コスト削減の取り組み 現場レポート No.13

再生可能エネルギー連系業務の効率化実現へ

接続検討業務の効率化をめざしたカイゼンプロジェクト。

接続検討業務の効率化をめざしたカイゼンプロジェクトのイメージ写真

「システム化」と「大部屋化」で、接続検討時間を従来の1/3に短縮。

東京電力前橋支社(現東京電力パワーグリッド群馬総支社)では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度施行を機に、発電業者からの接続検討依頼が激増しています。そのため決められた期限内に回答するには困難を極め、休日出勤や群馬支店の応援を得て何とか回答期限を守っている状況でした。
そこで接続検討業務の効率化をめざしたカイゼンプロジェクトがスタート。「入力情報のシステム化」と関係グループが同じ空間で業務を行う「大部屋化」の工夫によって、接続検討業務の大幅な効率化が可能になりました。

「システム化」と「大部屋化」で、接続検討時間を従来の1/3に短縮のイメージ

再生可能エネルギーの固定価格買取制度の施行以来、接続検討依頼が激増。

2014年3月、大手百貨店の初売りのような行列が、東京電力前橋支社(現東京電力パワーグリッド群馬総支社)の前にできていた。行列の人は皆、太陽光発電の電力受給(売電)契約を申し込むために並んでいた。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度の施行以来、接続検討依頼が激増しており、特に前橋支社には、赤城山斜面が太陽光発電に最適だということもあって多数の申し込みが出ていた。年度末でもあるこの月は、ついに申し込み件数が700件を超えた。前橋支社の社員たちは、この山のような申込書の束を処理しきれるのだろうかと、暗澹たる気持ちになっていた。
実際、太陽光発電設備等の電力系統への連系においては、事業相談から連系開始までに2年を要することもあるのが現状だ。その中でも、はじめのステップになる接続検討業務は、事業主に回答しなければならない期限が決まっていることもあり、現場の緊張感と焦燥感は相当なものだった。「通常業務ももちろんあるという状況で、期限までに回答しなければならず、本当に時間外での勝負でした。休日出勤をしたり、ついには支社の中でも裁ききれないという状況になり、群馬支店にバックアップしてもらったりしました。そこまでやらないととてもではないけれど、回答期限を守れないといった状況でした」と設備総括グループの課長である平野は当時の状況を振り返る。このような現状を打開すべく、接続検討業務の効率化が喫緊の課題となった。現状、かなり時間を割かれている「接続検討」をいかに短くするか。トヨタカイゼンを熟知する内川顧問の指導によるカイゼンプロジェクトが推し進められることとなった。

平野(前橋支社設備総括グループ課長)

生産性倍増プロジェクトにて前橋支社が取り組みを開始。

この接続検討業務は、受付から回答までのプロセスの中で、主に3つのグループが関わることになっている。設備総括グループ、制御グループ、設備サービスグループだ。まずはそれぞれのグループが標準的な電柱建替5本程度の工事における1件の申込み処理にかかっている所要時間を割り出してみると、設備総括グループの工程管理に要する時間が4時間、制御グループのアクセス検討に8時間30分、設備サービスグループの設計書作成および見積りの算出に6時間30分かかっていることがわかった。19人・時。
カイゼンプロジェクトでは、これを半分の「9.5人・時」まで短縮するという目標を設定した。「5分刻みで業務ごとの計測を実施したところ、現在の19人・時という数字が出ました。目標はその半分で行こうと。まあ、到達はできないでしょうけど、目標は到達可能なものではなく、チャレンジするくらいのものでなければならない。正直、目標達成は無理だろうと、その時は思いました」と長谷川は語る。同じく設備総括グループの真庭も「難しいなとは思いましたね。高い目標というのがありましたので、とりあえず立てた。でも、どうやってそこまで持って行ったらいいのかという感じでした」と当時の気持ちを語っている。実際、目標を達成できると思っていたプロジェクトメンバーは、この時誰一人いなかった。

長谷川(前橋支社設備総括グループチームリーダー

真庭(前橋支社設備総括グループ)

