Q&A

皆さまからのご質問におこたえします

2023年12月26日更新

  • 福島第一原子力発電所で発生している「汚染水」ってどういうものですか。

     

    福島第一原子力発電所の事故により発生している、高濃度の放射性物質を含んだ水のことです。
    福島第一原子力発電所1~3号機の原子炉建屋内には、事故により溶けて固まった燃料(燃料デブリ)が残っています。燃料デブリは水をかけ続けることで冷却された状態を維持していますが、この水が燃料デブリに触れることで、高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」が発生します。また、この高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」は原子炉建屋内等に滞留しているため、建屋内等に流れ込んだ地下水や雨水と混ざることによっても「汚染水」が発生します。
    この「汚染水」は、複数の設備で放射性物質の濃度を低減する浄化処理を行い、リスク低減を行った上で、発電所敷地内のタンクに「ALPS処理水等」として保管しています。
    汚染水対策について詳しくみる

  • 「ALPS処理水」は「汚染水」ではないのですか。「汚染水」と何が違うのですか。

     

    「汚染水」と「ALPS処理水」は、全く異なります。海洋放出している水は、「ALPS処理水を大量の海水で希釈した水」であり、「汚染水」ではありません。
    東京電力福島第一原子力発電所では、2011年3月の原子力事故で発生した燃料デブリを冷却するため注水を続けており、この燃料デブリに水が触れることで、高濃度の放射性物質を含む水(「汚染水」)が日々発生しています。
    また、この高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」は原子炉建屋内等に滞留しているため、建屋内等に流れ込んだ地下水や雨水と混ざることによっても、発生します 。
    そのため、多核種除去設備「ALPS」と呼ばれる除去設備など、いくつかの浄化設備を使用し、「汚染水」に含まれる放射性物質の濃度を低減する浄化処理をしています。
    このALPSによってトリチウム以外の放射性物質が、ICRPの勧告に沿って定められた環境への放出に関する日本の規制基準値を確実に下回るまで浄化処理された水が、「ALPS処理水」です。
    このように、当社では「汚染水」と「ALPS処理水」とは、全く異なるものとして明確に区別して管理しています。
     ※ICRP(International Commission on Radiological Protection)とは、1928年に設立されて以来、「放射線防護」について専門家の立場から勧告をおこなっている国際組織です。ICRPの勧告は、世界各国の法令や規制の基礎とされています。

  • 多核種除去設備(ALPS)とはどのような設備ですか。放射性物質を除去する能力はどれくらいでしょうか。

     

    日本の法令では、原子力施設から放射性物質を環境へ放出する際の基準が定められており、その放射性物質の種類は、約1,000あります。
    多核種除去設備(ALPS)は、原子炉建屋に滞留する「汚染水」に含まれる放射性物質のうち、2012年時点の減衰を考慮し人や環境に与えるリスクを低減する観点から取り除く対象に設定した62種類の放射性物質(トリチウムは除く)を、環境への放出する際の国の規制基準を満たすまで低減できるように設計した設備です。薬液による沈殿処理や様々な種類の吸着材を通すなど、化学的・物理的性質を利用した処理方法を採用しています。
    実際に、最近の運転実績からは、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に沿って定められた国の規制基準値を一回の処理で下回る水準まで浄化処理できています。
    下のグラフは、汚染水に含まれる62種類の放射性物質のうち、「告示濃度限度」に対して放射性物質の濃度が比較的高いものについて、ALPSで浄化処理する前(入口)と後(出口)で濃度を比べたものです。
    核種除去設備(ALPS)とはどのような設備ですか。放射性物質を除去する能力はどれくらいでしょうか。
    処理後を見ると、環境へ放出する際の国の規制基準(告示濃度限度)を下回る濃度まで低減できていることがわかります。
    「62種類およびトリチウム」以外の炭素14をはじめとする他の放射性物質の濃度については、基準に照らして十分に低いと評価しています。

  • 多核種除去設備(ALPS)を一回通して、タンクに保管している水に、トリチウム以外の放射性物質が、環境放出に関する国の規制基準を超えて残っているのはなぜですか。

     

