環境へ放出する場合の国の基準(告示濃度限度)
国が法令※で定めた、福島第一原子力発電所から放射性物質を環境へ放出する場合の、核種毎の放射能濃度の上限のこと。
※東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関して必要な事項を定める告示
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ALPS処理水※1の海洋放出にあたっては、国内法令による安全基準や国際法・国際慣行等に基づいて、人や環境への影響※2を評価・測定し、その安全性を確認するとともに、公衆や周辺環境、農林水産品の安全を確保します。
※1 トリチウム以外の放射性物質が、安全に関する規制基準値を確実に下回るまで、多核種除去設備等で浄化処理した水
※2 海洋環境に及ぼす潜在的な影響を含む
トリチウム以外の放射性物質について、そのまま放出しても規制基準を満たすレベル※まで再浄化処理を行う
第三者分析を行い、トリチウム以外の放射性物質が告示濃度比総和1未満であること、およびトリチウム濃度を確認する
トリチウムについて規制基準を十分に満たすよう海水で希釈する
放出基準について
放出水のトリチウムの濃度は、放出前のトリチウム濃度と希釈水量で評価し、1,500ベクレル/リットル未満とします。
この濃度は、国の安全規制の基準※(告示濃度限度)である60,000ベクレル/リットルおよび世界保健機関(WHO) の飲料水水質ガイドラインである10,000ベクレル/リットルを十分下回ります。年間の放出量は、当面、事故前の福島第一原子力発電所の放出管理目標値である年間22兆ベクレルを上限とし、これを下回る水準とします。
なお、トリチウムの年間放出量は、廃炉の進捗等に応じて適宜見直すこととします。
※国のトリチウムを含む水の環境放出の規制基準(1リットルあたり60,000ベクレル)は、原子力施設の放水口から出る水を、毎日、その濃度で約2リットル飲み続けた場合、一年間で1ミリシーベルトの被ばくとなる濃度から定められています。
【参考】自然放射線から受ける被ばく線量(年間平均・日本)は約2.1ミリシーベルト
再浄化処理(二次処理)について
多核種除去設備は、汚染水に含まれる62種類の放射性物質(核種)を、環境へ放出する場合の国の基準以下の濃度に低減する浄化能力を持っています。
しかし、設備の不具合等により、環境へ放出する場合の基準を満たしていない処理水(告示濃度比総和1以上)が存在しています。この処理水*は、トリチウム以外の核種の告示濃度比総和が1未満になるまで、再浄化処理 (二次処理)を行い、さらにトリチウムの放出基準を満たすために、十分に希釈した上で放出します。
処理水※の告示濃度比総和別(推定)の貯蔵量(2021年9月30日現在)
※「10倍〜100倍」と「100倍〜」は、設備の不具合やより多くの汚染水を処理することに重点を置いてきたことにより発生したもの。割合は小数点以下四捨五入のため、割合の和が100にならない場合があります。
閉じる安全性の確保を⼤前提に、⾵評影響を最⼤限抑制するための対応を徹底します。
ALPS処理水に含まれる放射性物質(測定・評価対象核種30核種、トリチウム、ALPS除去対象核種のうち測定・評価対象核種に含まれない38核種の合計69核種)を希釈放出前に測定(第三者機関による測定を含む)し、トリチウム以外の放射性物質の濃度が、環境への放出に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化されていることを確認する。
※2024年の7月までは、測定・評価対象核種29核種、トリチウム、ALPS除去対象核種のうち測定・評価対象核種に含まれない39核種の合計69核種
海水希釈後のトリチウム濃度が1,500ベクレル/リットル※未満となるよう、100倍以上の海水で十分に希釈する。なお、年間トリチウム放出量は22兆ベクレルを下回る水準とする。
・海水希釈後のトリチウム濃度は、ALPS処理水の流量と希釈する海水の流量をリアルタイムに監視し、両方の割合で希釈後の水が1,500ベクレル/リットルを下回ることを確認する。
・海水希釈後のALPS処理水について、放出中毎日サンプリングし、そのトリチウム濃度が1,500ベクレル/リットルを確実に下回っていることを確認し、速やかに公表する。
・1年に1回は海洋放出前の混合・希釈の状況を放水立坑を活用して直接確認し、設備の状態に問題がないことを確認します。
※告示濃度限度(60,000ベクレル/リットル)の40分の1であり、WHO飲料水基準(10,000ベクレル/リットル)の7分の1程度
港湾内の放射性物質の影響を避けるため、港湾外からの取水とする。
放出した水が取水した海水に再循環することを抑制するため放水トンネル(約1km)を経由して放出する。
希釈用の海水ポンプが停止した場合は、緊急遮断弁を速やかに閉じて放出を停止する。
また海域モニタリングで放出停止判断レベルが確認された場合も、一旦放出を停止する。
・緊急遮断弁は、多重性の観点から2箇所に設置し、そのうち1箇所は津波対策の観点から防潮堤内に設置している。
ALPS処理水を保管しているタンクから水が漏えいしないよう、下記の取組を行っています。
事故後間もない時期に、発生する汚染水を保管するためスピード優先で設置した組立型(フランジ型)タンクを順次解体し、漏えいリスクが低い溶接型タンクへの更新を実施してきました。一部、残っている組立型タンクについては、接続部(フランジ部)に止水加工を施し、漏えい防止対策を実施しています。
