Q&A

処理水の取り扱いについて

  • 海洋放出にあたり、どのような水を放出するのですか。

    浄化処理、希釈処理を行い、安全に関する国の規制基準等を遵守した水です。

    法令に基づく規制基準等の遵守はもとより、国際法や国際慣行に基づき、放出する水が安全であることを確実にします。
    具体的には、放出する水を2段階で浄化・希釈処理を行います。
    第1段階として、トリチウム以外の放射性物質の濃度について、環境へ放出する際の規制基準値を確実に下回るまで浄化処理を行います。また、希釈放出前に、ALPS処理水中の放射性物質(トリチウム、62種類の放射性物質、炭素14)の濃度を測定・評価し、第三者による確認を得ます。
    第2段階として、トリチウムについては、大量の海水(100倍以上)で希釈することで、その濃度を環境へ放出する際の規制基準値(60,000ベクレル/リットル)の40分の1となる1,500ベクレル/リットル未満にします。
    なお、この希釈に伴い、第1段階の浄化処理によって、既に国の規制基準を下回っているトリチウム以外の放射性物質は、さらに100分の1(告示濃度比総和0.01)未満となります。

  • 発電所周辺の海の状況は、現在どうなっていますか。

    国際的な飲料水の水質基準(セシウムで1リットルあたり10ベクレル)より低い数値で推移しています。

    建屋の海側にある地下道(トレンチ)内の汚染水除去、海側遮水壁の設置などの様々な対策により、発電所周辺の海の放射性物質の濃度は、事故当時と比べ、大幅に減少しています。海水中の放射性物質の濃度は、国際的な飲料水の水質基準(セシウムで1リットルあたり10ベクレル*)より低い数値で推移しています。
    *放射性物質がどれくらい放射線を出す能力があるかを表す単位です。

  • 福島第一原子力発電所から「放出する水」と「他の原子力施設から排出される水」とで、違いがあるのですか。

    放射性物質を環境中へ放出する際の国の規制基準を満たす、という点では、他の原子力施設から排水される水と違いはありません。

    放射性物質を原子力施設から環境中へ放出する際に、管理対象とする放射性物質の種類ついては、国の規制基準の下、施設毎(事業内容、炉型など)に定められています。
    福島第一原子力発電所のALPS処理水においても、環境へ放出する場合には、トリチウム以外のそれら放射性物質について、他の原子力施設と同様に、規制基準値を下回る濃度であることを確認します。
    福島第一原子力発電所における「浄化処理前の汚染水」には、事故により、一般の原子力発電所からの排水※には通常含まれない(例えば、ストロンチウム90やセシウム137などの)放射性物質が含まれていますが、浄化処理したALPS処理水の処分に際して、国の規制基準を遵守することとしています。
    ※一般の原子力施設の排水には、トリチウムやコバルト60、マンガン54等の放射性物質が含まれる場合があります。
    なお、福島第一原子力発電所では、事故当時に津波が流入したことにより、海水に由来する塩分や、建屋内に設置されていた機械の潤滑油など、不純物が含まれています。これら不純物についても、環境へ放出する場合には、水質汚濁防止法などに基づき、基準を満たしていることを確認します。

  • 海底トンネルによる海洋放出ではなく、遠洋で処分をすべきではないのですか。

    海上からの放射性廃棄物の海洋投棄は、ロンドン条約で禁止されています。

    海上からの放射性廃棄物の海洋投棄は、国際条約である「ロンドン条約」で禁止されています。
    また、日本の「原子炉等規制法」でも認められていません。

  • ALPS処理水の海洋放出は、廃棄物等の海洋投棄を規制する「ロンドン条約」に違反しているのではないのですか。

    福島第一原子力発電所を含む、国内外の原子力関連施設からの排水は、ロンドン条約違反にはあたりません。

    「ロンドン条約」は、海洋汚染の原因の一つである廃棄物等の海洋投棄を国際的に規制するための締約国がとるべき措置について定めたものです。
    同条約では、適用対象を「投棄」に限定し、「投棄」を「海洋において廃棄物等を船舶等から故意に処分すること及び海洋において船舶等を故意に処分すること」と定義しています。
    これは、「陸上からの排出は禁止していない」と解され、福島第一原子力発電所を含む、国内外の原子力関連施設からの排水は、ロンドン条約違反にはあたりません。