    タンクに貯蔵されている水には、トリチウム以外の放射性物質が、環境放出に関する国の規制基準を超えて残るもの(「処理途上水」と呼んでいます)が約7割存在します。(※2023年8月時点/最新の状況はこちら
    多核種除去設備(ALPS)を運用し始めた当初は、環境放出に関する国の規制基準を満たすまで浄化処理することよりも、敷地内の放射線レベルを低減させるよう、大部分の放射性物質を除去しつつも処理量をできるだけ多く稼ぐことを優先して処理していたため、トリチウム以外の放射性物質が環境放出に関する国の規制基準を超えて残っています。
    現在のALPSは、「汚染水」に含まれるトリチウム以外の放射性物質を、環境に放出する際の国の規制基準を満たすまで浄化できる能力があり、2019年以降は、規制基準を満たすまで浄化処理するよう運用しています。
    環境放出に関する国の規制基準を超えている「処理途上水」は、ALPSでの再浄化により、トリチウム以外の放射性物質の濃度が規制基準を満足できることを確認しており、海洋放出するにあたり、基準を満足するまで何度でも浄化処理を行います。

  • 環境に放出する際の規制基準を超えた水を多核種除去設備(ALPS)で再浄化すると、ALPS処理水になるのですか。

     

    タンクに貯蔵されている水の約7割※1には、トリチウム以外の放射性物質を環境に放出する際の規制基準以上に含むものも存在します。しかし、これらの放射性物質は多核種除去設備(ALPS)等で再度浄化処理(二次処理)を行うことで、規制基準値を下回るレベルまで取り除くことができます。すでに二次処理の試験が実施されており、問題無く浄化処理できることが確認できています。
    (※1 2023年8月時点/最新の状況はこちら
    (参考)
    トリチウム以外の放射性物質については、告示濃度比総和※2を確実に下回るまで、ALPS等であらためて浄化処理(二次処理)を行います。
    ※2放射性物質毎に法令で定める告示濃度限度に対する濃度の比率を計算し合計したもの
    二次処理にあたり、その性能確認を行うため2020年に試験を実施しました。 この試験では、告示濃度比総和が異なるタンク群(「J1-C群」及び「J1-G群」)について、各々約1,000m3(合計約2,000m3)を二次処理し、トリチウムを除く放射性物質(62種類の放射性物質+炭素14)が国の規制基準値(告示濃度比総和1)を下回る値まで低減できることを確認しています。また、ALPS等による二次処理後のALPS処理水を第三者機関にて分析を行い、当社の分析結果と同様な結果が得られています。
    <除去対象核種(62核種)+炭素14の告示濃度比総和※3
     J1-C群 : 【処理前】2,406 → 【処理後】0.35
     J1-G群 : 【処理前】 387 → 【処理後】0.22
    ※3分析結果が検出限界値未満の放射性物質は、検出限界値を用いて算出。除去対象核種(62核種)+炭素14のうち、検出された放射性物質は12種類(ストロンチウム90、イットリウム90、ルテニウム106、ロジウム106、アンチモン125、テルル125m、ヨウ素129、セシウム135、セシウム137、バリウム137m、コバルト60、炭素14 )。

  • 海洋放出以外の処分方法(「地層注入」や「地下埋設」など)は検討しましたか。

     

    ALPS処理水の取扱いの決定に向けて設置された、政府の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(ALPS小委員会)」(2016年11月~2020年2月)や、「トリチウム水タスクフォース」(2013年12月~2016年6月)において、「地層注入」、「地下埋設(コンクリート固化)」、「海洋放出」、「大気放出(水蒸気)」、「大気放出(水素)」の5つの選択肢について技術的な評価が行われました。
    その中で、例えば、「地層注入」は、ALPS処理水を地層中にある隙間に注入し、封入する方式です。注入に適した地層(貯留層)が必要です。福島第一原子力発電所の敷地の下あるいは近傍に適切な地層があるかは分かっておらず、適切な地層が見つからなければ地層注入はできません。国のタスクフォースでは、「注入した水を長期にモニタリングする手法が確立しておらず、安全性の確認が困難」との意見もあり、また、処分濃度によっては、新たな規制・基準の策定が必要となる点も課題とされました。
    また、「地下埋設」は、セメント系の固化材にALPS処理水を混ぜたものをコンクリートピット内に流し込んで固化し、地下に埋設する方式です。国のALPS小委員会の報告書においては、コンクリート固化による地下埋設について、①固化による発熱でトリチウムを含む水分が蒸発する、②新たな規制の設定が必要となる可能性があり、処分場の確保が課題となる、とされています。

  • 福島第一原子力発電所の敷地内のタンクに長期保管できないのですか。

     