万一の漏えい時に系外への流出を防ぐ目的で、タンクエリアの周囲に二重の堰を設けています。また、雨どいや堰カバーを整備することで、雨水の堰内への流入を抑え、堰としての機能を確保しています。
強い地震動によりタンクに大きな力(垂直、水平)が作用した場合には、力を逃がす構造(あえて基礎に固定しない)としています。そのため、タンク間を連結する配管は、ある程度のタンクの移動に追従する構造としています。
また、貯留用のタンクが満水になった際には、連結管の両側に設置した連結弁を全て閉とする運用をしています。
タンクは海抜30m以上の高台に設置しています。
また、防潮堤の設置を順次進めています。
耐衝撃・耐候性に優れ、上水道・ガス供給配管として実績の多い高密度ポリエチレン管を設置し、処理水等の移送を行っています。
また、配管の接続部については止水処理を施工しております。
現場に異常が無いかを確認するパトロールを定期的に行っております。
福島第一原子力発電所では、敷地内でALPS処理水等をタンクに貯蔵する際の国の基準「敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年」を満たすため、2013年度以降、多核種除去設備等による浄化処理を進めた結果、2015年度末に敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を達成しました。
多核種除去設備は、それ以降も発電所のリスク低減を踏まえた運転を実施しています。
セシウムのみを取り除いた状態の高濃度汚染水を敷地内のタンクに貯蔵していた2013年当時の敷地境界線量は、9.76ミリシーベルト/年に達し、国の定める基準である「敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年」を大幅に超過していた。
多核種除去設備による処理を2013年より開始し、敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年の早期達成を目標とし、稼働率を上げて浄化処理を実施。
多核種除去設備による浄化処理を進めた結果、2015年度末に敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を達成した。一方、多核種除去設備の不具合などにより、核種別の告示濃度超過も発生した。
多核種除去設備等による処理が進んだことにより、処理容量がタンクの建設容量を上回ったため、処理水を貯蔵するタンクが不足しはじめた。
処理水を貯蔵するタンクの建設を急ぐとともに、多核種除去設備の浄化能力をいかし、核種別の告示濃度を意識した処理を実施。
多核種除去設備の浄化能力をいかした処理を行ったため、2013年度~2015年度と比べ、核種別の告示濃度超過の発生割合が少なくなった。
漏えいリスクの高いボルト締めのフランジ型タンクに貯蔵している水を早期に処理すること。
2018年度末までにフランジ型タンクに貯蔵している水を多核種除去設備で処理することを目標とし、敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を維持しつつ、多核種除去設備の稼働率を上げて浄化処理を実施し、リスク低減をはかる。
フランジ型タンクで貯蔵するリスクを低減させることを意識し、多核種除去設備の稼働率を上げて処理を実施した。
その結果、2018年11月に、フランジ型タンク内のストロンチウム等処理水(ALPS処理前水)については、全量処理が完了したものの、2016年度と比べ核種別の告示濃度限度超えの割合が多くなっている。
なお、2019年3月に、フランジ型タンクに貯蔵している多核種除去設備等処理水についても、溶接型タンクへの移送が全て完了した。
タンクに保管しているALPS処理水等については、2021年4月13日に政府により決定された「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を踏まえた対応を徹底するべく、取り組んでまいります。
ALPS処理水の海洋放出にあたっては、法令に基づく安全基準等の遵守はもとより、関連する国際法や国際慣行に基づくとともに、人及び環境への放射線影響評価※により、放出する水が安全な水であることを確実にして、公衆や周辺環境、農林水産品の安全を確保します。
ALPS処理水等の取扱いにあたり、環境へ放出する場合は、トリチウム以外の放射性物質が、安全に関する国の規制基準(告示濃度比総和1未満)を満たすまで、多核種除去設備等で浄化処理します。
放出の際は、取水した海水と混合し、十分希釈します。放出量については、当面は、事故前の福島第一原子力発電所の放出管理目標値である年間22兆ベクレルの範囲内で行い、
廃炉の進捗等に応じて適宜見直します。
※ 海洋環境に及ぼす潜在的な影響を含む
国が法令※で定めた、福島第一原子力発電所から放射性物質を環境へ放出する場合の、核種毎の放射能濃度の上限のこと。
※東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関して必要な事項を定める告示
原子力規制委員会は、発電所の敷地内に保管されている、ガレキや汚染水等から敷地境界に追加的に放出される線量(自然界にもともとあった線量を除いて、発電所から新たに放出されて増えた分の線量)を「年間1ミリシーベルト(1mSv/年)未満」に抑えることを求めています。この「敷地境界における実効線量」は、敷地内でALPS処理水等をタンクに貯蔵する際の安全管理の基準になっています。