プレスリリース 2010年

福島第一原子力発電所2号機における原子炉自動停止に関する調査結果について

                             平成22年7月6日
                             東京電力株式会社

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<概要>
(事象の発生状況)
 ・平成22年6月17日、2号機において、発電機の異常を知らせる警報が発生し、
  発電機が停止したため、原子炉が自動停止いたしました。
               (平成22年6月17日お知らせ済み・公表区分I)
(調査結果)
 ・発電機から受電するプラントの常用系電源の所内側しゃ断器A、B系が同時に
  動作し「切」状態になりました。
 ・外部電源からの受電に切り替わらなかったためにプラントの常用系電源が停止
  したことから、通常は常用系電源から受電している非常用交流電源も停止いた
  しましたが、2基の非常用ディーゼル発電設備が自動起動し非常用交流電源が
  速やかに確保されました。
 ・送電線の系統安定化装置の所内電源切替え用補助リレーが動作した可能性があ
  りました。
 ・所内電源切替え用補助リレーが取り付けてある制御盤内で、協力企業作業員が
  温度記録計の交換作業を行っていました。
 ・作業場所は狭隘であり、温度記録計の近くに所内電源切替え用補助リレーがあ
  りました。
(推定原因)
 ・記録計の交換作業の作業場所が狭隘であったため、作業員が送電線の系統安定
  化装置の補助リレーに接触した等、何らかの衝撃が補助リレーに加わり、瞬間
  的に誤動作した可能性が考えられました。
 ・このためプラントの常用系電源の所内側しゃ断器A、B系が同時に動作し「切」
  状態になりましたが、外部電源へ切り替わらなかったためプラント内の電力供
  給が停止し、発電機界磁しゃ断器が動作して「切」状態になったことから、発
  電機およびタービンが自動停止し、原子炉が自動停止したと推定いたしました。
(対策)
 ・系統安定化装置は、同装置の設置以降、系統設備の増強により、系統の安定性
  が向上したこと等の理由により使用していないため、同装置の電気回路を撤去
  いたします。
 ・2号機の再起動までに、今回の補助リレーのようにケースに収納されておらず、
  リレー単体で制御盤内に設置されているものを調査・抽出し、制御盤内での作
  業時に接触または衝撃を与える可能性があるものに対して、注意喚起の表示を
  いたします。
(今後の予定)
 ・準備が整い次第、制御棒の引き抜き操作を開始し、原子炉を起動する予定です。

詳細は以下のとおりです。
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1.事象の発生状況
  平成22年6月17日午後2時52分頃、運転中の福島第一原子力発電所2号機(沸
 騰水型、定格出力78万4千キロワット)において、「発電機界磁しゃ断器*1ト
 リップ警報」が発生し、発電機の保護装置が作動して発電機が停止したため、タ
 ービンならびに原子炉が自動停止いたしました。
  また、この事象にあわせて当該プラントの常用系電源*2が停止し、原子炉へ
 給水するポンプが停止したことから、原子炉の水位が一時的に低下しましたが、
 代替のポンプである原子炉隔離時冷却系*3を起動して給水を行い、現在、原子
 炉の水位は通常の範囲内で安定しております。
  主排気筒放射線モニタ*4および、空間線量率を測定するため発電所周辺に設
 置されているモニタリングポストは通常の変動の範囲内であり、本事象による外
 部への放射能の影響はありません。
               (平成22年6月17日お知らせ済み・公表区分I)

2.調査結果
  調査の結果、以下のことがわかりました。
  (1)プラント停止に係る調査関係
   ・発電機から受電するプラントの常用系電源の所内側しゃ断器A、B系が同
    時に動作し、「切」状態になったこと。
   ・この際に、外部電源側のしゃ断器が入らず、外部電源からの受電に切り替
    わらなかったためにプラントの常用系電源2系統が停止したこと。
   ・プラントの常用系電源の停止により、励磁制御装置の冷却ファン*5が停
    止したため、発電機界磁しゃ断器が動作して「切」状態になり、発電機が
    自動停止したこと。これに伴いタービンが自動停止し、原子炉も自動停止
    したこと。
   ・プラントの常用系電源が停止したことから、原子炉へ給水するポンプが停
    止し、原子炉の水位が一時的に低下したこと。
   ・原子炉へ給水するポンプが停止したことから、代替のポンプである原子炉
    隔離時冷却系を手動にて起動して給水を行い、原子炉の水位を通常の範囲
    内に戻したこと。
   ・なお、プラントの常用系電源が停止したことにより、通常は常用系電源か
    ら受電している非常用交流電源も停止したが、2基の非常用ディーゼル発
    電設備が自動起動し非常用交流電源が速やかに確保されたこと。
  (2)プラントの常用系電源が停止したことに係る調査関係
   ・中央制御室の送電線の系統安定化装置*6の所内電源切替え用補助リレー
    が取り付けてある制御盤内で、事象発生当時、協力企業作業員が温度記録
    計の交換作業を行っていたこと。
   ・制御盤内は狭隘であり、系統安定化装置の所内電源切替え用補助リレーは、
    交換作業を行っていた記録計から約10cmの距離に設置されていたこと。
   ・送電線の系統安定化装置の所内電源切替え用の補助リレーが動作した際、
    通常は常用系電源の所内側しゃ断器が「切」状態になり外部電源側のしゃ
    断器が「入」状態になる。しかしながら、補助リレーの動作時間が極めて
    瞬間的であると、所内側しゃ断器のみが「切」状態になり、外部電源側の
    しゃ断器は「入」状態にならず、発電機からの受電が外部電源からの受電
    に切り替わらない可能性があること。
   ・系統安定化装置の所内電源切替え用補助リレーの打振試験*7を行った結
    果、補助リレーが極めて瞬間的に動作することが確認されたこと。
   ・衝撃によるリレー単体の誤動作によって所内側しゃ断器A、B系が「切」
    状態となり、外部電源からの受電に切り替わらず常用系電源2系統が停止
    する事象が発生するリレーは、今回の系統安定化装置の所内電源切替え用
    補助リレーのみであったこと。

