コスト削減の取り組み 現場レポート No.9

スマートメーターの導入による業務効率化とコスト削減

スマートメーターの仕様をオープン化・標準化することで新規参入を促進。

スマートメーターの仕様をオープン化・標準化することで新規参入を促進のイメージ写真

スマートメーター仕様のオープン化、国際規格、競争入札によるコスト削減。

今、省エネルギー・低炭素社会の実現や、電力自由化に向けて大きな期待を寄せられているのがスマートメーターです。スマートメーターとは、各家庭の電気使用状況の見える化や、毎月の検針業務の自動化を可能にする多機能な電力量計です。
しかし、スマートメーター導入のためには多大なコストがかかります。そこで東京電力は、仕様のオープン化と国際規格を導入して新規メーカーの参入を促進。さらに競争入札を導入し、徹底的にコストダウンを図りました。その結果、スマートメーターの単価は、約40%もの大幅な低減を実現しました。

約40%/台の単価低減(2014年度)

約40%/台の単価低減

電力事情の「三方よし」を実現するスマートメーター。

毎月の電気料金は、東京電力の検針員がお客さまのお宅や事業所などを訪問し、メーター(電力量計)の見える場所まで行き、その指示数を目視確認することで計算される。このため、メーターの取り付け場所によっては門扉を開けていただくなど、お客さまの手を煩わせるケースがある。また、引越しや契約アンペア変更などの際にも、お客さまの立ち合いが必要とされる。そうした「不便」を解消できるのが、スマートメーターである。従来のメーターに代わるものだ。
「スマートメーターには通信機能が付いています。ですから、お客さまの元におうかがいしなくても、自動で検針業務ができるようになります」と話すのは、電力量計を長年担当してきた佃だ。
スマートメーターには、計量部以外に通信ユニットが組み込まれている。通信ユニットの機能により、電気使用量のデータが東京電力の専用管理サーバーに送られ、検針業務が自動化されるほか、引越しや契約アンペア変更の際も遠隔操作が可能となる。停電時も遠隔で通電状況を確認できるため、復旧までの時間が短縮される。また、スマートメーターで計測したデータをお客さま宅内のHEMS(Home Energy Management System)機器へ送信する機能により、お客さま宅内のHEMS機器で、30分ごとの電気のご使用量や現在お使いの電流値等を把握することができ、より効果的な省エネを行うことが可能となる。
現在の電気料金メニューには、電気を使う時間帯や曜日に特徴があるメニューがあり、それぞれのメニューに対応したメーターを取り付けている。スマートメーターは、日々、30分ごとに電気のご使用量を計量しているため、時間帯や曜日ごとに電気のご使用量を算定することができる。2016年4月からの電力自由化(電力の小売全面自由化)を控え、料金プランが順次拡大される予定だが、多様な料金プランに柔軟に対応できるのも、スマートメーター導入の大きなメリットだろう。岡村は、お客さま・東京電力・社会の「三方よし」を実現できると太鼓判を押す。「お客さまにとっては、ライフスタイルに合わせて料金プランをお選びいただくことが可能になります。電気のご使用量が見える化されることから、省エネへの意識も高まり、料金を抑えることにつながるでしょう。一方、東京電力にとっては、検針業務の自動化、各種設定の遠隔操作が可能になりますので、業務の効率化を図ることができます。社会全体としては省エネが推進され、エネルギー革新に寄与できるのです。」

岡村幸司(スマートメーター推進室 配電設備グループ計器運用チームリーダー)

佃 隆之(スマートメーター推進室 配電設備グループ計器技術チームリーダー)

過去の開発方法をゼロベースで見直す、発想の180度転換。

スマートメーターの開発は2008年7月にさかのぼる。
「当初は、業務効率化に向けての検討から始まりました。低圧分野業務革新グループという名称のプロジェクトでした。しかし、2011年3月に東日本大震災が起きたことで、私たちは復旧業務を最優先いたしました。スマートメーターの導入検討は一時中断、プロジェクトも解散となりました」と佃は振り返る。
スマートメーター本体の仕様がほぼ仕上がりかけていた頃である。
その後、スマートメーター開発が再浮上したのは2011年秋。社会全体の省エネへの寄与に向けて、必要不可欠な事業だと再認識されたからだ。同年10月には新たに「スマートメーター推進プロジェクト」が立ち上がった。
しかし、東京電力エリアのメーター数は低圧だけでも2700万台を超える。これらすべてをスマートメーター化するには、スマートメーター本体に加えて通信インフラやシステム構築などのコストが避けられない。一方、電気料金を抑えるためには、このようなコストを極限まで抑える必要がある。「いかにしてコストを削減するか」。スマートメーター推進プロジェクトでは、新たに共同事業者となった原子力損害賠償・廃炉等支援機構を含めて協議を重ねた。その結論は、「今までの慣習にとらわれず、まったく新しい発想で取り組むこと」である。
「仕上がり間近だった初期スマートメーターの仕様は仕切り直し。まったくのゼロベースから、『オープンに調達する』ことを大前提に掲げました」と佃。従来の電力量計は長年、国内大手の協力メーカーから調達していて、オープン調達の状態とは言えなかった。大手に限定して調達していたわけではないが、大手メーカーは東京電力が要求する仕様に基づいたノウハウを蓄積し、安定かつ大量にメーターが供給できる状況となっていた。このため、それ以外の新規参入会社の受注にはつながりにくい状況になってしまっていたのだ。その結果、競争原理が働きにくく、コスト削減につながりにくい状況にあった。
つまり、「オープンに調達する」という大前提は、新規参入会社にも取り組みやすくするよう、東京電力の仕様を簡素化した上で公開するという意味である。これにより、東京電力が培ったノウハウも公になるが、コスト削減を優先した。まさに、発想の180度転換である。

