コスト削減の取り組み 現場レポート No.14

4人で69分から3人で14分に短縮、無駄の徹底排除と併行作業への挑戦。

更なる効率化を追い求める、終わりなきカイゼン。

更なる効率化を追い求める、終わりなきカイゼンのイメージ写真

作業現場と一体となり、無駄を徹底排除する妥協なきカイゼンを実施。

今後10年間で約60万台の取替工事が予定されている柱上変圧器。取替工事の作業中は、当該地域への電力供給はストップしてしまうため、停電時間の短縮という大きな課題克服に向けての挑戦がスタートしました。
まずは作業分担の明確化、作業員の有効活用、工具改良などのカイゼンポイントを抽出し、改善策の立案、改善の実施を繰り返し行った結果、当初は作業員4人で69分の作業時間が、3人で14分50秒を記録するという大きな成果をあげました。

作業現場と一体となり、無駄を徹底排除する妥協なきカイゼンを実施のイメージ

工事中の停電時間をいかに短縮させるか。

電柱の上に設置されている柱上変圧器。柱上トランスとも呼ばれるもので、電気を各家庭や事業所に届けるために、適正な電圧に変換する装置だ。柱上変圧器は今後10年間で約60万台の取替工事が予定されている。変圧器を取り替える作業の間は、当然、該当地域は停電してしまうことになり、いかにその停電時間を短縮させるかが大きな課題となっていた。

2015年4月に配電部配電業務改革グループに異動となったばかりの佐野健太は、4月3日、ストップウォッチを携え、変圧器取替作業の現場に向かっていた。変圧器取替工事の作業自体は、パートナーである工事会社が行っており、作業班の構成としては、作業責任者1名、高所作業車作業員2名、地上作業員1名の計4名。高所作業車2台にそれぞれ作業員が1名ずつ乗り込み、地上からの指示を受けながら、変圧器取替の作業を進めていく。佐野はその作業を開始から終了まで、それぞれの作業員の作業工程をストップウォッチで事細かく計測していった。「それまで作業の準備段階からじっくりと観察し、時間という定量的な数字に残すことはありませんでした。こうして時間を計っていくことで、わかりやすく事象を整理できるといいますか、どこに問題点があるのかということも明確にイメージできました。たとえば、作業員が待機している時間は、どういうときにどのくらいの割合で発生しているかということも明確になる。当然そこに問題があると考えました」と佐野は振り返る。

佐野健太(東京電力パワーグリッド 配電部配電業務改革グループ 制度構築チームリーダー)

改善策を机上検討、そして現場への反映。

4月3日の計測において、一連の作業が終了するまでに要した時間は69分だった。これをいかに短縮していくか。まずは、全体を構成する一つ一つの作業工程ごとに問題点と改善策を机上検討していった。それにより「作業分担の明確化」「地上作業員の有効活用」といったカイゼンポイントが見えてきた。
後日、机上検討された改善策を作業班メンバーに伝え、実際に作業手順に反映できるかが話し合われた。この時の様子を佐野と一緒にプロジェクトに取り組む本根敦史はこう振り返る。「果たして現場での応用が可能なのかという疑問があるなか、こちらは測定結果をもとに工程の組み替えを進めました。作業班の方々との意見交換の場では、やはり、そのやり方は無理だよ、といった意見も多かったですね」。佐野も同様に現場との温度差を当初は感じていたと言う。しかし、プロジェクトが進むにつれ、その温度差は解消されていくことになる。
4月23日、改善策の実施検証が行われた。結果的に作業に要した時間は57分。12分の短縮につながっていた。ただ、ここで新たな問題点も浮かび上がっていた。作業分担を明確化したことにより、各作業員の待時間のロスが拡大していたのだ。

本根敦史(東京電力パワーグリッド 配電部配電業務改革グループ)

