尾瀬を知る

尾瀬だより

第5回 「夏山シーズン到来&樹木調査」

平成22年7月21日

至仏山や燧ヶ岳など、尾瀬の山の山開きも終わり、本格的な夏山シーズンが到来しました。夏休みに入り、いよいよ尾瀬もシーズン本番、にぎやかな季節になってきました。尾瀬ヶ原ではワタスゲやニッコウキスゲ、カキツバタなど、色とりどりの花が満開になっています。今年の夏休みは、ぜひご家族・ご友人でゆったりとした時の流れる尾瀬を訪れてみてはいかがでしょうか。

【樹木調査】
6月22、23日に、当社が管理する尾瀬の木道沿いにおいて、倒木のおそれのある木(危険木)の腐朽状況の調査を行いました。この危険木調査は、万が一登山道上の木や枝が折れて、登山者の方に危険が及ばないよう、平成19年度から開始しました。毎年要注意の木を選定し、「根際(ねぎわ)伐採」「枝打ち(剪定伐採)」「継続観察」の3つに分類して管理を行っています。2日間、木の上の方をずっと見上げていたので、さすがに首が疲れてしまいました。

(6月22日 鳩待峠~山の鼻間にて撮影)

【環境省の尾瀬自然保護官と】
森の木々の中には、完全に枯死した木や朽ちかけた木も数多くあります。いずれ倒れて若木にその場を譲り土に還るのですが、歩行者が多い場所では、そうした倒木や落枝の可能性が高い「危険木」をあらかじめ把握して管理しておく必要があります。国立公園の特別保護地区、そして特別天然記念物にも指定されている尾瀬ですから、勝手に伐採はできませんので、環境省の速水尾瀬自然保護官(写真中央)にも立会をいただき、処理する木と、処理方法を決めています。

(6月22日 鳩待峠~山の鼻間にて撮影)

【完全に枯損した木】
今回の調査の結果、これまで観察対象となっていた40本のうち、15本を「根際伐採」、5本を「枝打ち」、20本を「継続観察」とし、新たに13本を危険木に追加して、今後も継続して調査を行っていくことにしました。この写真のような完全に枯死している樹木など、倒木や落枝のおそれがきわめて高い木については、根元からの伐採もしくは枝打ちを行うこととしました。

(6月22日 鳩待峠~山の鼻間にて撮影)

【樹木医のお仕事】
今回の樹木調査には、樹木医の資格を持つ笛木が同行しました。ポケットからは、叩いた時の音で腐朽状況がわかる木づちや、直径を測るメジャーなど、次々と職人道具が出てきます。今回は特別な調査のため、これらの道具を使用して、木が生きているか枯れているか、専門家の見地から樹木の腐朽状況を見極め、処理が必要な木をその場で瞬時に決めていきます。木は伐りたくはありませんが歩行者の安全確保も大事、心が痛む仕事です。

(6月22日 鳩待峠~山の鼻間にて撮影)

【環境保全スタッフが大活躍!】
調査の結果、伐採対象や観察対象とした木については管理番号をつけ、木の種類や高さ、推定樹齢、直径を測定し、わかりやすいようにテープを巻いています。このテープは、土に還る素材である、生分解性のものを使用しています。東京電力環境保全スタッフの大河原(右)、吉田(左)の2人の呼吸がぴったり合って、今回も手際よく調査が進みました。

(6月22日 鳩待峠~山の鼻間にて撮影)

【振り返ると至仏山!】
ここからは尾瀬ヶ原にジャンプします。TV番組の収録のために訪れた尾瀬ヶ原で、カメラマンに負けじと自分でも撮影してきました。今年一番の快晴に恵まれ、ワタスゲが満開の尾瀬ヶ原できれいな写真が撮れました。

(6月28日 山の鼻~牛首間にて撮影)

【咲き始めたニッコウキスゲ】
木道の脇で咲き始めたニッコウキスゲに接近。これから8月上旬までが見頃となります。昨年はシカがニッコウキスゲの新芽を食べてしまい、群生する数が減ったと言われましたが、今年はどのくらい咲いてくれるのか、次回の更新をお楽しみに。

