東京電力グループは、日本の電力関連業界とともに国際規格制定に関与することによって、国際規格との不整合による不利益を回避し、国際舞台でのビジネス拡大を目指しています。
 知的財産室では、東京電力ホールディングス、および基幹事業会社4社所属の規格エキスパートによるIEC等における国際規格策定活動のサポート並びに幹事を務める国内委員会において、IEC文書の審議など国内意見の取り纏めを行っています。

国際標準化活動の図


カーボンニュートラル実現に向けた国際標準化活動

 カーボンニュートラルの実現に向けては、再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化が重要な柱の1つですが、日照条件や風速状況など自然環境の変化によって出力が変動する特徴があります。そのため電圧や周波数等の電力品質を維持しながら電力の安定供給を実現することが必要です。

 このような諸課題へ対応するため、電力システム設計や系統運用等の標準化に関する取り組みが世界各国において進められています。
 東京電力グループは関連するIEC専門委員会へ参加し、以下の標準化活動を行っています。

系統運用や設備管理に関連するIEC専門委員会へ国際エキスパートとして参加し、技術要件等についての国際標準化活動を実施。
IEC/SC 8A(太陽光や風力等の再エネ発電の系統連系)、SC 8B(マイクログリッド)、 SC 8C(電力ネットワークの運用・管理)、 TC 122(UHV交流送電システム)、TC 123(電力流通設備のアセットマネジメント)等。
SC 8C、TC 122、TC 123は東京電力グループおよび国内関係者の協力により日本提案を行い、IEC内へ設置された。
「電気エネルギー貯蔵システム」や、「電気自動車(EV)用の電力伝達システム」など、再エネ電源が統合された電力システムにおいて重要な役割を担う技術領域についても、関連するIEC専門委員会へ国際エキスパートとして参加。
カーボンニュートラル実現に向けた国際標準化活動の図


IEC組織と当社関係者の参画状況

IECの会議構成の図

表1. 国際会議参加数(2024年度)
(11の専門委員会に延べ65名が参加)

 

表2. IEC文書審議数(2024年度)

国際会議参加数の表   IEC文書審議数の表

表3. 国内委員会における東京電力グループの役割
国内委員会における東京電力グループの役割の表



当社主導で作成したIEC MSB白書

東京電力グループはこれまでに複数のMSB白書プロジェクトへ参画し、プロジェクトリーダーとして内容のとりまとめを行っています。将来の電力分野を支える技術テーマについて技術動向や国際標準化の必要性と提言をまとめており、これらの白書はIECのサイトで一般公開されています。
電力貯蔵のアイコン 2011年「Electric Energy Storage」(電力貯蔵)
https://www.iec.ch/basecamp/electrical-energy-storage
アセットマネジメントのアイコン 2015年「Strategic asset management of power networks」(アセットマネジメント)
https://www.iec.ch/basecamp/strategic-asset-management-power-networks
分散電源環境での系統安定運用のアイコン 2018年「Stable grid operations in a future of distributed electric power」(分散電源環境での系統安定運用)
https://www.iec.ch/basecamp/stable-grid-operations-future-distributed-electric-power
デジタルツインのアイコン 2024年「Virtualizing power systems: how digital twins will revolutionize the energy sector」(デジタルツイン)
https://www.iec.ch/basecamp/virtualizing-power-systems-how-digital-twins-will-revolutionize-energy-sector



当社が主導する専門委員会での活動

日本主導で設置したIEC/TC 8/SC 8Cの活動の推進
2018年に発行されたMSB白書に対する具体的な活動として、日本から国際主査を輩出したWGにおいて、電力系統マネジメント関連規格の策定等を実施しています。
 
分科委員会 SC 8C「Network Management in Interconnected Electric Power Systems」(電力ネットワークの運用・管理)
日本の電力会社提案による分科委員会の設立は、IEC 110年の歴史上「初」
【トピックス】
SC 8C傘下のAG 1・WG 2・WG 3合同WG会議を2024年4月に早稲田大学で開催。また、至近では2025年7月にイタリア・ミラノで合同WGを開催。
東電パワーグリッドが「国際主査」を務めるWG 2(電力市場の統合)において、日本から提案した「Market Catalogue for Stable Grid Operation」(系統安定運用のための電力市場カタログ)の技術報告書を作成中。

SC 8C合同WG会議(2025年7月 イタリア・ミラノ)
   



日本主導でIEC/TC 123※1の標準化を推進
2015年に発行されたMSB白書に対する具体的な活動として、電力流通設備のアセットマネジメントの考え方について、日本主導による規格作りを推進しています。
※1 分専門委員会TC 123「Management of network assets in power systems」(電力流通設備のアセットマネジメント)
東京電力グループが中心となり設立し、「国際幹事」の役割を担い、傘下のWGに集う世界各国の専門家をとりまとめ
【トピックス】
IEC/TC 123では電力流通設備に関するアセットマネジメント規格の開発として、WG 1(概要、原則、用語)、WG 2(アセットマネジメントの管理面)、 WG 4(アセットのリスク緩和)において、規格作成に向け活動中
東京電力パワーグリッドが「国際主査」を務めるWG 2は、2025年5月、初の成果物である技術仕様書※2を発行。
※2 IEC TS 63224:2025 Management of Network assets in power systems – Management aspects(電力流通設備のアセットマネジメント-マネジメントの観点

アセットマネジメントの効果 TC 123プレナリ会議(2024年9月 フランス・リヨン)