    今後、1号機・2号機の使用済燃料プール内の燃料や、燃料デブリ(溶けた燃料等が冷えて固まったもの)の取り出し等、リスクを低減するための廃炉作業を計画的に進めていくにあたり、取り出した燃料デブリ等を安全に保管する施設などの整備に必要な敷地を、現在タンクが設置されているスペースも含めて発電所内に確保する必要があります。
    敷地内での長期保管については、政府の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(ALPS小委員会)」においても検討されました。同委員会は、タンクの増設にあたりタンクの大型化やタンク配置の効率化などの工夫を行ってきたことを確認した上で、「現行計画以上のタンク増設の余地は限定的」とし、また、「更なる大型タンクによる保管等については、保管容量が大きく増えないにもかかわらず、設置や漏洩検査等に長期間を要するとともに、万一破損した場合の漏洩量が膨大になるという課題があり、実施するメリットはない」としています。
    ALPS処理水の処分は、福島第一原子力発電所の廃炉作業の一環であり、廃炉の完遂や地域の復興に向けて不可欠な作業です。
    ※今後、廃炉作業を安全・着実に進めていくために必要な設備例
     ・使用済燃料の保管施設
     ・燃料デブリ取り出しのための保守管理、訓練施設
     ・燃料デブリや放射性廃棄物の保管、分析施設

  • 福島第一原子力発電所の敷地外でのALPS処理水の保管は検討したのですか。

     

    福島第一原子力発電所で進めている廃炉作業・汚染水対策は、福島第一原子力発電所の敷地内でしっかりとやり遂げることを基本方針としています。
    当社としては、「復興と廃炉の両立」の大原則のもと、実施主体として、廃炉・汚染水対策を安全かつ着実に遂行する責任を全うしていくためにも、ALPS処理水を敷地外で保管することは、リスクのあるエリアの拡大ならびに更なる負担を強いることに繋がることから、望ましくないと考えています。
    国の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(ALPS小委員会)」の報告書では、「廃炉・汚染水対策は、継続的なリスク低減活動であり、リスク源となりうる放射性物質を敷地外に持ち出すことは、リスクを広げることになるため、既存の敷地内で廃炉を進めることは基本」と整理されています。
    「ALPS小委員会」等での長期にわたる検討の結果、2021年、ALPS処理水の処分方法について、福島第一原子力発電所から海洋放出する国の基本方針が決定されました。
    「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(ALPS小委員会)」の報告書はこちら

  • 「トリチウム」とはどういうものですか。

     

    「トリチウム」は、普通の水素に中性子が2つ加わったもの(三重水素)で、普通の水素と化学的にほぼ同じ性質を持っています。多くは酸素と結びつき、水と同じ形で存在しています。
    普通の水素より原子核が不安定な状態のため、中性子のひとつが電子を放出し、陽子へと変化します。その結果、ヘリウムになり、このとき放出される電子が放射線の一種であるベータ線です。
    「トリチウム」とはどういうものですか。

    放射線にはアルファ線・ベータ線・ガンマ線・エックス線などの種類があります。物質を通り抜ける力は放射線の種類によって違います。
    トリチウムの場合は、ベータ線だけを放出しますが、そのエネルギーは非常に弱いため、紙1枚でさえぎることができます。
    「トリチウム」とはどういうものですか。

    トリチウムについて詳しくみる(経済産業省スペシャルコンテンツ)
    パンフレット「トリチウムについて」

  • トリチウムは、身の周りにどのくらい存在しているのですか。

     

    トリチウムは、宇宙から降りそそいでいる放射線(宇宙線)と大気がまじわることによって自然界の中で常に生成されています。その発生量は、福島第一原子力発電所からの年間放出総量の上限値(22兆ベクレル)の4500倍です。また、トリチウムは、世界中の多くの原子力施設から、海洋や大気中に日常的に放出されています。
    そのため、トリチウムが水素の代わりに酸素と結びつき、「水」のかたちで大気中の水蒸気や雨水、海など、身の回りに広く存在しています。日本国内の雨水や海水、飲料水の中にも1リットルあたり0.1~数ベクレル含まれており、飲料水などを通じてトリチウムを摂取することで、私たちの体内にも数十ベクレルほどのトリチウムが常に存在しています。
    トリチウムは、身の周りにどのくらい存在しているのですか。

