| 花畑 |
ボクは作品という”記録”を残すのが仕事だけど、尾瀬を撮り続けているうち、むしろ”記憶”に残したい、という瞬間が増えてきています。 |
 |
| 竹内 |
えっ……。それは意外ですけど、写真家の花畑先生がそうおっしゃると、とても説得力がありますね。 |
 |
| 花畑 |
カメラを持っていると、撮影に夢中になって、とにかくシャッターを押すことだけに終始し、それに満足して帰ることになる。でも撮った景色をあまり覚えてない。それはもったいないし、寂しいことだと思うんです。もっとゆっくり歩いて、尾瀬のいろんなところを味わってほしい。「尾瀬を撮ろう」っていう動機があるのなら、尾瀬そのものがどういう構造なのかをもっと知ってほしいなあ。 |
 |
| 竹内 |
そういうことを頭に置いていれば、木道を外れて写真を撮ることの危うさにも自ずと気づきますよね。 |
 |
| 花畑 |
それは物事をきめ細かく捉えるという観察眼にもつながっていきますよ。
長年尾瀬に通っていると、木道の脇に花が多くなりつつあることに気づきます。尾瀬の中の種子を、訪れる人間が知らず知らずに運んで木道沿いに蒔いているんじゃないかと僕は思っているんです。 |
 |
| 竹内 |
尾瀬の変化って、結局のところ尾瀬だけの問題ではないと思うんです。地球の変化って繊細な自然、例えば南極の氷の解け方だとかに顕著に現れるじゃないですか。尾瀬もそういう、仔細な自然の変化に気づきやすい場所なんだと思います。 |
 |
| 花畑 |
そこに尾瀬の存在理由のひとつがあるんでしょう。だからボクは、東京電力さんが中心に推進した「ゴミの持ち帰り運動」というのは大英断だと思っているんです。尾瀬という自然の大切さを、より気づかせてくれるファクターとしてね。 |
 |
| 竹内 |
あの運動は、定着するまでに10年を要したそうです。ほぼ3年がかりで「ゴミは山小屋まで持ってきてください」次に「登山口まで持ってきてください」そして最終的に家まで持ち帰って下さいという感じで。 |
 |
| 花畑 |
でも、10年で人の意識を変えられたっていうのはすごいことだよ! 日本人はすぐに結果を求めがちだけれど、自然が相手なら50年、100年単位で物事を捉える必要があるでしょう。 |
 |
| 竹内 |
それが尾瀬だけに終始するのではなく、毎日の生活にも感じられるよう、みんなの意識が拡大していけばいいな、と。みんなの尾瀬をみんなでまもることが、みんなの地球をみんなでまもることにつながるのが理想ですよね。 |
 |
| 花畑 |
そんな意識を取り戻すために尾瀬を訪れ、潤いを頂く。それが人間として自然な姿じゃないかな。 |
| |