資料館

それぞれのフィールドにおいて、自然との共生や環境保護活動などに精力的に取り組んでいらっしゃるオピニオンリーダーの方々との対談内容をご紹介いたします。

田部井淳子さんと裏磐梯を歩き、自然の恵みとその利用を語り合う~自然の恵みと、人間の知恵~

<登山家>田部井淳子(たべいじゅんこ)×<東京電力・永年尾瀬保護活動担当>竹内純子(たけうちすみこ)

今回のゲストは、女性として世界で初めてエベレストの頂上に立った田部井淳子さん。尾瀬保護財団理事を務められる田部井さんとは、尾瀬でお会いすることが多かったのですが、今回は田部井さんの地元である福島県・猪苗代でお話を伺いました。 豊かな自然の恵みと、人間の知恵が織り成してきた共生の歴史がそこにはありました。

<登山家>田部井淳子(たべいじゅんこ)

<登山家>田部井淳子(たべいじゅんこ)

1939年、福島県出身。登山家。1975年、世界初のエベレスト女性登頂者となる。1992年には女性初の7大陸最高峰登頂を達成。山岳環境保護団体HAT-J(日本ヒマラヤン・アドベンチャー・トラスト)の代表として環境問題にも率先して取り組む。尾瀬保護財団理事。

豊かな水を利用した“水力発電の故郷”福島

五色沼の木道を歩く
水力発電所を管理するスタッフの方たちと
水の力を電気に変える仕組みに田部井さんも感心
竹内
田部井さんは福島県のご出身で、猪苗代の沼尻高原でロッジを経営されていますが、この地の魅力はどんなところでしょうか?
田部井
やはり山、森、水といった豊かな自然があるというのがいちばんですね。いろんな国に行って帰ってくるたびに「ここに生まれてよかった」と思います。大自然の恵みを感じながら生活できるので、ホッとするんです。
竹内
その豊かな自然の恵みをうまく利用してきた長い歴史が、ここにはあるんですよね。たとえば猪苗代湖の水を農業用水に使い始めたのがもう400年以上も前のことで、湖水を使った発電がスタートしたのも100年以上前だそうです。福島県は「水力発電の故郷」みたいなところなんですね。
田部井
水の力ってすごいですよね。一滴一滴はわずかでも、集まれば大きな力になるんですから。一人一人の力は小さいけど、みんなでやれば大きな力になるのです。
竹内
実際に水力発電所を見てみると、豊かな水と人間の知恵によって電気ができているということがよくわかりますよね。
田部井
自然の水を利用して、というのがすばらしいですね。
竹内
最終的に水は川に戻るので、再生可能そして純国産のエネルギー源ですし、発電時にCO2が出ませんからね。
田部井
都会で暮らしていると、電気が点くのは当たり前だと思っているけど、山に来ると文明のありがたさがすごく感じられるし、電気を作る現場を見るとそれがいかに大変なことかが良くわかって、感謝の気持ちが出てきます。
竹内
自然も大事、人間の今の生活も大事、そのバランスをどうとっていくかが大切なんでしょうね。

環境問題解決の糸口を尾瀬から発信

8月の「尾瀬サミット2007」にて
竹内
田部井さんは尾瀬保護財団の理事であり、環境省中央環境審議会の委員でもいらっしゃいますが、今年尾瀬国立公園が誕生したときのご感想はいかがですか?
田部井
長年の念願がかなって嬉しかったです。
竹内
私も「尾瀬国立公園」の看板を見たときにはやっぱり胸に来るものがありました。
田部井
尾瀬は、地元の人、地主の東京電力さん、山小屋の人など、それぞれの立場の方たちがひとつになって、この環境を次の世代に引き継いでいこうという熱い思いがほとばしっている場所という感じがします。
竹内
尾瀬の自然保護活動は、できる立場の人たちができることをできるかぎりやるという考え方がすごく浸透しています。その考え方は、もっと大きな地球環境問題についても解決の糸口になるんじゃないかと思うんです。
田部井
ほかの国立公園の手本になるという点で責任は重いですけど、尾瀬から発信されるものっていうのはすごく貴重だと思いますし、使命感も感じています。

体感することで意識を変えていく

エベレスト初の女性登頂者になったときの写真
写真提供=女子登攀クラブ
猪苗代湖のほとりで水の恵みについて語り合う
竹内
田部井さんがすごいなあと思うのは、エベレスト登頂や7大陸最高峰登頂だけではなく、清掃登山というものに先駆的に取り組まれていらっしゃることです。
田部井
80年代後半からエベレストにもたくさんの人が来るようになって、初登頂者のヒラリー卿が「これ以上、世界最高峰が汚くなってはいけない。持ってきたものは持って帰る運動をしようじゃないか」と世界12ヶ国に呼び掛けたんです。それに賛同し、90年にHAT-Jという組織をつくりました。
竹内
今は清掃登山という言葉もよく聞くようになりましたが、20年近く前からの活動なんですね。
田部井
一般のハイカーや登山者の間でも、トイレの紙を含めてゴミを持って帰ろうという意識がかなり高くなってきました。やはり意識を変えていくというのはとても大事なことですよね。そのためには、できるだけ若いうちにきれいな場所へ行ってもらって、「ああ、すごい。こういうところは次の世代にも残したいなあ」と感じることが大事だと思います。体感すること――自分の足で歩く、自分の目で見る、自分の肌で感じる――ことはすごく大事だと私は思うんです。そういう意味で尾瀬は最適な場所なので、多くの人に行ってもらいたいですね。
竹内
美しい場所に触れていると、こういう場所をなくしてはいけないと心底思いますものね。
田部井
体感するということの大切さを私たちが伝えていく必要があると思います。
竹内
パワフルな田部井さんからどんどん発信していただきたいなと思いますし、私も、「日本の自然保護活動発祥の地」と言われる尾瀬に関わった者の責任として、しっかりと発信していきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

立松和平さんと尾瀬を歩きながら自然保護の心についてうかがう

立松和平 作家。

養老孟司さんに自然と人とのかかわりについて聞く

養老孟司 東京大学名誉教授。

尾瀬に来て、「自然に生かされている」と感謝する気持ちを思い出してほしいですね。

萩原始 3代目富士見小屋主。

関野吉晴さんに文化人類学と大自然についてお話いただく

関野吉晴 武蔵野美術大学教授。

TEPCOのECO対談単行本「みんなの自然をみんなで守る20のヒント」発刊のお知らせ 詳しくはこちら

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