3.推定原因
  中央制御室において協力企業作業員が記録計の交換作業を行っていたところ、
 作業場所が狭隘であったため、記録計近傍にある送電線の系統安定化装置の所内
 電源切替え用補助リレーに接触した等、何らかの衝撃が補助リレーに加わり、誤
 動作した可能性が考えられました。
  このため、発電機から受電するプラントの常用系電源の所内側しゃ断器A、B
 系が同時に動作し「切」状態になりました。
  しかしながら、誤動作した補助リレーの動作時間が極めて瞬間的であったため、
 常用系電源の所内側しゃ断器のみが「切」状態になり、外部電源側のしゃ断器は
 「入」状態にならず、発電機からの受電が外部電源からの受電に切り替わらなか
 った可能性がありました。
  これらのことから、プラントの常用系電源が停止し、発電機界磁しゃ断器が動
 作して「切」状態になったために、発電機が自動停止するとともにタービンおよ
 び原子炉も自動停止したものと推定しました。

4.対策
  2号機の送電線の系統安定化装置については、同装置の設置以降、系統設備の
 増強により、系統の安定性が向上したこと等の理由により現在使用していないこ
 とから、誤って接触しても信号が発信しないように、所内電源切替え用補助リレ
 ーを含む電気回路は今回の停止期間中に撤去することといたします。
  また、2号機の再起動までに、今回の補助リレーのようにケースに収納されて
 おらず、リレー単体で制御盤内に設置されているものを調査・抽出し、制御盤内
 での作業時に接触または衝撃を与える可能性があるものに対して、注意喚起の表
 示を実施いたします。また、リレー近傍での作業時は、接触防止措置を施すか、
 安全処置を行うかを関係者間で協議することといたします。
  なお、制御盤内作業、操作を行うときはリレーに接触または衝撃を与えないよ
 うに十分に注意することを運転員および作業員へ周知することといたします。
  また、2号機以外のプラントについても、系統安定化装置の所内電源切替え用
 補助リレーを含む電気回路を至近のプラント停止時(現在停止中のプラントにつ
 いては起動まで)に撤去することとし、撤去するまでの間は、原則として補助リ
 レーに接触する可能性のある作業を行わないことといたします。
  さらに、制御盤内での作業時に接触または衝撃を与える可能性があるものに対
 する注意喚起の表示等についても、至近のプラント停止時(現在停止中のプラン
 トについては起動まで)に2号機と同様に実施してまいります。

5.今後の予定
  今後、準備が整い次第、制御棒の引き抜き操作を開始し、原子炉を起動する予
 定です。

                                  以 上

*1 界磁しゃ断器
    発電機内の回転子に電流を流す回路のスイッチ。

*2 常用系電源
    常用系電源は、所内電源(交流電源)のうち、通常使用しているプラント
   設備に供給する電源。
    所内電源(交流電源)には常用系電源と非常用交流電源があり、いずれも
   プラント運転時は発電機から所内変圧器により供給され、発電機停止時は外
   部電源(送電系統および他プラント)より供給される。

*3 原子炉隔離時冷却系
    何らかの原因により、通常の原子炉給水系が使用できなくなり、原子炉水
   位が低下した場合等において、原子炉の蒸気を駆動源にしてポンプを回し、
   原子炉の水位確保および炉心の冷却を行う系統。なお、本系統は非常用炉心
   冷却系ではない。

*4 主排気筒放射線モニタ
    建屋内の換気等を排気する排気筒(煙突状のもの)から環境へ放出される、
   建物内の空気や復水器を真空維持しておくために排出されるガスの放射線を
   測定する装置。

*5 励磁制御装置の冷却ファン
    励磁制御装置は、発電機の回転子に流す直流電流をつくるとともに制御し、
   発電機の発生電圧を調整する装置であり、冷却ファンは、励磁制御装置を冷
   却する送風機。
    冷却ファンが停止すると、励磁制御装置を保護するため、発電機界磁しゃ
   断器が「切」状態になる。

*6 系統安定化装置
    送電系統に事故(周波数変動、系統電圧変動を含めた系統動揺)が発生す
   ると、発電側と負荷側に差が生じることから、発電機を含めて系統が不安定
   となるため、発電機を送電系統から切り離す(発電機をトリップさせる)こ
   とにより余剰発電量をカットし、系統を安定させるための装置。
    なお、系統安定化装置の設置以降、系統設備の増強により系統の安定性が
   向上したこと等の理由により、現在は使用していない。

*7 打振試験
    素手等で補助リレーをたたき、振動、衝撃により補助リレーが動作する可
   能性の有無を確認する試験。

添付資料
・2号機原子炉スクラム(自動停止)までのメカニズム(PDF 62.9KB)



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