持続可能な社会を実現する、
電気自動車(EV)の新たな価値創造へ向けた取り組み

2017/09/07

電気自動車(EV)の普及に向けて、黎明期からさまざまな研究開発に取り組んできた東京電力。現在では、急速に普及しつつあるEVを環境にやさしい移動手段とするだけでなく、バックアップとしての電源や新たな電力システムの構築にも活用するプロジェクトがはじまっています。今回は、そのプロジェクトを推進する東京電力の責任者と「EV活用アイデアコンテスト」で最優秀賞を受賞した、東京都市大学の太田豊先生との対話から、EVの新たな価値創造へ向けた取り組みをご紹介します。

東京電力ホールディングス株式会社
経営技術戦略研究所 リソースアグリゲーション推進室
プロジェクト推進グループ マネージャー

篠田 幸男

1993年入社。茨城支店下館工務所(現・下館支社)、竜ヶ崎工務所(現・竜ヶ崎支社)で変電所の保守・制御・工事設計管理を担当。その後、システム研究所(当時)へ異動し、電力システムの最適化に関する研究に従事するかたわら、東京農工大学大学院で学び、博士号(工学)を取得。2015年7月から現職で、EVや蓄電池を活用した新しい電力システムの研究、開発に携わっている。

電気自動車(EV)の急速な普及とともに加速する、東京電力の取り組み

EVというと、これまでは未来の車というイメージでしたが、ここ数年で自動車メーカーが次々と高性能なEVを発売し、今ではガソリン車に混じり、多くのEVが道路を軽快に走っています。その背景にあるのが、携帯電話やノートパソコンなどに使われるリチウムイオン電池の登場です。1990年代後半から、リチウムイオン電池を搭載したEVが開発されたことで、従来の鉛電池が抱えていた、充電走行距離が短い、充電時間が長い、電池が重いから加速しない、価格が高いなど多くの課題が克服されていきました。

それとともに、電気をお届けする東京電力のEVに対する取り組みも加速しています。自動車メーカーとの共同開発や独自の研究開発はもちろん、EVの普及に不可欠な充電設備のインフラ整備なども急ピッチで進められています。2010年には東京電力が主体となり、急速充電器の開発や普及推進などをするチャデモ協議会が設立され、2017年7月時点で、全国に設置された急速充電器は約7000ヵ所にのぼっています。

EVは、ただ単に環境にやさしい移動手段というだけではありません。EVに搭載されたバッテリーは蓄電装置なので、電力のバックアップや災害時の非常用電源などにも利用でき、その機能には、私たちのくらしをより便利に、安全に、快適にするための大きな可能性が秘められています。現在、私が取り組んでいるプロジェクトのひとつが、そうしたEVの可能性をいかし、くらしに役立つ新たなサービスや電力システムを開発することです。そのためのアイデアは、社内からはもちろん、広く一般からも募集し、WEB上の「TEPCO CUUSOO」で開催した「EV活用アイデアコンテスト」では、東京都市大学の太田先生の研究チームが最優秀賞を受賞し、EVを活用した新たな価値の創造に期待が高まっています。

※「TEPCO CUUSOO」 エネルギー関連の技術・アイデアのためのオープンイノベーションプラットフォーム

EVの新たな活用法を説明しながら、大学生たちと意見交換をする篠田さん

いよいよ到来したEV時代! EVが当たり前に走る社会がやってくる

篠田「太田先生は、EVや再生可能エネルギーの活用、電力システムの研究で多くの実績があり、この分野での第一人者でいらっしゃいます。ですから、当社が主催した『EV活用アイデアコンテスト』に興味を持ってくださり、たいへんうれしく思っていたのですが、応募のきっかけはどんなことだったのですか?」

太田「私たちの研究では、今より先を考えることが大事ですから、常に多くのEVが当たり前に走る未来を見据えた研究を行い、そうした社会に貢献するさまざまなプランやアイデアも持っていました。ですから、コンテストのことを知ったとき、それをいかすチャンスが訪れたと思いました。同時に、コンテストの開催は、長い間EVの普及に貢献してきた東京電力さんが、その取り組みを加速させたことの証しでもあると思い、いよいよ本格的なEV時代が到来したのだという実感を得ることもできました。その潮流に乗り、流れをさらに加速させるためにも、ぜひ私たちのアイデアを実証させていただきたいと思ったのです」

篠田「『再生可能エネルギーをEVへ充電し、他の施設へ運び、給電することで、再生可能エネルギーをシェアすることをキャンパス間で実証する』という太田先生の研究チームのご提案は、EVで充放電できる再生可能エネルギーを利用し、それを別の地点へ運んでシェアするという、EVならではの特徴をうまくいかしたアイデアとして高く評価され、それが最優秀賞の決め手になりました」

