尾瀬を知る

尾瀬だより

第20回 「新年を迎えた尾瀬」

平成23年1月15日

 はじめに、昨年の12月21日、財団法人尾瀬保護財団の設立および尾瀬国立公園の実現化に大きく御尽力なされた、前群馬県知事の小寺弘之(こでら・ひろゆき)氏が御逝去されました。謹んでご冥福をお祈り致します。

 さて、お正月をゆっくり過ごしたのも束の間、新年の仕事初めを迎え、職場や学校での生活が皆様スタートしたかと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。今年はうさぎのように、ホップ・ステップ・ジャンプとなるような、明るい飛躍の年になるといいですね。尾瀬では、新年早々30cm程の積雪に見舞われ、各地で除雪作業に追われていましたが、尾瀬沼の積雪量は1月上旬で1m30cm程度と、昨年に比べて50cm程も少なかったとのことですが、寒波が続いていますので積雪量も徐々に増えてきたようです。今回の尾瀬だよりは、昨年12月に行われた尾瀬フォーラム、見渡す限り雪化粧をした1月の尾瀬、そして元日に行われたニューイヤー駅伝について、辰井よりお届けします。

【尾瀬フォーラム】
昨年の12月17日、群馬県高崎市の高崎シティギャラリーにおいて、12回目となる「尾瀬フォーラム」が開催され、私辰井湯浅、環境保全スタッフメンバーで出席してきました。フォーラムでは、「尾瀬の生物多様性」をメインテーマに、尾瀬の植物相やニホンジカ対策についての講演がありました。特に印象に残ったのは、主に北海道にしか生息しない北方系の植物が、本州では珍しく尾瀬に生息しているということでした。改めて尾瀬の不思議さ・奥深さを知ることができました。

(12月17日 高崎シティギャラリー)

【尾瀬の写真展】
また、会場では「第15回わたしの尾瀬フォトコンテスト」の入賞作品や、プロの写真家の撮影した作品など、計160点を紹介する写真展も同時開催され、多くの方々が訪れていました。

(12月17日 高崎シティギャラリー)

【雪に埋もれた看板】
ここからは冬季の巡視で尾瀬に入った東京電力環境保全スタッフから届いた写真をご紹介します。まず、写真は大清水入山口です。一面が白銀の世界に変わり、膝まで積もった新雪の上はふかふかしていて歩きづらく相当大変な巡視だったそうです。一歩歩くごとに「ギュッ、ギュッ」と雪がしまる音があたりに響いたそうです。

(1月4日 大清水)

【山小屋にも雪】
この日、ふもとの戸倉は曇りでしたが、大清水周辺では小雪が舞っていたそうです。戸倉と大清水の標高差は280mですが、明らかに天候が違うことがわかりました。山小屋の屋根には雪が積もり、辺りは静けさに包まれていました。

(1月4日 大清水)

【大清水湿原】
山小屋のすぐとなりにある大清水湿原でも50cm程の雪に覆われていましたが、湿原を流れる沢は顔を出していて、その上を縦横無尽にシカやカモシカ、テンなどが歩いた足跡が見られたそうです。

(1月4日 大清水)

【つらら】
大清水地区にある山小屋の軒先にて氷柱(つらら)を発見しました。まだできはじめの細く短い物ですが、これから積雪が多くなり、温かい日と寒い日が交互に訪れるようになると、氷柱はより太く長く成長します。大きくなりすぎると、落下した際に建物を傷つけてしまう事もあるそうです。気をつけないと危険ですね。

(1月4日 大清水)

【垂れ下がったヒノキの葉】
ヒノキの葉に雪が積もり、その重みで枝や葉が垂れ下がっていました。枝葉に積もった雪は、風に吹かれると粉雪となって舞います。また、枝葉に多くの雪が積もると、重みで木が折れてしまうこともあるそうです。

(1月4日 戸倉~大清水間)

