東京電力
福島第一原子力発電所トップ


現在使用中の機器に関する安全評価について
 
【目次】
1.使用中のシュラウドの安全性に関する評価
2.ジェットポンプのウェッジ等の安全性に関する評価
3.ジェットポンプセンシングライン(計測用配管)の安全性に関する評価

 

 
1.使用中のシュラウドの安全性に関する評価
 
1.概要
 GE社によりインディケーション※が発見されたと指摘されているシュラウドのうち、取替又は修理が実施されていないシュラウドを有するプラントは、
「福島第一4号機、福島第二2号機・3号機・4号機、柏崎刈羽1号機」
の合計5プラントである。
 これらのプラントで過去に確認されたインディケーションが、全て応力腐食割れ(SCC)による亀裂と、保守的(厳しめ)に仮定して強度評価を行った結果、炉心シュラウドは構造上十分な裕度を有していることを確認した。

※インディケーション
 ひびの兆候または水汚の痕跡等。ただし、インディケーションが直ちにひび割れ等の欠陥を意味するものではない。
 
 
2.構造機能
 シュラウドは、原子炉圧力容器内に設置され、燃料集合体(炉心)を囲むように配置されている円筒形のステンレス製構造物であり、冷却水の流れを分離する仕切板の役割、および炉心形状の維持機能を有する。
 
3.評価方法
 各溶接線において発見された最大長さのインディケーションの全てに対して保守的(厳しめ)な進展速度で進展したと仮定して、10年後の予想長さを算定し、許容されるき裂長さとの比較評価を行った。許容き裂長さの算出にあたっては、シュラウドの材料であるオーステナイト製ステンレス鋼は延性を有する材料であるため、この性質を踏まえた「極限荷重評価法」を用いるとともに、中性子照射により脆化する可能性を考慮すべき部位については、併せて「破壊力学的評価法」も用いて評価を行った。これらの評価は、BWR−OG(BWR-Owners Group)がプラント構造物の健全性を評価するのに用いている一般的な評価方法であり、米国NRC(原子力規制委員会:Nuclear Regulatory Commission)も事業者からのこの手法を用いた評価書を承認している。
 
(1)極限荷重評価法による評価
○き裂の想定(保守的に全てのインディケーション長さを合計して、単一の連続する欠陥を
       仮定)
・き裂発生位置及び長さ
 当時の検査記録より読み取り。(き裂の疑いは、全てき裂があるものとして評価)
・き裂深さ
 超音波探傷等により実測されていないため、保守的に全て貫通しているものと評価。
・近接しているき裂
 連続した単一の欠陥として仮定。
・き裂進展速度及びき裂評価長さ
 両端に年間11mm進展する(米国NRCが承認した保守的なSCC進展速度)とし、き裂発見から10年後にき裂が進展したとして、き裂評価長さを設定。
・最終的に、全ての欠陥長さを合計して単一の連続する欠陥に置き換え、許容き裂長さと比較評価を実施。
 
(2)破壊力学的評価法による評価
・き裂発生位置及び長さ
 当時の検査記録より読み取り。(き裂の疑いは、全てき裂があるものとして評価)
・き裂深さ
 超音波探傷等により実測されていないため、保守的に全て貫通しているものと評価。
・近接しているき裂
 連続した単一の欠陥として仮定。
・き裂進展速度及びき裂評価長さ
 両端に年間11mm進展する(米国NRCが承認)とし、き裂発見から10年後にき裂が進展したとして、き裂評価長さを設定。
・中性子の照射による破壊靭性値(材料の破壊に対する粘り強さ)の低下の影響を考慮し、破壊靭性値は中性子照射材の破壊靭性値(約165MPa√m)を使用。
・複数のき裂の疑いが同一溶接線上にある場合は、破壊力学的評価の場合は、各き裂両端の応力集中が最も厳しくなる評価すべき対象であるので、最大長さを有するき裂について評価。
 
 
4.評価
 各プラントの評価結果は表1の通り。
 
 全てのケースについて10年後の予想き裂長さは、許容き裂長さと比較して十分短いため、十分な構造強度を有していると考えられる。
 
 従って、き裂が存在したとしても、直ちに安全性に影響を与えるものではない。
 
 
(※1)中性子照射脆化が懸念される部位(H4)および念のためH3溶接線について評価
    を実施。
(※2)2個のうち1カ所は縦方向のき裂。
(※3)5個のうち2カ所は縦方向のき裂。
(※4)強化評価においては、自身荷重が支配的であり、縦方向き裂はシュラウドの強度に
    ほとんど影響を与えないため、評価の対象外とした。
(※5)インディケーションの長さが不明であるが、GEのデータシートにインディケー
    ションは、0.125〜8インチの範囲にあるとの総括的な記載があるため、H2、H7
    それぞれのインディケーション長さを8インチと仮定して強度評価を行った。
(※6)インディケーションは、中性子照射量が少ないH2にあることから、線型弾性破壊
    力学的評価は実施していない。
(※7)インディケーションは、中性子照射量が少ないH7にあることから、線型弾性破壊
    力学的評価は実施していない。
 
