CHALLENGING 05 / SMART MANSION

挑戦編

スマートマンションサポートサービス プロジェクト

2014年8月5日、既設分譲マンションを対象とした
「スマートマンションサポートサービス」が開始された。

通常、マンションの入居者は各戸で電力会社と個別契約(低圧契約)を結んでいる。
これに対して、マンション管理組合がマンション一棟分の電気を一括契約(高圧契約)し、
各戸へ低圧に変圧して供給するのが「高圧一括受電」だ。
各戸ごとの契約からマンション一括での契約に変更することで、
共用部の電気料金を20~40%ほど削減することが可能となる。

電気料金の削減につながるサービスは大きな反響を呼んだ。
しかし、それに至るまでの道のりには数々の困難が待ち受けていた。

大野 洋一
大野 洋一
1999年入社
東京電力エナジーパートナー 暮らし&ビジネスサービス事業本部 住生活事業部 スマートライフ提案第二グループ
大澤 由美子
大澤 由美子
1992年入社
東京電力エナジーパートナー 暮らし&ビジネスサービス事業本部 住生活事業部 スマートライフ提案第二グループ
横田 豊
横田 豊
1996年入社
東京電力エナジーパートナー 暮らし&ビジネスサービス事業本部 住生活事業部 スマートライフ提案第二グループ
山口 友香
山口 友香
2007年入社
東京電力エナジーパートナー 暮らし&ビジネスサービス事業本部 住生活事業部 スマートライフ提案第二グループ

01 Challenging

社内に「ミニ東京電力」を立ち上げる。たった2人で始めた事業化への道筋。

「マンション高圧一括受電サービスをすぐに事業化してほしい」。2013年7月、大野に突然ミッションが降った。専任は、大野と管理職のたった2名。「異動してきたばかりで何も分からず、『高圧一括受電って何?』『なぜ今やるの?』という疑問を解決するため、まずはマンション管理会社をリサーチして回りました。するとニーズが急速に広がっていて、その背景には震災以降の電気料金値上げや、電力自由化を見据えて競合他社が相次ぎ参入しているといった、環境の大きな変化があることが分かりました」。すぐに事業化の青写真を描く。事業立ち上げ費用を抑制するため、既存の仕組みや人員を最大限活用することを前提とした。「このサービスには、電気設備の調達や保安管理、検針、料金計算・請求、緊急時の対応など電気事業のほぼ全ての業務が含まれています。そのため社内に『ミニ東京電力』を作るようなイメージでした」。2人は常に多忙を極めていた。そんな最中の2014年2月26日、日経新聞にある記事が掲載された。『東京電力が一括受電サービスを開始する』というニュースだった。

Challenging
Challenging

02 Challenging

記事以来、高まる世間の期待。早期の事業化に立ちはだかる様々な壁。

記事が掲載されて以来、「いつからサービスを開始するのか?」といった問い合わせが殺到した。引っ切りなしに鳴る電話。山口がプロジェクトに合流したのは、その時だった。「大変なことになったと。正式発表ではありませんが、世間から注目されて一刻も早くプレスリリースしなくてはという雰囲気でした」。しかし、これまで地域の電力会社が本体自らマンション高圧一括受電サービスを手がけた例はなく、大きな壁がいくつも立ちはだかった。そのひとつが法律の壁だ。電気事業法や独占禁止法、個人情報保護法、弁護士法など関連する諸法令が山ほどあった。「調べては行き詰まる、というくり返しでした。社内の法務部門だけでなく、弁護士事務所に何度も出向き、場合によっては関係省庁にも確認しました。『サービス開始できないのではないか』という大きな課題がいくつもいくつも湧き上がってくるんです」。とにかくひとつずつ課題をクリアしなければならない。慎重さもスピード感も求められた。そして記事から約半年後、ようやくプレスリリースまでこぎ着けることができた。

