再生可能エネルギー大量導入に向けた系統慣性低下対策の研究
目的
2018年7月3日に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」(経済産業省・資源エネルギー庁策定)において、2030年に向けた重要な施策の一つとして再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化に向けた取り組みが掲げられていますが、再エネの大量導入にあたっては多くの課題が存在します。
再エネの発電量増加に対し、消費電力とのバランスを一定に保つためには、火力発電機などの大型同期発電機の運転台数を減らす必要があります。それにより、電力系統には、同期発電機に備わる電力系統の瞬間的な変動に対応する調整能力、いわゆる系統慣性(以下、慣性)の保有量が低下します。慣性の保有量が低下すると、系統事故等における安定性が損なわれ、最悪の事態では広域停電へと繋がる虞があります。そのような事態を回避すべく、電力系統において一定の慣性を確保することが重要です。
本研究では、電力系統に連系される全ての同期発電機の運転状態は把握困難なことから、電力系統の慣性がリアルタイムでどの程度保有されているかを把握するため、同期フェーザ計測装置(Phasor Measurement Unit:PMU)を用いた常時監視システムの基盤技術の確立を目指しています。また、再エネ主電源化に向けた新たな慣性を確保するための技術の確立を目指しています。
電力系統における慣性とは
慣性低下による影響イメージ
概要と成果
(1)慣性の把握可能な基盤技術の開発
- ①
常時監視システムの開発
慣性が電力系統へ影響を及ぼす時間領域は数ミリ秒であるため,電力会社にて使用されている現行の電力系統監視制御システムとは別に、GPSによる時刻補正機能を有するPMUにより計測時刻を完全に一致させてデータを集約する必要があります。本研究において、慣性の低下による電力系統への影響を把握・監視するため、PMUを用いた常時監視システムを開発し、検証を進めています。 - ②
慣性の推定手法の確立
電力系統内で観測される系統現象に着目し、広域に分散配置したPMUの計測データから電力系統の慣性保有量を推定する手法の開発に取り組んでいます。
(2)慣性機能を具備した制御装置の基盤技術開発
- ・
分散型電源に具備されているPCSから電力系統へ慣性を提供するため、PCSの制御方式などの開発を行うとともに、電力系統に適用した際の効果を検証しています。
共同研究(開発)者
東京電力PG、東北電力NW、中部電力、中部電力PG、関西電力、関西電力送配電、中国電力NW、九州電力、九州電力送配電、東光高岳、九州工業大学、早稲田大学、東京大学
- ※
本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務により実施しています。
担当部署
経営技術戦略研究所 技術開発部 次世代電力インフラエリア