    ※WHO(世界保健機関)の飲料水水質ガイドラインでは、飲料水に含まれるトリチウムの濃度指標は10,000ベクレル/リットルです。

  • トリチウムが出す放射線のエネルギーが弱いとのことですが、どのように分析するのですか。

     

    トリチウム(三重水素)が出す放射線(ベータ線)のエネルギーは非常に弱く、直接測定することができないことから、特別な分析方法で濃度を確認する必要があります。分析する試料中のトリチウムの濃度検出レベルによっても異なり、試料採取から測定結果を得るまでに、数日から最長で1か月程度の時間を要します。このような測定を、「通常(精密)測定」とよんでいます。なお、速やかに分析結果を得たい場合には、濃度検出レベルを上げて短い測定時間で行う「迅速測定」が用いられる場合もあります。
    海水などの液体試料の場合は、測定を行う前には、他の放射性物質から放出される放射線の影響をなくすことや、水中に浮遊する懸濁物質による消光を防止するために、蒸留により不純物の除去を行います。さらに、不純物を含まない蒸留水に、放射線(ベータ線)が当たると発光する薬品(シンチレータ)を添加し、一昼夜、暗所で静置するなど、複数の前処理が必要です。
    なお、トリチウムの濃度が非常に低い試料を検出するには、蒸留水のトリチウム濃度を上げるための電解濃縮という処理が加わります。魚類・海藻には、魚類・海藻に水の状態で含まれるトリチウム(FWT)だけでなく、有機的に結合した状態のトリチウム(OBT)もあります。有機的に結合した状態のトリチウム(OBT)の分析には、試料を凍結真空乾燥した後、乾燥試料を燃焼して燃焼ガス中の水分を回収するなど、海水などの液体試料や魚類・海藻のトリチウム(FWT)以上に特別な前処理が必要であり、時間と専門性が求められます。試料の状態や濃度検出レベルにもよって異なりますが、分析には少なくとも1.5週間から最長で1か月程度の時間を要します。
    なお、魚類・海藻のトリチウム(FWT)濃度は、一般的に採取地点の海水のトリチウム濃度と同程度であることから、海水の分析結果により魚類・海藻への影響を早期に検知できると考えています。
    ※トリチウムは水の状態で水生生物に取り込まれてもほとんど濃縮されず、速やかに排出されるため、水生生物での濃縮係数は「ほぼ1」とされています。
    トリチウムが出す放射線のエネルギーが弱いとのことですが、どのように分析するのですか。

  • トリチウムの規制基準(1リットルあたり60,000ベクレル)は、どのようにして定められた値ですか。

     

    国のトリチウムを含む水の環境放出の規制基準(1リットルあたり60,000ベクレル)は、原子力施設の放水口から出る水を、毎日、70年間、その濃度で約2リットル飲み続けた場合、一年間で1ミリシーベルトの被ばくとなる濃度から定められています。
    【参考】自然放射線から受ける被ばく線量(年間平均・日本)は約2.1ミリシーベルト
    トリチウムの規制基準については、各国によって値が異なります。これは、基準値を決める際の考え方が異なるためです。
    例えば、世界保健機関(WHO)の基準値(1リットルあたり10,000ベクレル)は、飲料水に関し、放射線防護の措置が必要かどうかを判断する値として、一年間の被ばく線量0.1ミリシーベルトとなるよう定められています。また、EUの基準値(1リットルあたり100ベクレル)は、同じく飲料水の基準で、追加調査の必要性を判断するスクリーニング値として定められています。
    日本では、飲料水や食品のトリチウムに関する基準はなく、トリチウムを環境に放出する時の濃度に規制基準を設けて安全性を管理しています。

    【参考】各国の水中におけるトリチウムの規制基準(飲料水でのトリチウム濃度限度)
    EU 100ベクレル/リットル
    アメリカ 740ベクレル/リットル
    カナダ 7,000ベクレル/リットル
    スイス 10,000ベクレル/リットル
    (参考)WHO 10,000ベクレル/リットル
    フィンランド 30,000ベクレル/リットル
    オーストラリア  76,103ベクレル/リットル

  • ALPS処理水を放出する際のトリチウムの上限濃度(1リットルあたり1,500ベクレル)は、どのようにして定められた値ですか。

     