  • ALPS処理水を大量の海水で希釈し、海洋放出することは、法令に抵触しないのですか。

    関係法令を遵守して放出を行います。

    「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づき、原子力規制委員会が定めた「東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則」では、「排水施設において、ろ過、蒸発、イオン交換樹脂法等による吸着、放射能の時間による減衰、多量の水による希釈等の方法によって排水中の放射性物質の濃度をできるだけ低下させること。この場合、排水口又は排水監視設備において排水中の放射性物質の濃度が原子力規制委員会の定める濃度限度を超えないようにすること。」
    と定められています。
    ALPS処理水の海洋放出にあたっては、海水による希釈を行う前の段階で、トリチウム以外の放射性物質について、環境に放出する際の濃度基準を満たすまで浄化処理を行い、ALPS処理後も濃度基準を超えて残るトリチウムについては、濃度基準を十分満たすように大量の海水で希釈を行うこととしており、この方法については原子力規制委員会の認可を得ています。
    なお、通常の原子力発電所で発生した放射性液体廃棄物の放出に際しても、排水施設のサンプルタンク等において放射性物質濃度の測定を行い、放射性物質の濃度が排水時の濃度基準を超えないよう海水と混合、希釈した上で放出しています。
    また、「水質汚濁防止法」では、工場や事業場から排出される水質汚濁物質について、水質や有害物質の種類ごとに排水時の濃度基準が定められており、この基準を守ることが求められています。ALPS処理水の希釈・放出も、水質汚濁防止法における排水基準を遵守して行うことになります。

  • 「地層注入」や「地下埋設」によるALPS処理水処分は検討したのですか。

    国のタスクフォースで検討され、「規制的、技術的、時間的な観点から現実的な選択肢としては課題が多い」とされています。

    2013年12月、国際原子力機関(IAEA)調査団から、ALPS処理水の取扱いについて「あらゆる選択肢を検証すべき」との助言があり、それを受け、国はタスクフォースを設置し、技術的に実現可能な処分方法として、「地層注入」や「地下埋設」も含む、様々な選択肢について検討を行いました。
    「地層注入」は、ALPS処理水を地層中にある隙間に注入し、封入する方式です。注入に適した地層(貯留層)が必要です。福島第一原子力発電所の敷地の下あるいは近傍に適切な地層があるかは分かっておらず、適切な地層が見つからなければ地層注入はできません。国のタスクフォースでは、「注入した水を長期にモニタリングする手法が確立しておらず、安全性の確認が困難」との意見もあり、また、処分濃度によっては、新たな規制・基準の策定が必要となる点も課題とされました。
    「地下埋設」は、セメント系の固化材にALPS処理水を混ぜたものをコンクリートピット内に流し込んで固化し、地下に埋設する方式です。国のALPS小委員会の報告書においては、コンクリート固化による地下埋設について、①固化による発熱でトリチウムを含む水分が蒸発する、②新たな規制の設定が必要となる可能性があり、処分場の確保が課題となる、とされています。

  • 福島第一原子力発電所の敷地内のタンクに長期保管できないのですか。

    今後、高濃度の放射性物質である燃料デブリの取り出し等、リスクを低減するための廃炉作業を計画的に進めていくにあたり、発電所内で必要な敷地を確保する必要があります。

    当社は、「復興と廃炉の両立」に向けて、放射性物質によるリスクから地域の皆さまや作業員の方々、周辺環境等を守るため、福島第一原子力発電所の廃炉作業を安全最優先に、計画的に進めています。
    現在は、安定状態を維持・管理した上で、燃料デブリの取り出し方法が具体化されるなど廃炉作業が着実に進展し、今後は、1号機・2号機の使用済燃料プール内の燃料や、高濃度の放射性物質である燃料デブリの取り出しなど、より困難な作業段階に入っていきます。
    これらの作業を安全かつ着実に進めていくため、取り出した燃料デブリ等を安全に保管する施設が必要です。
    発電所の限られた敷地を最大限に有効活用し、必要な施設を計画的に建設していくにあたっては、現在、敷地を大きく占有しているタンクや配管設備がこれからの廃炉作業の支障となる可能性があると考えています。

  • 福島第一原子力発電所の敷地外で、ALPS処理水の保管・処分はできないのですか。

    リスク源となりうる放射性物質を敷地外に持ち出すことは、周辺地域のみなさまに更なるご負担を強いることに繋がることから、望ましくないと考えています。

    廃炉・汚染水対策は、現在の福島第一原子力発電所の敷地内で廃炉作業をやり遂げることが基本方針です。当社としては、「復興と廃炉の両立」の大原則のもと、安全かつ着実に廃炉・汚染水対策を遂行する責任を全うしていくためにも、ALPS処理水を敷地外で保管・処分することは、リスクのあるエリアの拡大ならびに更なる負担を強いることに繋がることから、望ましくないと考えています。
    ALPS小委員会の報告書では、「廃炉・汚染水対策は、継続的なリスク低減活動であり、リスク源となりうる放射性物質を敷地外に持ち出すことは、リスクを広げることになるため、既存の敷地内で廃炉を進めることは基本」と整理されています。
    加えて、同報告書では、「敷地外に新たに敷地を確保し ALPS 処理水を保管する場合、保管施設を設置する自治体等の理解を得る必要がある。また、放射性物質を扱うことになるため、(中略)相応の設備や多岐にわたる事前調整、認可手続きが必要であり、相当な時間を要する。」と指摘されています。