RESPONSIBILITY 02 / DECOMMISSIONING FURNACE

責任編

福島第一原子力発電所 廃炉プロジェクト

8年目を迎えた福島第一原子力発電所の廃炉作業。
現場は少しずつ、そして着実に前進している。

炉心から溶け落ちた燃料デブリの調査のための新技術の開発、放射線のモニタリング、労働環境の改善など
今、東京電力はどのようなことに取り組み、そして、どのような困難に立ち向かっているのか。
人類史上誰も経験したことがない廃炉プロジェクトの「今」を追う。

大和 正樹
大和 正樹
福島第一廃炉推進カンパニー プロジェクト計画部 燃料対策グループ
横須賀 隆
横須賀 隆
福島第一廃炉推進カンパニー 福島第一原子力発電所 冷却設備部 冷却第四グループ
高宮 枝里
高宮 枝里
福島第一廃炉推進カンパニー プロジェクト計画部 放射線・環境グループ
尾崎 大輔
尾崎 大輔
福島第一廃炉推進カンパニー 福島第一原子力発電所 放射線防護部 作業環境改善グループ

01 Responsibility

労働環境を改善することで、現場の作業効率が向上。

福島第一原子力発電所では、常時5,000人を超える作業員が廃炉関連作業に取り組んでいるが、事故発生当初と明らかに異なる点が作業員の装備だ。労働環境改善のうち放射線防護装備の適正化を担当している尾崎は語る。「平成28年2月まで発電所の構内ではカバーオール(防護服)を着用して作業に当たる必要がありました。カバーオールにはフードがついており通気性が低いため、特に夏場には熱中症に罹る恐れがあり、非常に作業性が悪い状況でした。そこで、構内の除染により事故直後よりも放射性物質による汚染のレベルを下げ、構内の各所で線量率や空気中放射性物質濃度のリアルタイムモニタリングを実施できるようにし、さらに汚染レベルの高いエリアからの汚染拡大防止に努めるルールを充実化させることによって、構内の96%のエリアでは、一般作業服や防塵マスクといった軽装で作業できるようにしました」。その後の作業員向けアンケートでは放射線防護装備の適正化により身体負荷が軽減されたと感じた作業員が全体の約8割を超えたという調査結果が出た。労働環境の改善が、作業効率を向上させ、モチベーションアップにも寄与したのである。

Responsibility
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02 Responsibility

海に流れる汚染水をブロック。港湾内外の放射線が低下。

放射性物質の低減は、発電所構内以外でも着実に進んでいる。福島第一原子力発電所の港湾内外の海水や魚のモニタリングを担当する高宮は、日々その変化を目の当たりにしている。「2015年に海側遮水壁の閉合が完了したことで、外部に漏れ出す放射性物質が減少しました。これにより、港湾内外の海水中の放射性物質濃度も低下を続けています。魚のサンプリング調査でも効果が顕著に表れており、基準値を超える魚の数も減少を続けています。私たちはこの調査結果を月に1回、地元の漁業関係者の方々にご説明させていただいており、一定のご評価をいただいています。それでも港湾内には、まだ放射能濃度が下がらない魚もいるため、港湾外に魚が出ないよう網を張ったり、定期的に港湾内の魚を捕獲しています」。現在では、福島第一原子力発電所から20キロ圏内の漁場では試験操業が実施されており、市場に流通する魚種も着実に増えている。

03 Responsibility

最新の技術とアイデアを活かして、細い管を移動する変形ロボットを開発。

燃料が溶け出してしまった1~3号機では、がれきの取り出し作業が着々と進んでいる。しかし、廃炉プロジェクトの最大の難題が炉心内で溶けた燃料デブリの取り出しだ。原子炉建屋内は、依然放射線量が高く、アクセス範囲が限られていることや、原子炉格納容器は更に放射線量が高く、人が入ることはできないため、ロボットを使った燃料デブリの位置や状態を調べる取り組みが始まっている。本社で調査プロジェクトの立案に当たっている大和は語った。「原子炉格納容器内にアクセスできる貫通孔は直径10センチほど。ペットボトルほどの穴を移動して原子炉格納容器内に入り、調査できるロボットが必要でした。さらに耐放射線性が求められるため電子機器をなるべく使わず、障害物を乗り越えながらデータを集めることができるロボットとなると、非常に高い技術が要求されたのです」。このようなロボットは当然それまで無かったものだ。国内外の学識者やメーカー各社の協力を仰ぎ、最新の技術やアイデアを駆使、さらに何度も何度も改良を重ねて開発に取り組んだ結果、ようやく完成したのがヘビのような形状変化型ロボットだった。