工程のみならず、工法や工具までカイゼンのメスは入れられた。

机上検討はさらに重ねられた。佐野と本根は、高所作業員2名のさらなる併行作業が可能かどうか、といった全体的な工程の組み替えを検討するとともに、各要素作業の効率化にもメスを入れることにした。高所作業車のバケット内の工具の配置から、工法の変更および工具の改良まで、それは徹底的に行われることになった。
そもそも柱上変圧器取替工事の作業は、作業員の習熟度に依存するところが大きい。なかでも、柱上変圧器と高圧線をつないでいるPD線を切断および接続する作業は、作業工程数が多く、かつ作業員の習熟度によって時間のばらつきが発生する。これを解消すべく取り入れたのが「PD線の中間切断・接続工法」だ。従来、高圧線とPD線を直につないでいるコネクタ部分での切断・接続作業が行われていたが、PD線の中間部分での切断・接続を行おうというのだ。それにともない、PD線を切るためのPDカッターの改良も行われた。PD線はカットした際、6.6kV充電部が垂れ下がってしまわないよう、同時にヤットコを使って把持しなければならない。新型のPDカッターはカットと把持の両方の役割を持ち、それまで2本の工具で行っていた作業が1本の工具でまかなえる。これらのカイゼンによって、437秒もの時間短縮が可能となった。実際に高所作業を担当する工事会社の作業員は、工具改良のインパクトは大きかったと語る。「ベテランでも初心者でも同じ作業時間になるというのは、当初考えてもみなかったことです。改良された工具は、現場でも喜ばれるはずです」。
工具の改良は現場の声を反映させた上で、何度もメーカーから上がってくる試作品を試し、改良を重ねていった。このときすでにプロジェクトメンバーのマインドは完全に統一されていた。時間短縮のために何をすべきか、時間短縮がもたらす双方のメリット、それらを皆追い求めていた。
6月11日、それらのカイゼンが目に見えたカタチで実を結ぶこととなる。枝川訓練センターで行われた変圧器取替工事の実施検証では、作業時間16分46秒という、前回の57分と比べると約70%もの効率化を実現できていた。

変圧器取替作業に使われる工具

「3名で17分」という新たなる目標。

8月5日、作業時間17分という時間短縮結果について、カイゼンプロジェクトを指導する内川顧問に報告したところ、「3名で17分を目標としよう」という新たな課題が提案された。
当時の心境を佐野はこう語る。「4名で作業して17分というところまできました、という説明を内川顧問にしたところ、新たな目標を言われたので、そのときは『え!』という感じでしたね。当初1時間くらいかかっていたところ、3分の1以下に短縮できたわけですから、『どうだ!』というくらいの気持ちでした。もう、この状態で現場展開に進んでもいい。変圧器取替工事の時間短縮というテーマは卒業かなと勝手に思っていたんですけど」と、振り返る。
しかし、ここまでの時間短縮を実現していたプロジェクトメンバーはすでに自信を深めていた。「無駄を徹底して排除するとか、併行作業できるところは徹底して併行作業にするとか、意外と人が少ない方が仕事が効率的に進みます。人が少ない方が、必要な場所で必要な動きに自ずとなる。内川顧問の『最小単位でシンプルに』という言葉が実感として感じられました」と佐野は語っている。
さらなる段取り、作業組替、ルールの見直しなどを行い臨んだ9月8日の実施検証。結果は3名で14分50秒。目標をクリアした瞬間だった。

作業組替により待ちロスを削減

終わりなきカイゼン。

目標タイムのクリアは、今回のプロジェクトにおいてひとつのピークではあるが、それで終了したわけではない。これまでの改善内容を作業要領書として、すべての現場に展開していく必要があるのだ。
「目標を達成してからは、現場に展開する手順書や工程表を作成する必要があります。柱上変圧器というのは、街中にあるわけですけど、どれひとつ同じものがなくて、設置されている状況はバラバラなんです。それをある程度パターンを大別して、作業要領書を作成していきます」と佐野は語る。実際にベースとなるパターンは42、細かなパターン分けで言うと168パターンにも及ぶ。佐野はこう続ける。「しかし、これからが本番で、ようやくスタート台に立ったものと認識しています。今回作成した作業要領書は、いま我々が考え得るベターなところという段階であり、現場作業での適用が始まり、現場からもっとこうした方がいいのではないか、という声も上がってくると考えています。更なる効率化を追い求め、そういった現場からのカイゼンの声をどんどん作業要領書へ反映し続けていきます」。
現在、佐野と本根の2人は次なるカイゼンプロジェクトにも取り組んでいる。電柱の取替作業がそれだ。トータルで5日かかると言われるその作業を、1日に大幅短縮させるというもの。もちろん、それが無事成功した暁には次のカイゼンへ。
「終わりなきカイゼン」。佐野は今回のプロジェクトで感じた一言をそう表現している。

(取材•執筆:経営合理化現場取材チーム)

肩書は取材時のものです。

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