資料館

それぞれのフィールドにおいて、自然との共生や環境保護活動などに精力的に取り組んでいらっしゃるオピニオンリーダーの方々との対談内容をご紹介いたします。

尾瀬が、教えてくれるもの~尾瀬のルールは地球のルール~

<日本自然写真家集団>新井幸人(あらいゆきひと)×<東京電力・永年尾瀬保護活動担当>竹内純子(たけうちすみこ)

雑誌「旅写真」2005年5月号より抜粋。新井さんの作品を追加して再編集しました。

<日本自然写真家集団 同人>新井 幸人(あらい ゆきひと)

<日本自然写真家集団 同人>新井 幸人(あらい ゆきひと)

1953年 群馬県赤城村生まれ。
1974年 撮影のために訪れた尾瀬沼で蒼い夜明けに出会う。
1982年 フリーカメラマンとして独立。以降『美しい日本』にこだわり撮影を続けている。
近年では鳥海山やブナ、そして新しい日本海の撮影を意欲的に行っている。2004年6月、写真集『緑の水脈』(小学館)出版。他、尾瀬にまつわる写真集・著書多数出版。第2回NHK地域放送文化賞受賞。

尾瀬が、教えてくれるもの。

中田代上空からみる尾瀬ヶ原
ヨッピ吊り橋を渡る。写真の器材は25kgにもなる。
ニッコウキスゲと至仏山
新井
「三脚の一本くらい湿原に落としてもいいだろう」。30年前、尾瀬を撮り始めた頃は、僕もそんな感覚だったんですよ。で、よくサブレンジャーの若者たちから注意されたっけ。
竹内
私も最近、一眼レフを手にし始めたんですけど、ファインダーを覗くと、そこに見えるものしか見えなくなっちゃうことってありますよね。
新井
決して悪気があるわけではないんです。単にそれが湿原にどういう影響を与えるか、ということを知らなかっただけ。もちろん、その地層が単純な泥ではなく、8000年という長い年月をかけて育まれた“泥炭”だなんて知る由もない。
尾瀬を撮り始めて30年。今や木道は往路、復路の複線化がなされ、尾瀬は厳しい自然環境ではあるけれど、門戸が広くなって普通の公園のように楽しめる場所になりました。だからこそ、鳩待峠の入口にある種子落としマットを踏むと、改めて気付かされるんだよね。そこにある自然に、決して手を加えてはいけない場所だということを。
竹内
あのマットは、移入植物を取り除くという点から見れば役割を100%果たしてはいません。服に付いてきた種子までは取れませんし。でも、登山口にああいうマットがあることで、「あ、これから自分はそんなに繊細な自然の中に入って行くんだな」という意識を持って頂ける、そこにもまた大きな意味があると考えていたんです。だから新井さんにそういってもらえると、マットを設置している立場としては安心しますね。
東京電力が、尾瀬という“日本の宝”をお預かりすることになったのは1951年。大正時代の電力会社が尾瀬の豊富な水を水力発電に活かそうと取得した、尾瀬の7割の土地と水利権を引き継いだんです。
その後10年ほどで、尾瀬には多くのハイカーが押し寄せるようになりました。当時はまだ、自然を守るための設備やマナーが整っていなかったため、アヤメ平に代表される繊細な自然はまたたく間に荒廃。そこで東京電力は木道の敷設や公衆トイレの設置という、尾瀬の自然を守る取り組みを始めました。でもそうした「縁の下の力持ち」としての働きも大切だけれど、やはり「みんなの尾瀬をみんなでまもろう」と呼びかけて、皆さんのパワーをもらうことも大切だろうと思っています。

自然を思いやる心を生活や写真に還元させよう

尾瀬沼の夕景
駆け抜ける秋 竜宮十字路から至仏山
大霜の朝 上田代
竹内
尾瀬を守る、そんな経験をきっかけに皆さんに身の回りの自然に意識を持ってもらい、地球を守ることにつながればいいなと思っています。例えば新井さんは、カメラマンの皆さんにマナーを守るように呼びかけて下さっているし、東京電力は入山される方に、ゴミ拾いボランティアへの参加をお願いしたりしています。それぞれの人がそれぞれの立場で、できることをやる。あきらめないことが大事かなって思うんですよね。
新井
カメラマンなら、尾瀬へ行って素晴らしい光景をモノにしたいという衝動はもっともです。でも「ああ、あの草がなかったら・・・・・・」なんて気になるのは本末転倒。尾瀬をこの先もずっと撮っていきたいなら、尾瀬が未来永劫今の状態を留めている必要がある。そうすれば、その草を痛めずに撮る方法を考えよう、そんな気持ちが自然に湧き起こってくるはずです。
竹内
尾瀬に身を置くと、みんなでこの自然を守ろう、という積極的な意識を共有できますからね。それこそが尾瀬の持つ素敵なパワーなんだと思います。でも、一歩尾瀬を離れてしまったらゴミや残飯は出し放題、では悲しい。それでは尾瀬の持つ意味が半減してしまいます。尾瀬にいる間は十分意識を保てるんだから、日常生活にもその経験を反映させてほしい。それでこそ尾瀬の自然を味わった意味が出てくると思うんです。
新井
そうそう。実は僕にはね、尾瀬の自然を「撮っている」のではなく「撮らせてもらっている」という感覚があるんです。それはまさしく、尾瀬が教えてくれたこと。例えば野球の写真を撮るには、野球の知識がないと次にどういう展開になるか予想できないからまずいでしょ。だから自然を撮るには、その自然を理解しようと努力する心を忘れないでください。そのことは、見た目の美しさだけに目を奪われず、作品の質を深めていくことにつながります。朝、いち早く現場に到着することだけがいい作品の条件じゃない。そう思うんです。

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