    トリチウムの排出濃度は、政府の基本方針で、環境に放出する際の規制基準を厳格に遵守するだけでなく、消費者等の懸念を少しでも払拭するよう、現在実施している福島第一原子力発電所の「地下水バイパス」「サブドレン」の排水濃度の運用目標(1,500ベクレル/リットル未満)と同じ水準とすると定められました。
    この水準を実現するには、ALPS処理水を海水で大幅(100倍以上)に希釈する必要があります。なお、この希釈に伴い、トリチウム以外の放射性物質についても、同様に大幅に希釈されることとなります。
    ※ALPS処理水を100倍以上に希釈することで、希釈後のトリチウム以外の告示濃度比総和は、0.01未満、トリチウムの告示濃度比を加えても0.035未満となります。

  • 年間、どれくらいの量のトリチウムを海洋に放出するのですか。

     

    ALPS処理水の処分に関する政府の基本方針(2021年4月決定)において、放出するトリチウムの年間総量は、2011年の原子力事故前の福島第一原子力発電所の放出管理目標値である年間22兆ベクレルを下回る水準になるよう放出を実施するとされました。この量は、国内外の原子力発電所から放出されている量の実績値の幅の範囲内です。
    ※原子力発電所ごとに設定された通常運転時の目安となる値
    当社は、この基本方針に従い、年間のトリチウム放出量は22兆ベクレルを上限とし、下回る水準となるよう運用してまいります。放出するトリチウム量については、毎年度末にその時点の最新データに基づき、22兆ベクレルを下回る水準でなるべく少なくなるよう見直します。
    なお、中国・韓国を含む原子力施設を保有する諸外国においても、日常的にトリチウムの放出は行われており、例えば、韓国の月城原子力発電所からは、2019年に液体として約91兆ベクレルが放出されており、また、中国の泰山第三原子力発電所では、2019年の実績で液体として約124兆ベクレルが放出されていますが、その周辺で、トリチウムが原因と考えられる影響は確認されていません。

  • 海洋放出する水は安全といえるのですか。

     

    ALPS処理水の海洋放出は、国内の規制基準や各種法令を遵守し、環境や人体の安全を確保しつつ行ないます。
    具体的には、ALPS処理水の海洋放出にあたっては、中国・韓国を含む原子力施設を保有する諸外国においても行われている放射性液体廃棄物の放出と同様、国際的に統一された考え方であるICRPの勧告に沿って定められた国内の規制基準や各種法令を確実に遵守します。これらの規制基準は放射性物質の環境中への放出が、環境や人体に影響がないよう、科学的根拠に基づき定められたものであり、それについては国際原子力機関(IAEA)が「国際的な慣行に合致している」と認めています。放出にあたっては、発電所内でタンクにて保管している水のうち、トリチウム以外の放射性物質について、環境への放出に関する規制基準値を満たしていないものについては、希釈放出前の段階で規制基準値を確実に下回るまで、ALPS等による再浄化処理が行われます。
    トリチウムについては、その濃度を下げるために、ALPS処理水を大量の海水で100倍以上に希釈します。これにより、既に環境への放出に関する規制基準値を下回るまで十分に濃度が下がっているその他の核種についても、さらに100倍以上に希釈されることになります。
    海水で希釈した後の放出水のトリチウムの濃度は、1リットルあたり1,500ベクレル未満で、日本国の基準(1リットルあたり60,000ベクレル)や世界保健機関(WHO)が定める飲料水の水質ガイドライン(水1リットルあたり10,000ベクレル)に対して十分低い濃度となっています。
    さらに、関連する国際法や国際慣行を踏まえ、人および環境への放射線影響評価を行い、その内容を公表するとともに、放出後にも継続的にモニタリングを実施し、環境中の状況を把握するための措置を講じることとしています。国際原子力機関(IAEA)により、国際的な安全基準に照らした客観的かつ透明性あるレビューが繰り返し実施される予定です。このレビューには、第三国の専門家も参加しています。

  • 福島第一原子力発電所から「放出する水」と「他の原子力施設から排出される水」とで、違いがあるのですか。

     

