多核種除去設備
福島第一原子力発電所で発生する「汚染水」を浄化する設備のひとつ。
汚染水に含まれる放射性核種のうちトリチウム以外の大部分を取り除くことができる設備です。
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撮影月 2017年4月撮影
福島第一原子力発電所では、多くの方のご協力を頂きながら、事故に伴って発生した高濃度の放射性物質を含む「汚染水」への対策を進めています。
当サイトでは、汚染水に含まれる放射性物質を浄化し、リスクを低減した「処理水*」について、データ情報や対応状況などを皆さまにお伝えしてまいります。
「多核種除去設備等の処理水」の表記について(2020年3月見直し)
トリチウムを除き告示濃度比総和1未満の処理水は「多核種除去設備等の処理水」又は「処理水」
十分に処理していない処理水は「多核種除去設備等の処理水(告示比総和1以上)」
2つを併せて示す場合は「処理水*」と表記しています。
福島第一原子力発電所では、発生した汚染水に含まれる放射性物質を多核種除去設備等で浄化し、処理水*(ストロンチウム処理水を含む)として敷地内のタンクに貯蔵しています。
なお、敷地内には1061基のタンクがあります。(多核種除去設備等処理水の貯蔵タンク1002基、ストロンチウム処理水の貯蔵タンク45基、淡水化装置(RO)処理水12基、濃縮塩水2基/2020年12月17日現在)。
※2020年12月11日に、約137万㎥のタンクの設置を完了
多核種除去設備等の処理水*
ストロンチウム処理水
現在、多核種除去設備等の処理水*は、トリチウムを除く大部分の放射性核種を取り除いた状態でタンクに貯蔵しています。
多核種除去設備は、
汚染水に関する国の「規制基準」のうち、
環境へ放出する場合の基準である「告示濃度限度」より低いレベルまで、放射性核種を取り除くことができる(トリチウムを除く)能力を持っています。ただし、設備運用当初の不具合や処理時期の運用方針の違いなどにより、現在の
告示濃度比総和別の貯蔵量は下図の通りになっています。
多核種除去設備等の処理水*は、敷地内のタンクに貯蔵しています。2020年12月11日に、約137万㎥のタンクの設置が完了しました。2022年夏頃には計画した容量に達する見込みです。( タンク建設進捗状況)
廃炉事業に必要と考えられる施設(貯蔵を継続するためのタンクや使用済燃料・燃料デブリの一時保管施設など)の設置に向けて、敷地全体の利用について、作業進捗に合わせ検討していく必要があります。
福島第一原子力発電所の敷地利用状況です。
※点線施設は、建設計画が決定しているものです。
※2019年10月時点
廃炉事業に必要と考えられる施設の設置に向けて、敷地全体の利用について、作業進捗に合わせ検討していく必要があります。
福島第一原子力発電所では、敷地内で処理水*を
タンクに貯蔵する際の国の基準「敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年」を満たすため、2013年度以降、多核種除去設備等による浄化処理を進めた結果、2015年度末に敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を達成しました。
多核種除去設備は、それ以降も発電所のリスク低減を踏まえた運転を実施しています。
2013年度〜2015年度
セシウムのみを取り除いた状態の高濃度汚染水を敷地内のタンクに貯蔵していた2013年当時の敷地境界線量は、9.76ミリシーベルト/年に達し、国の定める基準である
「敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年」を大幅に超過していた。
多核種除去設備による処理を2013年より開始し、敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年の早期達成を目標とし、稼働率を上げて浄化処理を実施。
多核種除去設備による浄化処理を進めた結果、2015年度末に敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を達成した。一方、多核種除去設備の不具合などにより、核種別の告示濃度超過も発生した。
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2016年度
多核種除去設備等による処理が進んだことにより、処理容量がタンクの建設容量を上回ったため、処理水を貯蔵するタンクが不足しはじめた。
処理水を貯蔵するタンクの建設を急ぐとともに、多核種除去設備の浄化能力をいかし、核種別の告示濃度を意識した処理を実施。
