CHALLENGING 01 / PAGBILAO

挑戦編

パグビラオ石炭火力発電所増設プロジェクト

発展途上国に戦略投資をする。もともと海外事業は東京電力の成長の柱と位置付けられていた。
震災後、復興最優先ということもあって海外投資は一時凍結されたものの、
新・総合特別事業計画が国からの認可を受け、あらたに力を入れていくことになる。
海外事業の本格再開を象徴するのがフィリピンのパグビラオ発電所の増設プロジェクトだ。

国内で得た知見をいかして、世界に貢献する。
東京電力のグローバル戦略は、ふたたび力強く歩みだした。

西岡 宏晃
西岡 宏晃
2007年入社
東京電力フュエル&パワー 包括的アライアンス推進室海外事業デューデリジェンスグループ
川島 創
川島 創
1999年入社
東京電力フュエル&パワー 国内IPP室
木村 正和
木村 正和
2004年入社
東京電力フュエル&パワー 海外IPP室海外事業第二グループ

01 Challenging

急激な経済成長を遂げているフィリピン。それに伴い首都マニラの電力需給がひっ迫。

電力市場が自由化されているフィリピン国内に、ティームエナジー社という発電会社がある。2007年に東京電力と丸紅が50%ずつ出資して欧米の企業から買い取った会社だ。3つの発電所を有し、総勢700名以上の従業員が首都マニラの電力を支えているフィリピン最大規模のIPP事業者でもある。しかし近年の著しい電力需要の伸びを背景にフィリピン国からさらなる電力の供給を求められていた。そこで2011年、ティームエナジー社と現地の財閥系企業であるアボイティスパワー社が50%ずつ出資して、ティームエナジー社パグビラオ発電所の敷地内に出力約40万kWの石炭火力発電所を増設するプロジェクトがはじまった。東京電力からは間接的に25%の出資比率となり、パートナーの丸紅とともに経営面や技術面でプロジェクト開発を主導することになる。

Challenging
Challenging

02 Challenging

増設プロジェクトの総事業費約1000億円。巨額な資金を調達する「プロジェクトファイナンス」。

プロジェクトそのものを担保に銀行から融資を受ける「プロジェクトファイナンス」という形態がある。当然、プロジェクトのリスクは関係する企業でシェアをしなければならない。それぞれの関係者の利害が絡むことから契約交渉は必然的に難航する。日本で契約の取りまとめを担当した西岡は現地の木村とともにネゴシエーションに追われた。「融資銀行団との契約、建設請負会社(EPC事業者)との契約、株主間のガバナンス契約、売電契約、発電所の運転保守契約など、さまざまな契約が必要です。お互いに利害が絡むので条件や価格を含めた調整には時間がかかります。しかし逆に粘り強く真剣勝負で向き合うからこそ最終的には信頼関係が生まれるのだと思います」。木村は現地で地場の銀行と交渉した。「現地パートナーに交渉の前面に出てもらえば有利な条件で融資を受けられる。あらためてチームワークの基本を実践することで成立したと思います」

03 Challenging

プラントの基本設計を自前で製作、EPC事業者の選定まで約1年。

調達した資金の多くは発電所の建設費用に注ぎ込むため、「どういう発電所をつくるか」が一番コアとなる。経済的、地理的な外的環境も考慮して発電所の規模や具体的なスペックをどうするか、こうした発電所の基本的な設計から自分たちで作り込む必要があった。この設計を担当したのが川島だ。「まず発電所全体の基本設計を行い、要求スペックを作成してEPC事業者の候補者に提示します。その後、候補者が提示した700~800ページの英文の提案書や価格などを含めて総合的に評価を行い、最終的に日本企業1社と韓国企業1社のジョイントベンチャーがEPC事業者になりました」。日本国内で発電所をつくる場合、設計に係る技術者は数十人に上る。しかし海外事業では川島を中心にわずか数名。EPC事業者を決めるだけで1年以上の歳月がかかった。

Challenging
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04 Challenging

安定供給をしながら競争力を高める。仕様についてぎりぎりの交渉が続く。

EPC事業者が決まったからといってすぐに着工できるわけではない。そこからの仕様の調整にさらに1年以上を要した。「自由化だからといって安ければいいというわけではありません。例えば2台必要なポンプを1台にして、それがトラブルを起こして発電所自体が止まってしまっては安定供給に支障が出てしまい、電力収入もなくなってしまいます。逆にゴージャスな施設をつくると結果的に競争力を失ってしまう。その調整が一番難しいところでした。設備によっては数億円規模のものもあり、技術者同士でもいろいろな意見が出て簡単には決まりません。私は幸いモノを定量的に見て示すのが得意な方だったので、設備の投資効果や必要なスペックを数値化し、スポンサーとして合理的な判断ができるよう努力しました。時間はかかりましたが、結果的にこのようなやり方を通してパートナーとの信頼関係を築くことができたかなと思っています」。この間、川島は年の3分の1ほどフィリピンにいた。

05 Challenging

いよいよ工事着工へ。起工式典にはアキノ大統領も出席。

2014年9月、マニラにて起工式典が催された。東京電力からは社長が出席し、アキノ大統領も駆けつけた。ティームエナジー社に出向中の木村もその式典に参加していた。「大統領はスピーチで『本プロジェクトは単なるインフラ事業ではなく、何よりもこの国そしてフィリピン人の将来にとって重要な意義がある』とお話しされました。私たちが海外で行っている仕事は、国内同様その国の皆さんの生活を支える仕事と言っても過言ではなく、今回のプロジェクトを通じてそれを再認識できました。融資契約締結、着工はあくまでプロジェクト全体のマイルストーンの一つでしかありません。発電所が予定通り無事に商業運転を開始できるよう、建設工事をサポートしていきたいです」。発電所の完工予定は2017年だ。

Challenging
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06 Challenging

グローバルなエネルギー企業へ。世界に貢献できる技術が東京電力にはある。

「海外で仕事をしていると東京電力の海外展開への期待が高いことを感じます。世界でも有数の規模を誇り、これまで数十年にわたり首都圏の電力安定供給を支えてきた実績が世界的にも評価されている表れです」(木村)。「エンジニアとしては、発電所の建設段階の支援だけではなく、運転している発電所に対しても東京電力のノウハウをいかした技術支援を行い、海外での安定供給や事業の成功に積極的に貢献していきたいですね」(川島)。「国内で培ってきたもので世界に貢献できる原石が東京電力には数多くあります。良いモノにさらに価格競争力をつけて海外へ持っていく。可能性は無限にあります」(西岡)。中東、東南アジアなど東京電力のフィールドはたくさんある。

責任編
挑戦編