    放射性物質を環境中へ放出する際の国の規制基準を満たすよう管理され、人や環境に対する放射線影響が無視できる、という点で、他の原子力施設から排水される水と違いはありません。
    放射性物質を原子力施設から環境中へ放出する際に、管理対象とする放射性物質の種類については、国の規制基準の下、施設毎(事業内容、炉型など)に定められています。
    福島第一原子力発電所のALPS処理水においても、環境へ放出する場合には、それらの放射性物質について、他の原子力施設と同様に、規制基準値を下回る濃度であることを確認します。
    福島第一原子力発電所における「浄化処理前の汚染水」には、事故により、一般の原子力発電所からの排水では通常検出されない(例えば、ストロンチウム90やセシウム137などの)放射性物質が検出されていますが、浄化処理したALPS処理水の処分に際して、国の規制基準を遵守することとしています。
    ※一般の原子力施設の排水には、トリチウムやコバルト60、マンガン54等の放射性物質が検出される場合があります。
    なお、福島第一原子力発電所では、事故当時に津波が流入したことにより、海水に由来する塩分や、建屋内に設置されていた機械の潤滑油など、不純物が含まれています。これら不純物についても、環境へ放出する場合には、水質汚濁防止法などに基づき、基準を満たしていることを確認しています。またそれらの結果をこちらで公開しています。
    測定・確認用設備での排水前の分析結果はこちら

  • ALPS処理水に含まれる放射性物質の炭素14(C-14)について、濃度や国の規制基準を教えてください。

     

    処理水に含まれる炭素14の濃度は、放射性廃棄物の国際的基準に沿う形で導入されている国の規制基準を満たしています。
    原子力施設から放射性物質を含む液体又は気体を環境中に放出するにあたっては、公衆や周辺環境の安全確保が大前提であり、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に沿って従前から定められている国の規制基準を確実に遵守することが求められています。
    ALPS処理水等の貯蔵タンク(2020年6月末までに分析を実施したタンク;計80基)における炭素14の濃度は、国の規制基準(告示濃度限度)である2,000ベクレル/リットルに対して、平均で42.4ベクレル/リットルです。仮にその水を希釈せずそのまま、成人が70歳になるまで毎日約2リットル飲み続けた場合でも、年間に受ける線量は0.021ミリシーベルト程度と一般の方々の年間上限値1ミリシーベルトを大きく下回る水準です。
    ※ 最小2.53ベクレル/リットル、最大215ベクレル/リットル

  • ALPS処理水の海洋放出によって、人や環境への影響があるのではないでしょうか。

     

    当社が実施したALPS処理水の海洋放出に係る人及び環境に対する放射線の影響評価では、国際的基準にしたがい環境中での蓄積や食物連鎖による生体濃縮も考慮しており、「人及び環境への影響は極めて小さい」との結果が得られています。また、この結果については、原子力規制委員会による確認、国際原子力機関(IAEA)によるレビューを受けてます。
    当社が実施したALPS処理水の海洋放出に係る人及び環境に対する放射線環境影響評価において、環境中に放出された放射性物質が環境中で起こりうる蓄積や食物連鎖などによる生物濃縮についても、国際的に認知された科学的基準に沿った評価を行った結果、人及び環境への影響は極めて小さい、との結果が得られています
    この放射線環境影響評価は、「東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針(2021年4月政府決定)」にて実施することが記載されており、その基本方針の実施状況について、原子力規制委員会が原子炉等規制法に基づく実施計画変更認可申請の審査の一環として評価を実施し、当社の放射線環境影響評価も確認いただいています。
    また、放射線環境影響評価の手法および結果については、国際原子力機関(IAEA)にも説明し、IAEA包括報告書において、当社が長期にわたる放出を考慮しても過小評価にならない手法で評価していること、またその結果から人や環境への影響は無視できるほどのものであることを確認いただいております。
    ※例えば、人への影響評価結果は、福島第一原子力発電所から10キロ圏内の海で年間120日にわたり船舶などにより海上に出て、発電所北側3kmの海岸に500時間滞在し、海で96時間泳ぎ、平均的な日本人の魚の摂取量である毎日58グラムの魚などを食べると仮定した場合、被ばく線量は一般公衆の線量限度(年間1ミリシーベルト)の約3万分の1未満にとどまると評価しています。
    また、動植物(扁平魚、褐藻類)への影響評価結果は、国際放射線防護委員会(ICRP)が提唱する基準値に比べ、約100万分の1未満、カニでは、約1000万分の1未満にとどまると評価しています。

  • 現在、福島第一原子力発電所内で保管している水に含まれている放射性物質の種類やその総量を知ることはできますか。

     

