ウラン価格20年ぶりの高水準に
原子力発電の燃料となるウラン(ウラン精鉱=注参照)の価格が高騰しています。
海外の調査機関によると、2003年前半頃まではスポット契約価格が1ポンドあたり10ドル前後で推移していましたが、今年3~5月には17.75ドルと、20年ぶりの高値になり、6月中旬以降は18ドルを超える高水準となっています。
最近、「ウランはだぶついている」と言われていますが、関係者の間では2010~2013年以降には世界的に需給が逼迫するとの見方が強まっています。
ウラン価格高騰の主な要因として、以下の3点が挙げられています。
- 2001年10月の豪州・オリンピックダム鉱山の工場火災、2003年4月のカナダ・マッカーサーリバー鉱山の漏水事故、ナミビア・ロッシング鉱山の生産量減少などで、03年の世界のウラン精鉱生産量が約3800トンウラン減少しました。
- 1995年から米国がロシアから購入してきた「解体核兵器の高濃度ウラン」の契約が2013年に終了し、西側諸国の「過去の過剰在庫」も2013年頃には無くなるとみられていること。
- 米国、中国の需要が旺盛であること。現在、中国は建設中の原子炉も含めて11基約900万キロワットを保有しているが、2020年には3600万キロワット程度に拡大する計画です。
WNA(World Nuclear Association:旧ウラン協会)のデータによれば、ウランの一次供給(鉱山からの生産量)は世界需要の半分程度に落ち込んでいるのが現状です。その差を埋めてきた解体核兵器からのウランや西側諸国の保有在庫(二次供給源)が、あと10年も経たないうちに無くなることで、需給ギャップはさらに大きくなると思われます。
世界のエネルギー消費量が増大するにつれ、限りある資源の確保がますます重要になってきます。その中で、ウランはリサイクルができるという、他の資源にない特徴を持っています。
ウランの需給逼迫は、原子燃料サイクル、再処理工場に関する議論に対して、影響を与えそうです。
(注)ウラン精鉱:採掘したウラン鉱石を精錬し、不純物を取り除いて純度を高めた粉末状のウラン(イエローケーキとも呼ばれる)。ウランは、ウラン精鉱の形で生産者から引き渡されます。したがってウラン生産量とは、実際にウラン鉱石を精錬した量ということになります。
以 上
【世界のウラン需給の見通し】