多核種除去設備の浄化能力をいかした処理を行ったため、2013年度~2015年度と比べ、核種別の告示濃度超過の発生割合が少なくなった。
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2017年度~
漏えいリスクの高いボルト締めのフランジ型タンクに貯蔵している水を早期に処理すること。
2018年度末までにフランジ型タンクに貯蔵している水を多核種除去設備で処理することを目標とし、敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を維持しつつ、多核種除去設備の稼働率を上げて浄化処理を実施し、リスク低減をはかる。
フランジ型タンクで貯蔵するリスクを低減させることを意識し、多核種除去設備の稼働率を上げて処理を実施した。
その結果、2018年11月に、フランジ型タンク内のストロンチウム処理水(多核種除去設備等による処理前の水)については、全量処理が完了したものの、2016年度と比べ核種別の告示濃度限度超えの割合が多くなっている。なお、2019年3月に、フランジ型タンクに貯蔵している多核種除去設備等処理水についても、溶接型タンクへの移送が全て完了した。
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処理水*の今後
福島第一原子力発電所1~3号機の原子炉内には、事故により溶けて固まった燃料(燃料デブリ)が残っています。燃料デブリは水をかけ続けることで冷却された状態を維持していますが、この水が燃料デブリに触れることで、高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」が発生します。また、この高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」は原子炉建屋内等に滞留しているため、建屋内等に流れ込んだ地下水や雨水と混ざることによっても「汚染水」が発生します。
この「汚染水」は、複数の設備で放射性物質の濃度を低減する浄化処理を行い、リスク低減を行った上で、敷地内のタンクに「処理水*」として保管しています。
「多核種除去設備」は、福島第一原子力発電所で発生する汚染水を浄化する設備のひとつです。この設備にある、吸着材が充てんされた吸着塔に汚染水を通すことによって、放射性物質を取り除く仕組みになっており、トリチウム以外の大部分の核種を取り除くことができます。
なお、汚染水に関する国の「規制基準」は
①タンクに貯蔵する場合の基準、
②環境へ放出する場合の基準の2つがあります。周辺環境への影響を第一に考え、まずは①の基準を優先し多核種除去設備等による浄化処理を進めてきました。そのため、現在、多核種除去設備等の処理水*はそのすべてで①の基準を満たしていますが、②の基準を満たしていないものが8割以上あります。
当社は、多核種除去設備等の処理水(告示比総和1以上)の処分にあたり、環境へ放出する場合は、その前の段階でもう一度浄化処理(二次処理)を行うことによって、トリチウム以外の放射性物質の量を可能な限り低減し、②の基準値を満たすようにする方針です。
「トリチウム」は水素に中性子が2つ加わったもの(三重水素)で、水素とほぼ同じ性質を持っています。
放射性核種のひとつであり、ベータ線という放射線を出しますが、そのエネルギーは小さく、紙1枚で遮ることができるほどです。
もともと「トリチウム」は、宇宙から降りそそいでいる放射線(宇宙線)と大気がまじわることによって常に生成されています。そのため、トリチウムが水素の代わりに酸素と結びつき、「水」のかたちで大気中の水蒸気や雨水、海等自然界に存在しています。
「トリチウム」は、日常生活でも飲水等を通じて体内に取り込まれていますが、新陳代謝等によって、蓄積・濃縮されることなく体外に出ていきます。
なお、国内外にある原子力施設(原子力発電所や再処理施設)では、核分裂等を通じてトリチウムが生成されており、各国が、それぞれの国の規制に基づいて管理されたかたちで、海や大気等に排出しています。
タンクに貯蔵している処理水*は、トリチウム以外にも放射性物質が含まれています。その放射性物質の濃度については、さまざまな放射性物質から出るベータ線をまとめて短時間で測定できる“全ベータ測定”と、告示濃度限度に対して検出濃度が比較的高い主要な7つの放射性物質(※)の各濃度の合計値で評価する“核種分析”の2つの方法で分析しています。
2018年10月、全ベータ測定値と核種分析の合計値に差(かい離)があることが分かり、その後の調査で、差分は7つ以外の炭素14,テクネチウム99が起因していることが分かりました。(2019年1月17日公表)
