染みついているということだった。「重層的にチェックせず自動化してしまっていいのか」「かえって不具合が出るのではないか」「いままで問題ないのだから変える必要がないのでは」。様々な不安、心配、反対の意見が中桐のもとに押し寄せた。
またシステムについては、処理をする人がシステムを正しく理解していない、活用する意味合いが伝わっていない、間違いが無いように紙の書類で処理する部分を省けないなど、事業所ごとに様々な事情があることに気付かされた。システムの活用率も、事業所によって、高いところで8-9割、低いところでは1割程度と大きくばらつきがあった。
中桐は粘り強く関係各部署との意見交換を重ねた。その中で特に多かったのが、システム化によって誤った情報が増え、電気料金の誤請求等に繋がり、お客さまにご迷惑を掛けてしまうのではないか、という声だった。
例えば、「新築に引っ越すので新たに契約したい、何日までに繋がるようにして欲しい」といったご連絡をいただいた場合、新しい土地区画で住所が確定していない、表札が無く居住者が確認できない、お客さまの立ち会いが得られないなどの理由で、結果的に間違った情報が登録されたとする。これがチェックを経ないまま運用されれば、お客さまにご迷惑の掛かるケースが増加するという懸念があった。
システムは開発されていたが、誤情報の発生や各担当者間の責任問題といった現場の不安が解消されるまでのコミュニケーションが足りていない。そこにシステム活用率が低い原因がある。多くの意見交換の中で、中桐はそう確信した。

ひとつひとつの誤解や不安と向き合い、解消する日々。

自分が所属する技術サービスグループだけでは限界がある。そう考えた中桐は、お客さまから情報を受けるカスタマーセンター、技術サービスグループ、情報を入力するお客さまサービスグループ、さらに現場でお客さまに対応して確認作業を行う委託員にも声をかけ、その代表を集めて課題の洗い出しを開始した。各地の事業所にも足を運び、実際にシステムを使う人に説明したり、使わない理由を訊いたり、検討を重ねる日々が続いた。
当初は不満が噴出したと中桐は言う。何が大変なのか、どんな点が悩みなのかをひとつひとつ丁寧に聴き、その不安を解消していくという作業だった。一方で、昔からのやり方を変えることへの抵抗も根強かった。そんな時も中桐は、足繁く相手のもとに通って、理解してもらうしかなかった。「腹を割って話せるように、労を惜しまず」。そうした思いを、中桐は常に自分の中に持っていた。
また現場の委託員の人々は、システムへの未習熟からくる取り扱いの不安、どうやって処理すればいいのかわからないといった悩みを持っているケースが目立った。そこで中桐は現場へ持ち歩ける手引書(ハンドブック)を作成し配布した。こんな時はこうやって処理、というのが一目瞭然にわかるように配慮した内容のものだった。
一方でシステム自体も決して万能ではなく、契約メニューによって対応していない場合や、省力化できないケースも存在した。システム対応が可能なケースと不可能なケースを明確化し、根気よく説明を重ねた。

徐々に浸透していった、新スキームへの理解。

新たに誤請求が増えるのではないか。最も多い現場の不安を解消すべく、中桐は事実関係を調べてみた。するとシステムに起因する誤請求はないことがわかった。むしろシステムを使わず、人手で確認や審査を行うことで時間を要し、結果的にタイミングが遅れて誤請求が発生するケースもあった。システムには人手を介した誤りをなくす効果もあることがわかってきたのである。
また、これまでカスタマーセンターは町名、番地など100%正しい情報だけを次の工程へと流し、現地の目印(建物、風景)などの確認できない情報は、混乱を避けるために自分たちのところで留めていた。しかし、中桐は関係部署に足を運び、たとえ完全ではなくても、現地確認に役立つお客さま情報は可能な限り知らせて欲しいというお願いをした。より効率のよい現地確認がシステムの円滑運用のカギだからである。
そうした活動の後、ようやくスムーズに稼働し始めた。誤請求が増えることもなく、むしろ帳票の間違いや渡し忘れといった紙の書類によるリスクも軽減されていった。
長く続いてきた仕組みを変えることがいかに大変なことか、中桐はプロジェクトを通じて痛感した。それぞれの部署やグループごとに重んじる点が異なると、全体最適が見えにくくなる。そうした考え方に賛同する関係者が次第に現れ、中桐の話に頷く人々が少しずつ増えていった。

端末を使い現地で入力し、次の場所へ移動する。

コスト削減の評価だけではない、プロジェクトから得た財産。

情報の運用方法が交通整理されたことで、システムの活用率は飛躍的に向上した。この成果を中桐が全支店の会議の場で発表すると、直ちに本社から全店展開の指示が出された。現在は埼玉支店と同様の取り組みを10カ所の支店で定着させている。いまは全体平均で8-9割の実施率となり、年間5,000万円のコスト削減効果を生み出している。また金額に現れる以上に、社員の作業を効率化する効果も非常に高いと言う。
他店への展開が始まってから、中桐のもとには多くの問い合わせが寄せられた。事業所にどう説明したか。このポイントはどう整理したか。他の部署やグループをどうやって巻き込んだのか。中桐はそうした問い合わせに、自分の体験に基づく回答を惜しむことなく応えていった。埼玉支店でシステムと運用方法の整合がとれるまで一年。その事例を他の支店に展開するのに一年。「つなぐプロジェクト」がスタートした2011年度から、無我夢中の内に三年の月日が経過していた。
自分が関わった取り組みが、全店に展開し、しかもコスト削減まで実現できた達成感は、中桐にとって非常に大きなものだった。しかしそれ以上に「全体最適に向けた理解を多くの方からいただけたのがうれしい」と中桐は言う。
日常業務の中の小さな「気づき」から始まる、変革のプロジェクトは続いていく。

(取材•執筆:経営合理化現場取材チーム)

肩書は取材時のものです。

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