徹底的に問題点を洗い出し、全員で問題点を共有化していく。

カイゼンプロジェクトでまず行ったのが、現状の問題点を洗い出し、そしてそれを「見える化」すること。前橋支社では社内全員が各々の業務における問題点を出していった。ホワイトボードには、グループごとに次々と問題点が書かれた紙が貼られていった。この時のルールはただひとつ。出てきた問題点に対して、否定はしないということ。ちょっとしたこと、小さなことでもいいから、問題点を吐き出せるだけ吐き出すことが大事だった。
ホワイトボードには、最終的に200件を超える問題点が貼られることとなった。提出資料の不備、問い合せの多い案件、管理表の使いにくさなど、さまざまだ。これらの問題をグループ分けし、パンチリストにまとめる。あとはパンチリストを一個一個つぶしていく。もちろんすぐ解決できるものもあれば、解決にはハードルが高いものもあったが、全員が改善に向けて取り組む雰囲気が次第に形成されると、改善スピードは加速度的に上がっていった。当時の状況について、設備総括グループの課長である平野はこう語っている。「今回、カイゼンプロジェクトで内川さんによる指導会が合計5回行われていたのですが、最初のうちは、内川さんが何を言っているのか、意味すら分からないという状況でした。それを理解するために、報告会の後、みんなで集まって、これはどういうことか、と話し合いの場を持ちました。時にはそれが2時間を超えることもありました。その甲斐もあって、だんだんと内川さんの言う意味がようやく分かるようになってきたのです。指導会の3回目くらいになると、内川さんがAと言っていることに対して、ではBもある、もしかしたらCもできるかもしれない、というように意見を出せるようになってきたのです」。目標設定当初、誰もが目標を達成できないと考えていた雰囲気は一変していた。

中:権田(前橋支社長)

前橋支社だけにとどまらないカイゼンのウェーブ。

今回のカイゼンで大きな成果を収めたことのひとつに「システム化」がある。それまではいちいち異なるエクセルのシートに必要な情報を入力していたのが、システムを構築したことによって、一括で入力が完了するため、大幅な時間削減が可能となった。
「システム化する以前は、全体を管理するための管理表というものが全部で4つありました。各グループが欲しい情報がそれぞれで異なるので、必然的に4つの管理表となっていたわけです。システムが構築されているわけではないので、エクセルのシートに同じような情報を4つそれぞれに入れていく必要がありました。改善策としては、群馬県内のすべてで使える統一的な管理システムを作るべきだという結論が出ましたので、本社に相談しました。本社の協力を得て、今ではこのシステムが全社展開されており、ひとつの管理表ですべてをまかなえるようになっています」と設備総括グループの富沢は言う。通常であれば、システム構築となると費用も大きいため、なかなか相談しにくいという雰囲気があった。今回、それを実現できたのは、このプロジェクトが全社を巻き込む熱意をはらんだムーブメントになったからに他ならない。

富沢(前橋支社設備総括グループ

大部屋化によって見えてきたものとは?

パンチリストによる問題改善と平行して行われたのが「大部屋化」だ。設備総括グループ、制御グループ、設備サービスグループのそれぞれの担当者が揃って仕事を行うというもの。普段はそれぞれのグループの机で仕事をしている3人が、同じ空間で顔を合わせて仕事をする。「大部屋化」の参加者のひとり、設備サービスグループのチームリーダーである清水はこう語っている。「概要図という図面作成の工程がありますが、それを3つのグループがそれぞれで作成していたのです。概要図はこちらで引き受けますよ、というように一本化することで、グループ全体の時間削減をすることができたのも『大部屋化』で様々な気付きが得られた効果だと思います。それまでは別々に仕事をこなしていたので、自分が重複した仕事をしているということにすら気づけない状態だったわけです。なかなか普段見えにくい問題点を今回プロジェクトとしてやってきたことで、浮き彫りになったという気がします」。それまでもグループ間のコミュニケーションには何の問題もなく取れていたものと思っていたが、実はお互いの細かな仕事の中身まではわからないという、そこには見えない壁があったことに気がついたのだと、清水は言う。

左:宮崎(前橋支社制御グループチームリーダー)
中:清水(前橋支社設備サービスグループチームリーダー)

目標を大きく上回る達成。そしてカイゼンは続いていく。

パンチリストによる改善管理、大部屋化で得られた気付きの効果で、当初の目標設定「9.5人・時」を大きく上回る「6.2人・時」という結果を得ることができた。誰もが達成は無理だと思っていた。しかし、目標到達どころか、大きく上回るかたちでの達成。今回のカイゼンプロジェクトに参加した人は、よく次のようなことを言う。「今まで普通だと思っていたことが実はそうではなかった」、「自分の作業をあらためて見直すことができた」、「これまでは無駄なことが多かった」などと。見えているようで、実は見えていない部分を徹底的に洗い出す。この作業は決して簡単なものではない。しかし、一度見えなかったものが見え始めると、どんどんカイゼンの方向へ動き始める。カイゼンをしていく中で参加者のモチベーションに変化が生まれたというのも自然なことなのかもしれない。
目標は無事達成することができた。しかし、それでカイゼンが終わったわけではない。制御グループは現在、本社の配電部と協働で新たなシステム構築を目指している。これが完成すれば、作業の大幅短縮化が期待できるシステムだ。すでに新たなカイゼンが動き始めている。

(取材・執筆:経営合理化現場取材チーム)

肩書は検討当時のものです。

効率化を実現したカイゼンプロジェクトメンバー

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