今後は、主要な7つの放射性物質に加え炭素14およびテクネチウム99についても分析し、全ベータ値との差がないかを確認していきます。また、炭素14、テクノチウム99以外の不明な放射性物質がないかも調査します。
なお、環境中に放出する場合、トリチウムを除く核種の告示濃度比総和が1以上の処理水*は2次処理して、告示濃度比総和1未満にする方針としています。
(※)主要な7つの放射性物質(主要7核種)
セシウム134,セシウム137,コバルト 60,アンチモン 125,ルテニウム106(+ロジウム106),ヨウ素129,ストロンチウム90(+イットリウム 90)
国の法令では、原子力施設から放射性物質を環境へ放出する場合の告示濃度限度が定められており、その放射性物質は、約1,000種類あります。
多核種除去設備は、汚染水に含まれる放射性物質のうち、人や環境へのリスクの観点で取り除く対象に設定した62種類の放射性物質(トリチウムを除く)を、国の規制基準(告示濃度限度)未満まで取り除く能力を有するように設計しています。
運用を開始した初期の除去が不安定な時期や、周辺環境への影響を第一に考え「タンクに貯蔵する場合の基準」を優先して処理をしていた時期を除き、62種類の放射性物質は、告示濃度限度比総和1未満になると評価(※)しています。
下のグラフは、汚染水に含まれる62種類の放射性物質のうち、「告示濃度限度」に対して放射性物質の濃度が比較的高いものについて、多核種除去設備で浄化処理する前(入口)と後(出口)で濃度を比べたものです。
処理後を見ると、環境へ放出する場合の国の規制基準(告示濃度限度)を下回る濃度まで低減できていることがわかります。
「62種類およびトリチウム」以外の炭素14をはじめとする他の放射性物質の濃度については、基準に照らして十分に低いと評価しています。
(※)多核種除去設備で浄化処理した後(出口)に採取し、分析した結果から評価
原子力施設から放射性物質を含む液体又は気体を環境中に放出するにあたっては、公衆や周辺環境の安全確保が大前提であり、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に沿って従前から定められている国の規制基準を確実に遵守することが求められています。
処理水の貯蔵タンク(2020年6月末までに分析を実施したタンク;計80基)における炭素14の濃度は、国の規制基準(告示濃度限度)である2,000ベクレル/リットルに対して、平均で42.4ベクレル/リットル※です。仮にその水を、成人が毎日約2リットル、一年間にわたり飲み続けた場合でも、年間で0.021ミリシーベルト程度となっています。
処理水(炭素14も含めてトリチウムを除く核種の告示濃度比総和が1未満)を環境へ放出する場合は、トリチウムの濃度が国の規制基準を十分に下回るよう希釈を行うことで、周辺地域の皆さまの健康や環境、産物等に関する安全をしっかりと確保してまいります。
※ 最小2.53ベクレル/リットル、最大215ベクレル/リットル
福島第一原子力発電所で発生する汚染水を浄化処理し、発電所内のタンクで貯蔵している水。
セシウムとストロンチウムを除去した「ストロンチウム処理水」と、多核種除去設備等によって、ストロンチウム処理水からトリチウム以外の大部分の放射性核種を取り除いた「多核種除去設備等の処理水*」があります。
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福島第一原子力発電所で発生する汚染水の浄化設備である多核種除去設備等でトリチウム以外の大部分の放射性核種を取り除いた水
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国が法令※で定めた、福島第一原子力発電所から放射性物質を環境へ放出する場合の、核種毎の放射能濃度の上限のこと。
※東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関して必要な事項を定める告示
タンクに貯蔵されている多核種除去設備等の処理水*を今後どのように取り扱うかについては、処理水の扱いに関する国の小委員会での議論、地元をはじめ関係者の皆さまのご理解・調整も踏まえて、国から基本的な方針が示される予定です。
当社は、処理水*をタンクで安全に管理しながら、国の方針を踏まえて、関係者の皆さまのご意見を伺いつつ、丁寧なプロセスを踏んで、適切に対応してまいります。