Responsibility
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04 Responsibility

格納容器に至るまでにあらゆるロボットの力でルートを築く。

ロボットが完成したからと言って、すぐに調査を開始できるわけではない。依然として放射線量が多い原子炉格納容器内は、前述のように人が入れないため、どのような状況下にあるか分からない状況にあった。そこで活躍をしたのが、福島第一原子力発電所で実際に調査に携わっている横須賀だ。「まず初めに、原子炉建屋内の比較的線量が低いアクセスルートをロボットで探します。高線量の箇所があれば別のロボットで放射線を撒き散らさないように除染。もし、がれきなどの遮蔽物があったら別の装置でどかす。一つひとつの問題に対して、どう対応していくのかを、本社、サイトの関係グループやメーカー各社とアイデアを出し合い、リスクを鑑みながらクリアしていきます。そして入り口となるマンホールに至ったら、別のロボットを投入して、10センチほどの穴を開けて、ようやく調査ロボットを送り込むことができるようになるのです。」ロボットはまだ人間のように自由自在に動くことができない。一つひとつの課題をクリアし、一歩一歩着実に歩みを進めているからこそ、格納容器に近づき、廃炉作業を前進させることができているのだ。

05 Responsibility

安全・確実を第一に、格納容器の内部に迫る。

2015年4月、1号機の格納容器内に形状変化型ロボットが投入され、1階部分の様子や放射線量など貴重なデータを得ることができた。また、ロボットの更なる開発を進め、2017年3月には格納容器の地下階の調査に挑戦した。次はいよいよ燃料デブリの現状を知る段階に進む。そのためのロボット開発がスタートした。当時の状況について大和は語った。「1階の床には、グレーチングがあり、地下階にアクセスできる25ミリ×90ミリの隙間があります。その細い隙間から、カメラと線量計を下に降ろす装置を備えたロボットです。他にも複眼レンズを搭載し、目標物の距離や形状を測定できるロボット、水中を移動するロボットなど、あらゆるものを開発しています。2017年の夏頃を目処に燃料デブリ取り出しの方針を策定する予定なので、その数ヶ月前までには1~3号機の内部調査を実施したいと思っています。ただ、スピードだけを優先するのではなく、あくまでも安全・確実を第一に進めています」。大和の言葉通り、2017年3月には1号機にて開発したロボットによる調査を行い、格納容器地下階の映像や放射線量のデータを得ることができた。更に、2017年2月には2号機で伸縮式パイプの先端にカメラを搭載した装置での調査、2017年7月には3号機で水中を移動するロボットでの調査で原子炉圧力容器の真下にあたる場所の映像を捉えることができた。2018年1月には、2号機の格納容器の底部で溶け出した燃料デブリの姿を捉えている。これからも、安全・確実を第一に、燃料デブリ取り出しに向けて、格納容器内部の調査は続く。

Responsibility
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06 Responsibility

トライ&エラーの経験が、今に生きている。

廃炉作業のロードマップは30~40年。これまでの8年はまだ最初の関門にしか過ぎないのかもしれない。しかし、この8年の経験はかけがえのない貴重なものだと横須賀は語る。「当然前例の無い作業であり、最初はトライ&エラーの繰り返しでした。ただ、トライ&エラーを踏まえることで事前にリスクを検出できるようになり、今では想定外のトラブルやリスクがかなり減少しました。もちろん作業が進む中で、次なる未知の作業が発生することは分かっています。しかし、それを乗り越えた経験が、また次の作業に生きてくるのです」。作業員の労働環境の改善も、環境モニタリングも、廃炉に向けた取り組みも、現場の安全を第一に考えながら、一足飛びをせずに着実に一歩一歩進む。それが廃炉に向けた最短ルートだ。目に見えて改善が進んでいる福島第一原子力発電所。それに取り組んでいる従業員たちのモチベーションは、とてつもなく高く、先にある作業完了の日を見据えている。

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挑戦編