【雪化粧したカラマツの美林】
戸倉から大清水へ向かう途中の道路沿いにあるカラマツ美林も白く雪化粧していて、幹や枝についた雪が、冬ならでは綺麗な風景を演出していました。春の新緑や秋の紅葉、冬の雪景色など、四季折々美しい景色を私達に見せてくれる、やすらぎの場所です。

(1月4日 戸倉~大清水間)

【ブナ植林地の巡視】
環境保全スタッフが冬季期間中に行う大切な仕事の1つに、戸倉山林のこれまでの植林実施地を定期的に巡回して苗木の生育状況などを調べる仕事があります。広大な尾瀬戸倉山林に点在する植林地への移動手段は、車道より奥については徒歩で行います。植林地によっては、道路から遠い場所もあり、体力勝負の仕事です。

(12月16日 尾瀬戸倉山林)

【ハリギリの冬芽】
次に、東京電力自然学校スタッフから届いた、尾瀬で見つけた植物や生き物たちの冬の写真をご紹介します。まず、この写真はハリギリの冬芽です。ハリギリのような落葉樹は、秋に葉を落として休眠状態で冬を過ごしますが、春に再び芽吹くために、この冬芽が成長します。冬芽は赤黒く、ツヤツヤしていて、枝についているトゲの数が少ないのが特徴で、トゲがまったくついていないものもあるそうです。

(1月4日 戸倉~大清水間)

【トチノキの冬芽】
同じ冬芽でも、このトチノキの冬芽の表面は油を塗ったようなつやがあり、触るとねばねばとしています。この理由は、虫を寄せつけないためにコーティングをしているという説があるようです。東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室では、冬季期間中はスノーシューツアーを開催しており、冬芽の観察も取り入れてバリエーションを広げたツアーを行っています。

(1月4日 戸倉~大清水間)

【ヤマハンノキの実】
枝の先端に、小さなマツボックリ状の数個の実がたくさん垂れ下がって付いているヤマハンノキの実を発見しました。このヤマハンノキの実は大人の親指くらいの大きさで、装飾用のリースなどに使われているそうです。

(1月4日 戸倉~大清水間)

【不思議なハチの巣】
自然学校スタッフたちが「目玉のおやじ」に似ているという、とても変わった形をした蜂の巣を発見しました。赤ん坊の手のひらくらいの大きさで、可愛らしく、珍しい形をしていました。スタッフによると、キイロスズメバチがつくり始めたばかりで放棄してしまった巣ではないかとのことです。

(12月17日 戸倉)

【冬鳥の観察会】
東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室で行った12月の日帰りツアーは「冬鳥の観察会」でした。冬鳥の観察は、尾瀬・戸倉教室のある戸倉周辺や片品川沿いをフィールドとして行い、少人数ではありましたが、和気あいあいとして、とても有意義な観察会となりました。1月以降は、尾瀬・戸倉教室のある戸倉周辺にて、スノーシューを履いてのツアーを企画して、皆様のお越しをお待ちしております。

(12月25日 片品川周辺)

【ニューイヤー駅伝】
最後に、今年の元旦に行われたニューイヤー駅伝のご報告です。実業団最強の駅伝チームを決める第55回全日本実業団駅伝競走大会(ニューイヤー駅伝)が尾瀬の地元・群馬県で開催され、東京電力グループ長距離・駅伝チームは、3年連続で出場を果たしました。群馬特有の「からっ風」の吹きすさぶ中、選手たちが上州路を快走しました。

(1月1日 群馬県内)

【歓喜のゴール!!】
今回のタイムは、なんと4時間59分30秒。昨年の30位から大きく躍進し、全国の予選を勝ち抜いて出場した37チーム中21位という過去最高の成績を収めました。詳しくはこちらをご覧下さい。

(1月1日 群馬県庁前)

次回の尾瀬だよりは2月上旬頃、研修会や尾瀬の冬季除雪作業の様子を中心にお届けします。

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