コスト削減の取り組み 現場レポート No.10

前例にとらわれない発想、昼夜を問わぬ現場の底力。

責任を果たす、土木・建築部門の挑戦と貢献。

責任を果たす、土木・建築部門の挑戦と貢献のイメージ写真

火力発電所増設の工期短縮=コスト削減。

2011年3月11日の東日本大震災により、複数の発電施設が被災しました。それによって喫緊の課題となったのが、被災した発電所の早期復旧と増設です。そこで白羽の矢が立ったのが鹿島火力発電所。すでに6号機まで設置されている同発電所に発電効率の高い7号系列を増設する計画です。他の老朽化した効率の悪い火力発電設備に換えて、この7号系列を早期に運転開始することで、1日当たり数千万円もの燃料費のコスト削減につながります。そのため、1日も早く運転開始に漕ぎつける必要がありました。
東京電力は、持てる技術力を駆使し、さらに、これまでにない発想の転換と昼夜を問わない関係者の努力により、従来は約30ヶ月を要していた工事を20ヶ月で完成させました。これにより、大きなコスト削減を実現しました。

約125億円のコスト削減(総合特別事業計画をベースとした試算値)

火力発電所増設の工期短縮よるコスト削減

工期短縮=1日あたり数千万円のコスト削減。

茨城県神栖市に位置する鹿島火力発電所には、1号機から6号機までの発電設備がある。総出力440万kWを誇る、国内最大級の火力発電所である。この地に新しく、7号系列の発電設備を緊急建設することに決まったのは2011年のこと。東日本大震災による影響で、電力供給力が大幅に低下したためだ。工事は大きく2期に分けられ、第Ⅰ期工事で緊急用のガスタービン発電設備を建設。2012年夏の計画停電を回避するべく、供給力を確保することが目的だ。第Ⅱ期工事ではこのガスタービン発電設備をコンバインドサイクル発電設備へ改造し、増出力・熱効率の向上を図る。
完成に向けての工程は、一般に土木工事→建築工事→機械工事→電気工事の順で進められる。まず、土木工事で、電気ケーブル等が通る地下道(電気洞道)や設備搬入用の道路、各種水路などを建設した後、建築工事で建屋等を建設、次に発電設備などの機械工事を行い、最後に電気系統の工事を行うという順序である。従来は計画・設計から4年以上を必要とする大掛かりな工事である。
それにもかかわらず、今回のミッションは「震災後3年以内にⅡ期工事まで完成させる」という、極めて厳しいものであった。従来の常識では考えられない短工期だ。これほど短期に建設した実績は一度もない。
しかし、電力の早期供給増が迫られている上、コスト削減の責任がある。発電開始がたった1日遅れるだけで、燃料費に数千万円もの差が出るからだ。1日=4,000万円としても、単純計算で1ヶ月に12億円、1年で150億円もの差が出ることになる。そのミッションを背負って、土木・建築グループは工事に取りかかった。

7号系列建設状況

「土木工事にかかっている」という責任。

安田が土木グループのメンバーとして本プロジェクトに参加したのは2011年9月。「土木工事が遅れれば、後工程の工事がすべて遅れることになる。何とかして工期を短縮するしかない」という責任感が身を引き締める。
意を決した安田が最初に担当したのは、「大物搬入路」と呼ばれる道路を、発電所構内に新しく造る工事だ。超大型の設備を搬入するための仮設道路であり、設備搬入後に撤去する。この大物搬入路を使って運ぶ最大の設備は、「HRSGモジュール(幅20m、高さ38m)」と呼ばれる事前に工場で組立てた排熱回収ボイラ。12~13階建てのマンションを見上げるような大きさだ。重量は約3,000t。この重量に耐えうる強度の道路を早急に造らなければならない。
「幅14m、長さ約2kmの大規模な道路です。そして、その大物搬入路のルートには40年以上前に建設された既設設備の放水路や重要なケーブルなどが埋まっているため、重量物通行時のたわみを最小限に抑えなければなりません。一般の道路の造り方では簡単に壊れてしまいます」。
なかでも最大の難所は、東日本大震災時に液状化して地盤変状の激しい場所だ。安田らは考える。「既設設備に影響を与えず、いかに工期を短縮するか」。悩んだ末に出した答えは「桟橋構造」。周囲を地盤改良した上で、支柱の役割をする支持杭を打ち、そこに鋼材を水平に置く。既設設備を「桟橋」で跨ぐ構造だ。さらに、コスト削減のため鋼材はリースで調達。困難を伴うが、あらゆる観点から最適の選択だ。
最終的に、桟橋構造部に使用した鋼材は3300t、支持杭674本。ほかにも難所はいくつかあったが、全長約2kmを約1年の短工期で完成させた。当時を振り返る安田は、「もちろん重量に耐えるよう事前に計算していたのですが、HRSGが無事通過した時はやはりうれしかったですね」と表情を緩めた。

安田浩二(経営技術戦略研究所 土木・建築エンジニアリングセンター 海洋土木技術グループ)