03 Challenging

8月5日、サービス開始のプレスリリース。あまりの反響に追いつかない提案書の作成。

電話が鳴り止まない。プレスリリース後、具体的な問い合わせだけでも数百件。その直前に合流した大澤は、とにかく驚いた。「お客さまから凄い勢いで電話をいただき、平日はほとんど一日中電話対応に追われました。しかも『直接説明に来てほしい』と併せてご要望をいただきますので、土日はマンション管理組合の理事会にお伺いする日々。うれしい反面、ほとんど休みが取れない状態でした」。このサービスを導入できるか、そして削減率がどれくらいになるかは、そのマンションの電気室の図面確認に加え、直接現地に赴いて判断が必要な場合もある。その後、工事費用や年間の電気使用量などを考慮した上で削減率を計算してようやく提案書が出来上がる。「当初、お客さまには1ヶ月程度で提案できるとお伝えしていたのですが、問い合わせが多すぎて2ヶ月後でも提案できそうにない状況でした。提案書作成待ちの案件が積み上がる一方で、次々と新しい問い合わせも殺到していました」。その時、頼りになる助っ人があらわれた。エンジニアリングチームの横田だ。

Challenging
Challenging

04 Challenging

サービスの導入可否を確認後、削減率を計算。提案書が出来て、競合とのプレゼンに。

横田のミッションは、積み上がった書類の“山崩し”だった。「お客さまから『ウチのマンションを調べてほしい』という委任状が届くと、私たちがそのマンションの電気室の図面を取り寄せて確認します。簡単にいうと、マンションの電気室を一括受電設備に変更できるかどうか、導入可否の判断を行います。導入できることがわかれば削減率の提案ができます。その導入可否判断待ちの案件が溜まりに溜まっている状況で、なおかつどんどん増えている。やってもやっても終わらない印象でした」。導入可否の判断が終わった案件は、次に削減率の計算に移される。計算を任された山口の机にも、次々と山が築かれていった。「とにかく計算して、数百件の提案書を作りました。それを持って、みんなで手分けをして提案に伺いました」。マンションの理事会の開催日はほとんどが週末に集中する。多い日は一日20件以上重なることもあった。土日はそれぞれが分担し、年末年始以外の週末はほとんど提案に明け暮れた。

05 Challenging

長い道のりを経てようやく実現した第一号物件は、埼玉県熊谷市のマンション。

提案時の理事会にはもちろん競合他社もいる。そこで競って選ばれると、次に住民説明会を行い、総会で了承を得るという流れになる。しかし、それで終わりではない。マンションの入居者は各戸ごとに電力会社と契約を結んでいるため、これらを一旦解約し、このサービスを導入することに同意する、いわゆる“全戸同意”が必要となる。「一人でも反対の方がいらっしゃるとこのサービスは導入できません。総会で承認を得ても、中には反対という方や、なかなかお会いできない方もいます。土日はこれらを一軒一軒お訪ねして個別に説明もしています」(大澤)。ようやく全戸から同意が得られると、工事会社の入札や工事日の調整などで約4~6ヶ月かかる。そして、2015年5月、第一号物件として埼玉県熊谷市のマンションで工事が行われた。現場に立ち会ったのは横田だ。「第一号物件だけに予期しないトラブルが起きないかと心配していたのですが、何事もなくスムーズに進み無事に送電するに至りました。ただ、最後のミーティングをしている時に震度4~5の大きな地震が起きたんです」

Challenging
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06 Challenging

サービスを開始してあらためて感じたこれまでの東京電力への信頼と評価。

工事の日は、社内にいたスタッフも気が気でなかった。さらに地震も発生。地震からしばらくして、横田から無事に工事が完了したという報告があった。「おおっ!」という歓声、そして握手をするスタッフたち。事業化に取り組んでから約1年10ヶ月後のことだった。「このサービスを開始してあらためて感じたことは、我々の一番の強みは、高圧一括受電になっても今までと同じように検針員が検針をして、何かあれば最寄りの事業所から作業員が駆けつけるという、東京電力がこれまで積み重ねてきた『信頼』だったんです。提案に伺った際に、『電気はやっぱり東京電力がいい』『こんなサービスを始めるなんて、東京電力は本当に変わったんだね』という声をお聞きするとすごく嬉しいですね」。家庭向けの電力自由化競争はこれから始まる。しかし、マンション部門での競争はすでに始まっていた。このプロジェクトは、その先陣を切っている。

責任編
挑戦編