(6月28日 山の鼻~牛首間にて撮影)

【青空と白雲】
快晴の尾瀬ヶ原で、池塘に雲が映っていました。つい見とれてしまい、先を行くスタッフたちからはすっかり遅れをとってしまいました。

(6月28日 山の鼻~牛首間にて撮影)

【荷物運びの達人】
尾瀬の山小屋にはなくてはならい、重要な役目を行なっている「ボッカ(歩荷)」さんです。人の背丈以上に荷物を積み上げて歩き、毎日70キロ~90キロ近くの物資を運んでいます。鳩待峠から遠くは温泉小屋地区まで、行きは生鮮食品やビールやジュースなどの山小屋で必要な荷物を運び、帰りは山小屋で出たゴミを中心に運んでいます。山小屋で美味しい食事や飲み物をいただけるのはボッカさんのおかげなのです。

(7月3日 鳩待峠~山ノ鼻間にて撮影)

【カキツバタ】
今年は例年になく多く尾瀬ヶ原に咲いているカキツバタ。茎(くき)は枝分かれをしないで、1本の茎に1個の花を咲かせるのが特徴です。花弁(はなびら)に1本の白いすじが入っています。

(7月3日 山ノ鼻~牛首間にて撮影)

【ムシトリスミレ】
スミレの仲間と思いがちですが、実はタヌキモ科の食虫植物です。土壌の栄養条件が悪いため、虫を捕まえて養分を補給します。高さが5~10cm程の小さな植物で、紫色の小さな花を咲かせます。

(7月6日 アヤメ平にて撮影)

【ヒダリマキマイマイ】
貝殻の模様が時計回りの反対に巻いてあることから、その名前が付けられました。湿った場所を好み、湿原や森林など、幅広い環境下で生育します。

(6月5日 白砂峠にて撮影)

【ニホンカナヘビ】
東電小屋やヨッピ吊橋付近の木道にて、天気の良い日は、日光浴をしている姿を良く見かけます。人間が近づくと、慌てて木道沿いの湿原へと姿を隠してしまいます。名前にヘビと付きますが、トカゲの一種です。

(7月3日 ヨッピ吊橋付近にて撮影)

【オオミズアオ】
山小屋の玄関先や窓によく張り付いています。大きさは、大人の手のひら位で、尾瀬で見られる蛾(が)の仲間では大きいサイズです。蛹(さなぎ)で冬を越し、幼虫は、バラ科、ブナ科、カバノキ科、などの樹木の葉を食べる緑色のイモムシです。

(7月3日 東電小屋にて撮影)

【カメムシの幼虫】
悪臭を放つ虫で有名ですが、面白い模様のカメムシを発見しました。幼虫と成虫では、体の模様が変わるため見分けるのが難しいのです。写真のカメムシは幼虫で、白砂峠の途中で巡視中の環境保全スタッフが見つけました。

(7月5日 白砂峠にて撮影)

【シータテハ】
翅(はね)の先がぼろぼろに破れているのではないかと思うほど、縁がでこぼこしています。翅の裏側には、アルファベットの「C」に似た模様があることからこの名前が付けられたそうです。また、「L」に似た模様があるチョウは「エルタテハ」という仲間も尾瀬で見ることができます。

(7月8日 ヨッピ吊橋付近にて撮影)

【ウマオイ】
写真は後姿ですが・・・、湿原内にて「スィーチョン」と鳴く、体長3cmほどのキリギリスの仲間です。鳴き声が、馬を追い立てる声に見立てて付けられた名前です。

(7月8日 ヨッピ吊橋付近にて撮影)

【ダイセンヤマナメクジ】
湿った樹林帯の木道や、木道脇の木でよく見かける巨大なナメクジです。今回ご紹介した樹木調査中にも、樹皮と間違って触ってしまい、ヌメッとした感触にびっくりしました。尾瀬にいるナメクジの仲間の中では一番大きいナメクジで、体長は10~16cmほどの大きさです。意外とその存在に気づかないので、皆さんも注意して下さい。

(7月8日 テンマ沢湿原にて撮影)

次回は、8月始めに、夏真っ盛りの尾瀬の様子を中心に、桑原よりお届けする予定です。

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