大物搬入路の断面図

HRSG搬入状況

発想の転換。電気洞道のプレキャスト化・地上化。

2012年1月から、西山も土木グループに加わる。入社3年目の冬だ。「着任前から、厳しい現場だと聞かされていました。けれども『少しでも力になりたい』、そんな気持ちで鹿島に向かいました」。西山は着任当時の思いをそう語る。
その西山が担当することになったのが電気洞道だ。断面:幅2m×高さ2.4m・延長500mの地下道の建設である。電気洞道が完成しなければ、電気工事を始められない。この工事には従来15ヵ月以上を必要としていた。なぜなら、現場で鉄筋を組み、型枠を立て、コンクリートを打設する作業を繰り返さなければならないからだ。
「そこで、発想を転換し、工場であらかじめ筒状に製作したコンクリート製品を現場へ運搬して設置するプレキャスト・コンクリートを採用することにしました。電気洞道工事だけでみるとコストは若干増加しますが、現場ではプレキャスト・コンクリートをつなぐように設置していけばよいので、大幅に工期を短縮でき、7号系列工事全体では大きなコスト削減となるのです。施工時はコンクリート同士のつなぎ目から内部へ漏水することがないように品質管理を徹底しました」。
工期短縮・コスト削減の追求はさらに続く。従来、地中に埋めるという固定観念がある電気洞道の一部を半地上化、さらには完全地上化した。地盤を掘削し、地中に電気洞道を設置するには多大な時間とコストを要するが、半地上化・完全地上化すればそれらが減るとともに、液状化対策工事も必要なくなる。こうしたあくなき追求により、電気洞道の工期は従来の半分近く、8ヶ月に短縮することができた。

西山綾香(広野火力発電所 土木グループ)

半地上化箇所プレキャスト・コンクリート設置状況
(電気洞道工事)

24時間体制で約6ヶ月の工期短縮を成功。

土木グループが担う工事はこれらに留まらない。ほかにも、発電機器を冷やす海水を取り込んで放流する冷却水路工事(取水口・取水路工事、推進トンネル工事、取放水管路工事、放水路工事、放水池工事)などだ。いずれも大規模で、取放水管路工事は総延長距離約3.7kmもある。放水路工事(断面:幅3.8m×高さ 4.8m)の大規模断面にもプレキャスト・コンクリートなどを用いて工期短縮を試みる。「いろいろアイディアを出してみても、他の工事と施工エリアが重なってしまうこともあり、引き渡し期限に間に合いません。そこで、受注者にご理解いただき、24時間体制で施工することにしました。これにより、何とか期限に間に合わせることができました」と西山。
それぞれの工事で出した知恵は枚挙にいとまがない。たとえば、東京電力でも最大規模となった取放水管路工事では、工場で製作する取放水管の1本あたりの長さを限界ギリギリまで長くして現場に搬入し、現場での溶接の回数を減らすことにより、約6ヶ月の工期短縮、11億円のコスト削減を実現したこともそのひとつである。
安田は「冷却水路の出口である放水池では、模型実験や解析を繰り返し、前例のない構造形式を採用しました。安全性を確保したうえで、かける時間やコストを最小にするためには、どの方法がベストなのか。それを常に頭に置いて取り組んだことが、さまざまなアイディアにつながったのだと思います」と語る。「新しいアイディアを生み出す一方で、過去から積み重ねてきたノウハウが役立った」ともいう。「私たちが先輩のノウハウから学んだように、今回のプロジェクトの知見も蓄積して、20年後・30年後のインハウスエンジニアに活用してもらわなければなりません」。

プレキャスト・コンクリート設置状況(放水路工事)