    現在、福島第一原子力発電所内のタンクには、原子炉建屋の地下に滞留した放射性物質を含む汚染水を多核種除去設備(ALPS)などを使って浄化し、放射性物質の濃度を低減した水(ALPS処理水および処理途上水)を貯留しています。それらの貯留用のタンク内の水について、主要な核種の濃度を分析し、当社ホームページで公表していますが、このデータは放出の判断を行うものではありません。
    主要な核種の分析結果はこちら
    処理途上水の放出にあたっては、多核種除去設備(ALPS)により再度浄化処理を行い、ALPS処理水となるまで、トリチウム以外の核種の濃度を低減させる予定です。処理途上水のまま、放出することはありません。
    海洋に放出する水については、「測定・確認用設備」と呼ばれる設備に移送後、当社ならびに第三者機関が、放射性物質を分析・評価し、トリチウム以外の放射性物質について、確実に規制基準を満たしていることを確認し、その結果を当社ホームページで公表しています。
    測定・確認用設備での排水前の分析結果はこちら
    当社の放出計画では、放出の都度、放出予定の水について、「測定・確認用設備」で水をかく拌・循環させて水質を均質化させた後、69核種について分析・評価を行い、そのうちALPS処理前の水にも有意に存在する可能性がある測定・評価対象核種29核種が国の規制基準値を確実に下回っていることを確認します。また、トリチウムの濃度がどの程度か、加えて、その他39核種(=放出前に毎回測定する69核種のうち、トリチウムおよび前述の測定・評価対象核種である29核種に含まれない39核種)が有意に存在していないことも確認します。
    上記の当社の放出計画については、国際原子力機関(IAEA)の包括報告書においても「関連する国際的な安全基準に整合的であること」、「ALPS処理水の海洋放出が、人や環境に与える影響は無視できるほどのもの」、と結論づけられています。
    なお、当社では、ALPSの性能を把握するため、ALPSの出口において、主要核種については、週1回を目途に、ALPS除去対象である62核種を含む計64核種については、年1回を目途に、分析を行っております。そしてそれらの結果、ALPSはトリチウムの以外の放射性物質を1回の処理で十分に国の規制基準値を下回るまで浄化できる性能があることを確認しております。さらに、その分析の結果からは、主要核種以外の核種は、これまでほとんど検出されていないこともわかっております。したがって、当社は、現在貯留中で国の規制基準を超える放射性物質を含む水についても、今後のALPS処理により規制基準値を下回るまで処理することが可能であると考えております。

  • ALPS処理水の海洋放出は、廃棄物等の海洋投棄を規制する「ロンドン条約」に違反しているのではないのですか。

     

    福島第一原子力発電所を含む、国内外の原子力関連施設からの排水は、ロンドン条約違反にはあたりません。
    「ロンドン条約」は、海洋汚染の原因の一つである廃棄物等の海洋投棄を国際的に規制するための締約国がとるべき措置について定めたものです。
    同条約では、適用対象を「投棄」に限定し、「投棄」を「海洋において廃棄物等を船舶等から故意に処分すること及び海洋において船舶等を故意に処分すること」と定義しています。
    これは、「陸上からの排出は禁止していない」と解され、福島第一原子力発電所を含む、国内外の原子力関連施設からの排水は、ロンドン条約違反にはあたりません。

  • なぜ、韓国、中国をはじめとした各国の第三者からの測定を受け入れないのですか?

     

    ALPS処理水の海洋放出にあたっては、国際的に統一された考え方である国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に沿って定められた国内の規制基準や国際安全基準を確実に遵守し、人の健康や環境への安全を確保します。
    ALPS処理水中の放射性物質の濃度の測定・評価や海域でのモニタリングでは、その結果を毎回公表していくことはもちろんのこと、第三者による確認を得ます。
    特に、国際的な視点からは、世界各国の国際専門家が参画する国際原子力機関(IAEA)によるALPS処理水の安全性レビューの枠組みで実施されるIAEAの研究機関や第三国研究機関による処理水や海水等のモニタリングを受け入れており、それらの測定結果は、IAEAが報告書を公表しています。引き続き、当社は、IAEAによるレビューを受け入れ、ALPS処理水の海洋放出に関する、透明性、客観性の確保を図ってまいります。
    (参考)
    2023年10月には、IAEAにより、日本の海洋試料採取状況等を確認する事業が実施されましたが、透明性確保の観点から、IAEAから指名された韓国、中国、カナダの分析機関の専門家も来日し、確認作業に加わりました。
    ※IAEAは、2014 年から分析機関間比較(ILC:Interlaboratory Comparison) 事業を継続的に実施中。これまでも共同で採取、分割した試料を、IAEA、日本などの分析機関が個別に分析を行い、IAEAが分析結果の比較評価を行っています。
    分析機関間比較の詳細はこちら