過去の開発方法をゼロベースで見直す、発想の180度転換のイメージ写真

オープン化、国際規格化、デザインフリー化で新規参入を促す。

「仕様の刷新にあたっては、まずRFCを行いました。RFCとはRequest for Commentの略で、仕様に対する意見を公募したのです。すると、国内外のメーカーから『なぜこの大きさなのか?』『なぜこの形状なのか?』など、さまざまなご指摘をいただきました。大きさや形状が限定されると、以前からその金型を保有しているメーカーが有利になり、新規参入のハードルとなることに気付きました。」と、佃はオープン調達の歩みを説明する。
RFCで意見を寄せたメーカーは約80社にものぼり、プロジェクトメンバーは新規参入の促進に手ごたえをつかんだ。「気付きを生かし、デザインまで自由にすることに踏み切ったのです」。デザインが自由になれば、各メーカーは、自社が最も安価に作れるデザインを採用できる。それが、スマートメーターの製造コスト削減につながると踏んだ。
さらに、IECという国際規格も取り入れた。つまり、部品やプログラミングなどの仕様にあたって、東京電力独自のものではなく、国際規格を採用したのだ。それにより海外メーカーも新規参入しやすくなった。
仕様のオープン化、国際規格化、デザインフリー化に加え、競争入札を実施した結果、スマートメーター1台当たりの購入単価を約40%(2014年度実績)ほど引き下げることができた。
もっとも、こうした変革に不安がなかったわけではない。たとえば岡村の元には、電力量計の工事を担当する協力会社から「メーターの仕様が変わると、工事作業の手順も変更されて工事の生産性が低下するのではないか」などの懸念が寄せられた。しかし、協力会社の意見もふまえた作業手順書や作業手順が視覚的に確認できるビデオの作成を行うとともに、説明会・研修等を実施し、理解していただいたという。
岡村たちにも不安はあった。「私たちにとって、ここまで大胆な仕様の変更は初です。歩いたことのない道ですから、迷っても尋ねる先輩がいません。それでも、必死に最適を模索しながら取り組んできました」。

オープン化、国際規格化、デザインフリー化で新規参入を促すのイメージ写真

さらなるコスト削減を追求

コスト削減の努力は、スマートメーター本体だけではない。通信インフラ領域とシステム構築領域では、それぞれRFP(Request for Proposal)と呼ばれる提案募集型入札を採用した。東京電力の指示する仕様ではなく、入札参加する会社から仕様を「提案」してもらう方法をとった。「コストが最適になるシステムは、プロの提案を取り入れた方が実現しやすい」と判断したからだ。
また通信方式についても、従来は「エリア全域に自社負担で光ファイバーを敷設し、統一した通信方式」を採用する予定だったが、根本から見直した。そして、他社のインフラを活用して、適材適所となる3つの通信方式を採用した。具体的には、高密度住宅地に適した「無線マルチホップ」、マンションやビルに適した「PLC」、郊外や低密度住宅地に適した「携帯」の3方式を使い分けることで、通信にかかるコストを抑えることとした。
さらに、電力量計は10年ごと(低圧の単独計量器の場合)に交換することが法令で義務付けられているため、交換工事に費やす時間も視野に入れた。「スマートメーターの設計段階において、感電の危険性を低減し、短時間で工事ができるように改善してあります。作業安全の確保と作業効率の向上を図っています」(佃)。試算では、従来の交換工事に要する作業時間は25~30分間。それがスマートメーター同士の交換になると10分以下だという。長い目で見れば、確実にコスト削減が見込まれる。
このような取り組みにより、スマートメーター導入後の業務運営コストも抑えられる見込みである。

さらなるコスト削減を追求のイメージ写真

先の見えない課題を乗り越え、短期で2700万台設置に挑む。

スマートメーターの設置は、2014年4月から東京都の一部地域にて技術検証を目的とした設置を開始。2014年10月からは、サービスエリア全域での取り付けを開始している。2015年2月にスマートメーターを活用したサービスの一部先行導入を開始するとともに、7月にはサービスエリア全域でスマートメーターを活用したサービスを開始している。スマートメーターは、2016年1月19日時点で約399万台を設置済みである。
それでも、今後に向けての課題は少なくない。短期間で2700万台ものスマートメーターを設置する必要があるからだ。世界的に見ても1社としては最大規模である。しかも、法令に整合させれば今後10年間で交換・設置すればいいのだが、お客さまにいち早くスマートメーターをご活用いただくため、7年間で全数の交換・設置を終えるよう計画を前倒しした。
交換・設置のマネジメントを担当する岡村は、今後の業務を見通す。「世界中を探しても、1社が2700万台のスマートメーターを取り付けるという本プロジェクトは、世界的にも極めてチャレンジングと言えます。計画通りに滞りなく設置するためには、年間300万台以上、ピーク時には年間約600万台の製造能力が必要とされます。同様に、取付工事を行う協力会社の確保や、展開計画、状況確認も必須です」。2017年3月までに1000万台の設置を目標としているという。
オープンになった仕様書に沿った技術審査や、スマートメーターの供給管理などを手掛ける佃も、「まだ道半ば」と気を引き締める。同時に、お客さまや社会に貢献できることにやりがいを感じている。
「今、日本の電力事情は大きく変わろうとしています。来年4月の電力小売全面自由化を皮切りに、電力システム改革が進んでいくはずです。その改革を支えるキーアイテムがスマートメーターです。そうした仕事に従事できることに喜びを感じるとともに、日々誠実に仕事に取り組む所存です」。

(取材•執筆:経営合理化現場取材チーム)

肩書は取材時のものです。

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