周りの山々は少しずつ雪化粧をし、吹く風も冷たくいよいよ冬本番の季節となってきました。まもなく片品村村内のスキー場も次々とオープンし、ウィンタースポーツシーズンの幕開けを迎えます。現在尾瀬は閉山して道路も通行止めとなりましたが、今回は施設の点検及び調査のために尾瀬の中に入った東京電力環境保全スタッフ達が撮影してきてくれた11~12月の尾瀬の動植物やイベント情報、シーズン中にお届けできなかった作業について、辰井よりお届けします。
第18回 「雪まじりの尾瀬&エコプロダクツ2010」
平成22年12月17日
- 【燧ヶ岳】
- 燧ヶ岳(標高2356m)は、日本百名山に指定される、東北地方以北では最高峰の山です。柴安嵓(しばやすぐら)、俎嵓(まないたぐら)、御池岳、赤ナグレ岳、ミノブチ岳という5つの峰があり、これらを総称して「燧ヶ岳」と呼ばれています。尾瀬では最も新しい火山で、燧ヶ岳が噴火した際の溶岩が今の沼尻付近で川をせき止めたことにより、尾瀬沼の地形ができたと言われています。
(11月18日 尾瀬沼周辺にて撮影)
- 【ツキノワグマ目撃】
- ヨッピ橋の調査に向かった環境保全スタッフ達が尾瀬ヶ原を歩いていると、数十m先に草紅葉の終わった薄茶色の湿原の中に黒くうごめくものを見かけたそうです。よく見ると正体はツキノワグマで、スタッフたちの方をチラッと見ると、湿原の中へと姿を消したそうです。今年もクマの目撃情報は多かったそうですので、来年以降も尾瀬を探索される際にはクマ鈴などを必ず身に付けて行動するようお願いします。
(11月26日 牛首付近にて撮影)
- 【カモシカと遭遇】
- 大清水方面の調査に向かったスタッフ達からは、カモシカと遭遇したと報告がありました。この日は天気もよく、人間に慣れているのか、数メートルの距離まで近づいても逃げることもなかったので、この日は絶好のカモシカの撮影会となったそうです。人間のいなくなった尾瀬で、動物たちはすっかり安心して過ごしているようですね。ちなみにカモシカは、オス・メス共にこのような角をもっています。
(11月20日 大清水周辺にて撮影)
- 【鳩待峠周辺】
- 12月はじめ、シーズンが終わって一ヶ月が経った鳩待峠です。鳩待峠にはうっすらと雪が積もり、山からは手がかじかむほどの冷たい風が吹きつけていたそうです。この日は、雪雲におおわれていたため、至仏山を望むことはできなかったそうです。
(12月2日 鳩待峠にて撮影)
- 【ウサギの足跡発見!】
- 雪が積もると、いろいろな動物たちが歩いた跡が雪の上に残ります。これはウサギの足跡なのですが、左右に並んでいる足跡は後ろ足、縦に並んでいる足跡が前足になり、前足が地面に着地して跳び箱を飛ぶような要領で、後ろ足を着地しながら歩いているのがわかります。
(12月2日 鳩待峠周辺にて撮影)
- 【ダケカンバ林】
- ダケカンバは標高1,400m以上の場所で見られます。似ている樹木にシラカバがありますが、樹皮の色に違いがあり、シラカバの樹皮が白色をしているのに対して、ダケカンバはやや赤みを帯びています。薄い紙のように剥がれやすいダケカンバの樹皮は、油の成分を多く含むので、昔は火をおこす際の着火剤として利用されていたそうです。
(12月2日 鳩待峠周辺にて撮影)
- 【ブナの実】
- 尾瀬戸倉山林を代表するブナは、森林を構成する重要な役割をもつ広葉樹で、すぐれた保水力をもっています。ブナの実は「殻斗(かくと)」という殻の中に包まれていて、その中に1~3個の実が入っています。この実は、動物の大好物ですが、人間が食べても美味しいそうです。
(12月2日 鳩待峠周辺にて撮影)
- 【大きな果物!?】
- 戸倉山林内の木に、何か大きな袋がぶら下がっています。実は、この袋には来年度のブナ植林ボランティアにてボランティアの方に植えて頂く苗木が入っており、春の雪解けの時期に苗の芽が開かないように、苗に雪をたっぷりと盛り、もみがらをかけて雪が溶けないようにして袋で覆い、自然の冷蔵庫にしています。冬季はこの高さまで雪が積もるため、木の上にぶら下げて保管しています。