太田「EVは、走行時にCO2を排出しないクリーンな車です。しかし、発電の過程でCO2を排出する火力発電の電気で走るなら、本当に環境にやさしい車とは言えないのではないか。そんな疑問やご指摘を受け、なんとか解決したいと思ったことが、今回のご提案につながりました。それを評価していただき、たいへん感謝しています」

(写真・左)東京都市大学 工学部 電気電子工学科 太田豊准教授

篠田「今後は、どのような方法で実証実験を進めていくのですか?」

太田「東京電力さんから貸与していただいた2台のEVを活用し、東京都市大学世田谷キャンパスにある太陽光発電で充電したEVを他のキャンパスに移動し、教室の照明などに利用するという実証実験を行っていく計画です。その成果やこれからの取り組みは、10月にベルリンで開催される学会でも発表する予定です」

篠田「太田先生の研究チームの活動をとおして、世界へ向けても情報発信できるのはたいへんうれしいことです。EVの新たな価値創造に向けた取り組みを広くPRできれば、さらなるEVの普及にもつながりますし、私の実感としては、10年ぐらい先には当たり前にEVが走る時代がやって来ると思っていますので、今後の取り組みにもたいへん期待しています」

太田「スマートフォンの急激な普及を見ればわかるように、世の中は急速に変化しています。ですから、緑あふれる環境の中を多くのEVが行き交う社会の到来も、想像以上に早いかもしれません。そのときは、幹線道路沿いのオープンカフェで、目の前を走るEVを眺めながら篠田さんと意見交換をしたいですし、その実現に向けて、学生たちとともに全力でこの実証実験に取り組んでいきたいと思います」

篠田「そのときはきっと、鳥のさえずりも聞こえるでしょうね。私も太田先生と同じように、EVが当たり前にある風景を思いながら日々の業務に取り組んでいます。そうした持続可能な社会が一日も早く訪れるよう、太田先生や学生さんたちと定期的な情報交換や交流を行いながら、同じ目標に向かってともに歩んでいきたいと思います」

さらに大きな夢を抱き、持続可能な低炭素社会の実現を目指す

EVの存在が以前より身近になっているのは確かですが、その普及をさらに加速させるためには課題もあります。そのひとつが、ガソリン車に慣れてしまっている私たち一人一人の意識です。自宅で充電でき、ガソリンスタンドへ行かずにすむことはEVの大きな利点で、特にスタンドが減少している地方ではその便益は特に顕著です。しかし実際にEVを利用してみると、毎回充電ケーブルを抜き差しすることを億劫に感じるかもしれません。今後、普及が予想される非接触充電はこのような問題の解決につながることが期待されます。
また、まだEVのラインナップが少ないことも課題です。今後、様々なEVやPHEVが発売されると思いますが、多くの方々がくらしに合わせたEVを選び、そのメリットを存分に活用できるよう、私たちも、電力会社の立場で自動車メーカーなどの関係者のみなさまとの協力や連携を強化し、EVの利便性や価値が一層向上するようにしていきたいと思います。

私は小学生のころ、科学の本を読んで、子供ながらにこれはすごいと思った技術が2つあります。それは、太陽光発電とリニアモーターカーです。それ以来ずっと、大人になったら太陽光発電で乗り物を動かしてみたいと思い続け、大学で電気工学を学び、東京電力に入社し、幸せなことに、今も夢の実現に向けた道を歩み続けています。その過程では、もっと現実的な仕事をしなければと悩んだこともありましたが、世の中のEV化の機運が高まり始めた1年ほど前からは具体的なプロジェクトもはじまり、社内でも社外でも多くの方々が積極的に協力してくださるようになりました。それにたいへん感謝するとともに、私自身もEVの時代が目の前に来ていることを肌で感じています。そして、子供のころの夢が現実となりつつある今、その先にある、持続可能な低炭素社会を実現するというさらに大きな夢に向かい、これからも日々の業務に邁進していきたいと思います。

太陽光パネルの横に立つ篠田さん。「太陽光発電で乗り物を動かしたい」という子供時代の夢を叶え、持続可能な社会の実現という次なる夢の実現を目指す

関連情報

  • EVのある暮らし

    エネルギーや環境の問題に対しても貢献できるEV。
    私たちは、EVの普及に努めることで、社会の期待に応えていきます。

  • TEPCO CUUSOO

    東京電力グループは、新しい考え方や科学技術で社会にインパクトをもたらし、新しい価値の創造、社会的課題の解決を共に実現してくださるパートナーを求めています。

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