 
 
2.ジェットポンプのウェッジ等の安全性に関する評価
 
1.概要
 GE社によりジェットポンプにおける、セットスクリュー(インレットミキサを固定するためのネジ)とインレットミキサの隙間、ウェッジ(くさび)に摩耗の存在が指摘されているプラントは、福島第二2号機・3号機・4号機、柏崎刈羽2号機・5号機の合計5プラントである。
 これらの隙間及びウェッジの摩耗が原子炉の安全性に影響を与えるものではないことを確認した。
 
 
2.構造機能
○ジェットポンプ
 ジェットポンプとは、原子炉再循環ポンプからの水を原子炉内に導き、ノズル部から周囲の水を吸込み、原子炉再循環ポンプ流量以上の冷却水を炉心に供給する装置であり、その流路となるライザー管、インレットミキサ、ディフューザから構成され、インレンットミキサは取外し可能なためビーム、セットスクリュー及びウェッジにより機械的に固定されている。
 
○セットスクリュー及びウェッジ
・セットスクリュー及びウェッジはリストレーナブラケットに取付く部品であり、インレットミキサを水平方向に3点支持(セットスクリュー2本、ウェッジ1本)にすることで振動を押さえる機能を有する。
・3点の支持のうちウェッジ構造としているのはインレットミキサ取付けの際に、3点支持を容易に確保するためのものである。


3.評価
・ジェットポンプを模擬した試験体を用いて、セットスクリューの隙間によりインレットミキサが3点支持されなかった場合の振動試験及び解析評価を実施。
・試験及び解析の結果、セットスクリュー及びウェッジによる3点支持が確保されていなくてもジェットポンプ主要部材に発生する応力は疲労限(疲労による損傷が発生する可能性がある応力値の下限)以下であり、ジェットポンプの構造健全性に影響を及ぼすことがないことを確認。
・また、主要部材の損傷によりインレットミキサが外れたとしても、運転監視において検知可能であり、安全上の問題にはならない。
・セットスクリューの廻り止め溶接が切れて、セットスクリューが脱落したとしても周辺部の流速が遅く、バッフルフレート(原子炉圧力容器とシュラウド下部を水平方向につなげている板)上に沈下し、浮き上がることはなく滞留する。なお、原子炉圧力容器のアニュラス部(原子炉圧力容器とシュラウドの間のジェットポンプ等が設置されている空間)にある再循環ポンプ入口配管に最も近いジェットポンプであっても、セットスクリューがアニュラス部にある再循環ポンプ入口配管に移動するだけの横向きの流れが存在しなければならないことから、再循環ポンプ入口配管に吸い込まれ、炉心に入り込む可能性は低い。
・また、主要部材の損傷によりインレットミキサが外れたとしても、運転監視において検知可能であり、安全上の問題ではない。
 
 従って、今回指摘のあったセットスクリューの隙間及びウェッジの摩耗は、原子炉の安全に影響を与えるものではない。
 
 
 
 
3.ジェットポンプセンシングライン(計測用配管)の安全性に関する評価
 
1.概要
 GE社によりジェットポンプのセンシングライン(計測用配管)表面にインディケーションが発見されたと指摘されているプラントは、福島第一6号機である。
 当該配管は、ジェットポンプの流量を計測するためのものであり、万一、破断に至った場合でもジェットポンプの機能に影響はない。また、破断した場合においては、ルースパーツとなる可能性はなく、運転継続に支障を及ぼすものではない。
 
 従って、本事象は安全上問題となるものではない。
 
 
2.構造・機能
○ジェットポンプセンシングライン(計測用配管)
 ジェットポンプの流量を計測するため、ディフューザの上部と出口の圧力を計測する差圧検出用の配管(外径14mm、肉厚2.2mm)であり、ジェットポンプディフューザに固定されている。また、運転中のジェットポンプ性能を監視している。
 
 
3.評価
 今回のインディケーションがき裂であり、今後成長して破断に至ったとしても、ジェットポンプ差圧の表示値が見かけ上異常値を示し、破断の検知が可能である。
 ルースパーツへの影響については、破断が早期に検知できることから、小片となる前に適切な対応がとれること、また、万一破断した配管の他部位も破断したと仮定しても、アニュラス部の流連解析から配管はアニュラス部底部に停滞することから影響はないと考える。
 なお、同様な事象として、平成13年1月、当社福島第二1号機でジェットポンプの差圧指示値の変動を検知したため、直ちに運転パラメータの確認を行った結果、他のパラメータには変動はないものの、差圧指示値の変動原因が特定されなかったため原子炉を停止し、炉内の点検を実施したところセンシングライン(計測用配管)の破断が発見された、という事象があったが(本事象は、INES評価で0-(安全上問題のない事象)に分類されている)、早期に検知していること、ルースパーツの問題がないことから安全上の問題となるものではないと評価している。