  • 海水中に含まれるトリチウムの分析結果をできるだけ速やかに知りたいのですが、どこで確認できますか。

     

    トリチウムの濃度の通常測定(精密測定)は、通常数日から1か月程度かかりますが、当社では、これらの測定に加え、ALPS処理水の海洋放出開始後、福島第一原子力発電所周辺海域の海水に含まれるトリチウム濃度について、検出下限値を約10ベクレル/リットルとして、測定時間を短縮することで1日で分析結果を得る「迅速測定」を実施しています。また、当社以外の機関も同様の「迅速測定」を実施しており、当社は、それら各機関の分析結果をまとめて、「処理水ポータルサイト」や「包括的海域モニタリング閲覧システム」で公開しています。
    処理水ポータルサイト「海域モニタリング」はこちら
    包括的海域モニタリング閲覧システムはこちら

  • 海洋放出すると、韓国、中国を初め、アジア各国の沿岸にも放射性物質が到達すると聞きました。モニタリングはしっかり行われるのですか。

     

    多核種除去設備(ALPS)等によってトリチウム以外の放射性物質をICRPの勧告に沿って定められた日本国内の規制基準値を確実に下回るまで浄化したALPS処理水は、さらに大量の海水で100倍以上に希釈・混合した上で、海洋に放出します。これによって、今回の海洋放出が周辺の環境に与える影響を非常に小さくすることができると考えています。
    放射線環境影響評価において行った海洋拡散シミュレーションの結果では、海水中のトリチウム濃度が環境中のトリチウムの濃度(1リットルあたり0.1~1ベクレル)を超えるエリアは、発電所から2~3kmの範囲に限られており、3kmより外のエリアでは環境中と変わらない濃度となっています。これらの結果について、IAEA包括報告書では、「環境影響は無視できる」と結論付けられています。
    また、海域のモニタリングに関しては、2022年4月より、トリチウムを含む対象核種やモニタリングを行う測点、頻度を強化した海域モニタリングを実施しており、これにより、ALPS処理水の放出が、周辺海域に影響を及ぼしていないことを継続的に確認しています。

  • ALPS処理水を混ぜた海水で魚や貝の飼育試験をしているそうですが、何のためにやっているのですか。

     

    これまでのトリチウム等に関する科学的知見から、すでにALPS処理水の放出に関する安全性については確認できていると考えています。その上で、ALPS処理水を含む海水環境で海洋生物を飼育し、海洋生物中のトリチウム濃度が海水中のトリチウム濃度と変わらないことなど、これまでに得られている科学的知見に沿ったものであることについて、分かりやすい形でお示ししたいと考え、行うものです。具体的には、「海水」と「海水で希釈したALPS処理水」(トリチウム濃度:1,500ベクレル/リットル程度)の双方の環境下で海洋生物(ヒラメ、アワビ、海藻)を飼育し、生育状況を比較します。
    当社としては、ALPS処理水による実際の飼育状況等を視覚的にお示しすることで、多くのみなさまにALPS処理水の放出に関する安全性について、ご理解を深めていただけるようにしていきたいと考えています。

  • 2021年9月に多核種除去設備(ALPS)にて排気フィルタの損傷が確認されましたが、浄化性能に影響はないのですか。

     

    多核種除去設備(ALPS)は放射性物質を除去する主要設備と、運転に伴い発生する廃棄物を処理する付属設備から構成され、今回は付属設備側の排気フィルタの損傷が確認されたもので、浄化性能・浄化運転へ直接影響するものではございません。

  • 2021年9月に多核種除去設備(ALPS)にて排気フィルタの損傷が確認されましたが、周辺環境や作業員に影響はないのですか。

     

    これまでに多核種除去設備(ALPS)の建屋内において、内部取り込みなどは発生していないことから、放射線安全上の問題は発生しておりません。排気フィルタの損傷に伴う影響については、排気フィルタに損傷が確認された設備の排気配管の表面での汚染にとどまっており、周辺に汚染が拡大していないことを確認しています。
    また、建屋出入口での定期的なダスト濃度やスミア測定で有意な上昇が確認されていないこと、構内のダストモニタに有意な上昇が見られていないことから、周辺環境への影響はありません。