運転時の放水池

厳しい敷地条件下での3軸並行工事、エリア調整で工程を具現化。

「私がこのプロジェクトに参加したのは2011年の8月、入社5ヶ月目の時です。右も左もわからない状態でした」。そう語るのは宇賀神。一方、入社5年目だった山下は「配属前からプロジェクトの重要性を認識していました。建設工事自体は初めての経験でしたが、持てる力の全力で取り組もうという気持ちでした」と当時の心中を振り返る。
建築グループに課せられたミッションは、土木グループと同様、短工期の実現。1日でも早く建屋等を完成させ、機械・電気工事にバトンを渡せる状態にすること。しかし、鹿島火力発電所にはすでに6号機までの既設設備が設置されているため、工事用に使える敷地スペースが非常に狭い。しかも、土木・建築、機械・電気の工事が併行して進められるため、なおさらスペースが制約される。また、敷地内のレイアウト上、新しく増設する7号系列は建屋を3つに分けざるを得なかった。広い敷地に1つ造るよりも、狭い敷地に3つ同時に造る方が大変なのは自明の理だ。
「今回のような大型プロジェクトでは、土木・建築、機械・電気の各工事関係者が多数出入りして、トラックなどで大量の資材・機材が運び込まれます。各関係者に工事用スペースが必要で、土木建築だけでも1日延べ300台もの工事車両が出入りする日もあります。でも、既存の設備があるため、使える敷地が限られます。それをいかに無駄なく、かつ安全確保を大前提として調整するかに日々奮闘しました」と山下。具体的には、週1回のエリア調整会議で調整するが、どこかの進捗にズレが生じたら、早急に再度の調整が必要になる。刻々と変化する現状状況の把握も欠かせない。「昼間は土木グループ、夜間は建築グループと時間帯でシェアすることも少なくありませんでした」。
こうした中で2人が印象に残っている工事は、地盤改良工事と山留工事だという。軟弱地盤を固めて堅固にするのが地盤改良工事、掘削した周囲の土砂崩れを防ぐのが山留工事だ。宇賀神は「建屋敷地が海沿いの地下水位の高い砂層であるため、地盤を改良する必要があったのです」と語る。敷地と周辺の地盤が軟らかい場合、建屋基礎下の地盤に地中10m以上も深く掘って膨大な量のセメントを混ぜて固めていく。その後、基礎施工のために地面を掘削するが、深く掘れば掘るほど周囲の砂が崩れてくるため、山留と呼ばれる壁を造る必要がある。今回は地盤改良
工法の範囲を建屋外周部まで拡大し、それを山留として兼用するために、地表面まで立ち上げた。この壁は、ある程度の厚さがないと山留としての強度が保てないが、周囲も数m先は工事中のため、十分な厚さを確保できそうになかった。「そこで、新しい工法を考えたのです」。建築グループが考えた工法を宇賀神が説明する。「この山留兼用地盤改良エリアに鋼材を挿入することで、厚さを薄くしても強度が保てるようにしました。その工法であれば、施工領域が半分以下になるとともに、施工期間も半分以下になります。初めての試みでしたが、最適を目指してチャレンジしました」。結果は、工期を6割も短縮。新工法は特許申請(※)するに至っている。

宇賀神直(川崎火力建設所 建築グループ)

山下勇介(パワーグリッド・カンパニー経営企画室経営基盤構築プロジェクトグループ)

※2015年11月時点審査請求中「山留め壁およびその構築方法」(公開番号:2014-136865)

発想を変える、方法を変える、関係者を巻き込む。

発電所建屋への巨大設備搬入・設置にあたっても、建築グループは発想の転換を行った。巨大設備とは、タービンで沸騰した蒸気を再利用するために水で冷やす「復水器」のことだ。一辺約10mの立方体を想像してほしい。
一般的に、復水器は建屋が完成してから搬入される。製造に時間を要するからだ。ただ、あまりに大きいため、搬入時は建屋の外壁や間柱を外して仮の搬入口を設けておかねばならない。つまり、一度建屋を機械・電気工事側に引き渡した後に、再度外壁の仮搬入口を閉じるという、工程の無駄が生じるのだ。そこで山下らは、工事途中にもかかわらず「建屋の建設途中で復水器を搬入してもらいたい」と提案した。幸い、復水器は上半分と下半分を分割することが可能。寸法の大きい下半分だけでも建屋建築前に搬入しておけば、後から施工する手間が解消され大幅な工期短縮が見込める。
「機械を製造するメーカーさんにとっては、納期が何ヶ月も早まることになるわけですから、簡単なお願いではありませんでした。でも、工期短縮のために必要であることを何度もご説明し、機械・電気部門の協力を得て実現することができました」。
復水器の搬入は、クレーンを使って建屋上空から行われた。すでに外壁の鉄骨が組まれていたからだ。それでも1軸当りマイナス1ヶ月、3軸計マイナス3ヶ月の工期短縮が実現した。後で聞けば考えつくような発想に感じるかもしれないが、発電所建設現場の専門家にとっては、驚くような発想の転換であった。

青いシートで覆われた復水器の吊上げ開始

建屋内へ復水器投入中

「全体最適のために」、その思いが現場力につながった。

鹿島火力発電所7号系列増設は、「3年以内に発電開始」というミッションを無事果たし、2014年6月には3軸すべてのコンバインドサイクル発電が開始されている。厳しいスケジュールを無事克服することができたのは、おそらく、個々のスタッフが工事全体を俯瞰し、「長期的視点でコストを削減するという『全体最適』のために、自分は何をすべきか」を追求したからだろう。
こうした大規模なプラント建設の場合、全体計画は本社マターとなるが、具体的な設計や施工の展開は現場が考える。その現場において、全体最適の姿勢があったからこそ、「前例にとらわれない」「発想を変える」という現場力が発揮された。
最終的に土木・建築グループは、Ⅱ期工事で約10ヶ月の工期短縮を達成した。これをコストに換算すれば、およそ125億円の燃料費削減に値する。その陰には、安田、西山、山下、宇賀神の4人の若手社員の奮闘も確実に含まれている。

コンバインドサイクル発電とは

コンバインドサイクル発電とは、ガスタービン(飛行機にも用いられるジェットエンジンで燃焼ガスを作りタービンを回すもの)と、ガスタービンが排出する高温の排気熱を無駄にせず、再利用した蒸気で回す蒸気タービンを、同一の軸上に設置し発電効率を高めたもの。

(取材•執筆:経営合理化現場取材チーム)

肩書は取材時のものです。

完成した1軸建屋

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