目的

再生可能エネルギーの大量導入が進む中、火力はさらなる発電コスト低減、需給調整能力が求められています。コンバインド火力は発電効率が高く、発電の主力である一方、夏期は気温が高くなるため、ガスタービンが吸入する空気密度が低下し、発電出力が低下する課題があります。その対策として、従来から水散布による吸気冷却による出力低下抑制が知られています。メリットは効率の高いコンバインド火力の発電電力量が増えるため、効率の低い経年火力の焚き減らしができ、火力全体として燃料費の節減ができる点です。また、吸気冷却により気温がプラントの設計点に近づくため、若干ながら発電効率が向上する効果があります。この吸気冷却システムは東日本大震災直後の需給切迫時に急遽導入されたものが多く、必ずしも条件の最適化がなされていませんでした。そこで、今回、冷却効果を高める手法の開発、並びに、発電所への適用を行いました。

概要と成果

1.ラボ試験
断面が一辺2 mの正方形の風洞を用い、散水冷却の実験を行いました。風速は2.5m/s、湿度60 %、気温33 ℃、散水ノズルは平扇型スプレで水量2L/min、ノズルとその下流に設置されたルーバ間の距離は1mです。その結果、散水ノズルを吸気に対して風下向き(正面0°)や下向き(下90°)にするよりも、風上向き(逆向き180°)にした方が冷却効率が向上することを確認しました(図1)。

図1 散水ノズルの向きに対する冷却効率の依存性

2.発電所への適用
380 MW出力コンバインド火力へ適用を行いました(図2)。奥の吸気に対して風上向きのノズルのスプレは大きく拡散し、手前の下向きノズルのスプレはすぐ吸気されているのが確認できました。この拡散効果によって蒸発が促進し、冷却効果が上昇すると考えられます。風上向きノズル適用ユニットは、従来の下向きノズルのユニットと比較して、3~4MW出力が上昇しました(図3)。今回紹介した風上向きノズルの他、ノズルの吸気エリア外縁設置、千鳥配置、ステージング、エリミネータ等の吸気冷却に関する技術開発を実施しました(特許10件)。

風上向きノズル(奥)と下向きノズル(手前)

図2 風上向きノズル(奥)と下向きノズル(手前)

風上向きノズル適用ユニットと下向きノズルユニットの出力比較

図3 風上向きノズル適用ユニットと下向きノズルユニットの出力比較

成果の適用先・事例

これらの技術を4火力発電所、21ユニットに適用しました。経年火力の焚き減らしによる燃費低減に寄与しました。

担当部署

経営技術戦略研究所 技術開発部 環境エネルギーエリア

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