(12月6日 西栗周辺にて撮影)
- 【山はみんなの宝!全国大会】
- 11月30日に「山はみんなの宝!全国大会」が開催され、私達の上司である環境部尾瀬・緑化グループの小島にて出席しました。この大会は山岳地域の環境をまもるため、全国各地で山の自然保護に取り組む方々が集まり、全国大会として開催されました。
(11月30日 日本青年館にて)
- 【エコプロダクツ2010】
- 12月9日~11日までの3日間、東京ビックサイトにおいて、日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ2010」が開催され、私達環境部スタッフも行ってきました。今年のテーマは、「グリーン×クリーン革命!いのちをつなぐ力を世界へ」。この展示会では企業や団体が集結し、温暖化防止だけではなく、今年のCOP10の開催などで大きな話題となった生物多様性保全や資源の枯渇などが重要な課題として取り上げられました。
(12月9日 東京ビックサイトにて)
- 【自然学校の展示】
- ここが東京電力グループのブースです。このブースの一部に、東京電力自然学校のブースを出展しました。特設ステージでは、星野が自然解説員(インタープリター)として、来場されたお客様を前に、尾瀬の動植物や自然保護活動のお話をしました。
(12月9日 東京ビッグサイトにて)
- 【山人(やもーど)料理】
- 尾瀬の福島県側・桧枝岐村の方々による年末恒例の新そば祭りが、東京・日暮里のホテルで開催され、私達もごちそうになってきました。檜枝岐村の「山人(やもーど)料理」の中でも、名物といえるのが、この山椒魚の天ぷらです。山椒魚の生命力の強さから、古くから元気の源として知られています。
(12月7日)
- 【新そば】
- そして、これが檜枝岐村名物の「裁ちそば」です。手を定規代わりにし、布を裁つように切ることからその名がついたのだそうです。コシがあってとてもおいしく、2回もおかわりしてしまいました!
(12月7日)
- 【至仏山の登山道整備】
- ここからは、今年1年の中で、なかなかご紹介できなかった、環境保全スタッフ達のその他の仕事ぶりについてご紹介します。まず、こちらは至仏山登山道に設置してあるコースを制限するための柵について、高山植物の植生への影響を抑えるため、重量のある柵から、より軽量な「打ち込み丸管(まるかん)」に交換しています。特に腕っぷしの強い、力持ちの環境保全スタッフ達が作業にあたっています。
(8月18日 至仏山登山道)
- 【尾瀬地区浄化槽修繕】
- 8月、東電小屋および鳩待峠の公衆トイレに設置した浄化槽の部品交換と点検を行いました。当社は尾瀬地区に5箇所の公衆トイレを整備しており、そのすべてに浄化槽を設置しています。浄化槽の管理は、年に1度、浄化槽法に基づく定期検査を実施して、処理機能が劣化していないかどうか、毎年確認しています。写真は浄化槽法に基づき、放流水を定められた排水基準に保つために、放流槽に消毒のための薬品を投入しているところです。
(8月6日 鳩待にて)
- 【危険木の枝打ちおよび伐採】
- 第5回尾瀬だよりの際に、尾瀬地区の社有地内にある倒木のおそれのある樹木(危険木)の調査についてお伝えしましたが、この時の環境省との調査結果に基づき、11月に枝打ちおよび根際伐採を行いました。職人さんたちは準備万端。スイスイっと木によじ登り、慣れた手つきで作業していました。これらの作業は、安全対策のため、通行者のいないシーズン終了後に実施しています。
(11月12日 鳩待~山の鼻間にて)
次回の尾瀬だよりは、年明けの1月1日にお届けします。
- 平成22年12月1日
- 第17回尾瀬だより 「尾瀬の麓・戸倉で見つけた動植物たち」
- 平成22年11月21日
- 第16回尾瀬だより 「だんだんと冬らしく・・・」
- 平成22年11月11日
- 第15回尾瀬だより 「尾瀬の福島県側・檜枝岐村へ」
- 平成22年10月21日
- 第14回尾瀬だより 「駆け足で過ぎ去った秋」
- 平成22年10月11日
- 第13回尾瀬だより 「尾瀬での様々な出会い♪」