多核種除去設備等の処理水*の処分にあたり、環境へ放出する場合は、環境へ放出する際の国の基準(告示濃度比総和)で「1未満」となることが求められています。当社は、多核種除去設備等の処理水(告示比総和1以上)の処分にあたり、環境中へ放出する場合は、その前の段階でもう一度浄化処理(二次処理)を行うことによって、トリチウム以外の放射性物質の量を可能な限り低減し、上記の基準値を満たすようにする方針です。
原子力規制委員会は、発電所の敷地内に保管されている、ガレキや汚染水等から敷地境界に追加的に放出される線量(自然界にもともとあった線量を除いて、発電所から新たに放出されて増えた分の線量)を「年間1ミリシーベルト(1mSv/年)未満」に抑えることを求めています。この「敷地境界における実効線量」は、敷地内で処理水*をタンクに貯蔵する際の安全管理の基準になっています。
多核種除去設備等の処理水は、敷地内のタンクで貯蔵しています。タンクは、漏えいリスクを低減させるため、ボルト締めのフランジ型タンクから、順次溶接型タンクへのリプレースを行っています。2019年3月にフランジ型タンクに貯蔵している多核種除去設備等処理水について、溶接型タンクへの移送が全て完了しました。
また、タンク周囲には、堰を二重に設けて、万が一漏えいした場合でも堰の外に流れ出ることを防ぎます。
さらに、タンクのパトロールや水位監視(常時監視)等を継続的に行い、漏えいリスクに備えています。
多核種除去設備等の処理水*の取扱いについて、科学的な安全性を確認するだけではなく、社会的な影響も含めた処分方法などの検討が必要であるとして、国が立ち上げた小委員会(多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会)。さまざまな分野の専門家の皆さまにより、技術的観点に加え、風評被害などの社会的影響も含めた総合的な議論が行われている。
汚染水に関する国の「規制基準」には、
①タンクに貯蔵する場合の基準(敷地境界における実効線量)
②環境へ放出する場合の基準(告示濃度)
の2つがあります。
国は法令※で、放射性物質を環境へ放出する場合の、核種毎の放射能濃度の上限(告示濃度限度)を定めています。複数の放射性物質を放出する場合は、核種毎に告示濃度限度が異なることから、それぞれの告示濃度限度に対する比率を計算し、その合計値を「告示濃度比総和」とよんでいます。
※東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関して必要な事項を定める告示
多核種除去設備等の処理水*は、より多くの量を貯められ、漏えいリスクが低い溶接型タンクで貯蔵しています。
タンク周辺には、堰を二重に設けて、万が一漏えいした場合でも堰の外に流れ出ることを防ぎます。
また、継続的にタンクのパトロールや常時水位監視等を行い、漏えいリスクに備えています。
「大容量タンク」「地中タンク」「洋上タンク」など他のタンク形式の使用も検討しましたが、現在の溶接型タンクで処理水*を貯蔵することにしています。
廃炉事業を円滑に進めるため、様々な施設の具体的な検討を進めていきます。
また、今後の作業進捗に合わせ必要な施設も検討していきます。
必要な時期 | 施設 | 理由 |
---|---|---|
2020年代前半 | さまざまな試料の分析用施設 | 分析能力の強化のため |
燃料デブリ取り出し 資機材保管施設 |
燃料デブリ取り出し装置の メンテナンスのため |
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燃料デブリ取り出し モックアップ施設 |
燃料デブリ取り出し装置の 事前確認のため |
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燃料デブリ取り出し 訓練施設 |
燃料デブリ取り出し前の 訓練のため |
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事故対応設備保管施設 | 事故時に用いた 設備保管のため |
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2020年代後半 | 燃料デブリ・放射性廃棄物 関連の研究施設 |
本格的な燃料デブリ取り出しで 得られる知見の研究のため |
廃棄物リサイクル施設 | 廃棄物の減容、 再利用のため |
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廃棄物一時保管エリア | 至近10年以降の 廃棄物保管のため |
「使用済燃料・燃料デブリの一時保管施設」の設置には、約81,000㎡の土地が必要と試算しています。