世界の人々とともに未来を描く、壮大な電源開発プロジェクト

2018/07/30

東京電力は国内で培ってきた技術や専門知識をいかし、長年海外での電力事業のコンサルティングに携わってきました。その一端を担う社員が、バングラデシュの国家電源開発計画や、途上国への国際貢献の思いを、国際協力機構(JICA)のご担当者とのお話も交えながら語ります。

東京電力ホールディングス株式会社
渉外・広報ユニット 国際室
海外コンサルティング開発第二グループ 課長

小林 俊幸

1995年入社。神奈川支社・松田制御所で水力発電所の保守を担当した後、東電設計(株)へ出向し、水力・火力発電の開発、財務に携わる。2年間の米国留学を経て、帰国後は技術部・総合計画グループ、川崎火力建設所に勤務し、2016年7月から現職。

関係者のみなさまのご支援に感謝して

土木学会賞「国際活動奨励賞」受賞の報告で、バングラデシュ大使館を訪れて
写真左は、バングラデシュのアリフ商務参事官

私は入社以来、土木や水力・火力発電のエンジニアとしての業務に携わりながら、その経験をいかし、東京電力が取り組む海外での電力事業のコンサルティングにも従事してきました。これまでに訪れた国は途上国を中心に約30ヵ国にのぼります。
そのうちのひとつであるバングラデシュとは、国際協力機構(JICA)を通して大きなチャンスとご縁をいただくことができ、私はプロジェクトマネージャーとして、同国の国家電源開発計画の策定に取り組んできました。それは、バングラデシュにとって最大の援助国である日本が、同国の発展の礎となるために進める壮大なエネルギー開発であり、現在ではJICAをはじめ多くの関係者の方々の協力体制のもとで、実現へ向けての具体的な取り組みがはじまっています。

その過程で、現地の土木技術の発展に貢献できたことを評価いただき、2017年度の土木学会賞「国際活動奨励賞」を受賞することができました。それは、部門を越え、組織を越え、さらに国も立場も越えてタッグを組んできたすべての関係者のみなさまのお力によるものです。そのことに心から感謝するとともに、これを機にさらなるご支援をいただきながら、バングラデシュの未来を見据えたプロジェクトの遂行に全力で取り組んでいきたいと思います。

JICAとともに取り組むエネルギー計画策定という国創り

長野 悠志さん
独立行政法人 国際協力機構(JICA)
民間連携事業部 海外投融資課 兼 計画・監理課
調査役

バングラデシュ首相官邸での筆頭補佐官主催セレモニーにて

小林「長野さん、本日はありがとうございます。この機会に、バングラデシュでのJICAさんと東京電力の取り組みについて多くの方に知っていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。まずはバングラデシュという国について、日本との関係などをお話しいただけますか」

長野「バングラデシュは北と東西の三方をインドに囲まれ、南東部をミャンマーと接し、北海道の1.7倍の広さにあたる国土に約1億6千万の人々が暮らしています。経済においては、これまではエネルギーを国内天然ガス資源で賄いつつ、衣料製品の輸出国として成功しており、世界の途上国のなかでは安定して高成長を達成している国です。しかし、近年国内ガスの枯渇化が急速に進み、このままでは更なる経済社会の発展を支えることができないのは明白であるため、大きなエネルギー政策の転換や大規模投資が必要な状況です。こうした中で、JICAはバングラデシュ政府より、とりわけ重要な電力・エネルギー開発計画の策定支援を要請されました。私どもは、この重要な取組みを東京電力さんに担っていただき、特にチームリーダーであった小林さんとともに、バングラデシュの人々と膝詰めでの協議を重ねました」

小林「雨期が長く、平坦な地形なので、水力や太陽光、風力発電に限界があるバングラデシュでは、伸びゆく電力需要の多くを火力発電が当面は支えていくことになります。そのためには、エネルギー輸入を可能とする大型タンカーが入れる深い港、大規模な火力発電所や送配電網といった関連設備などを整えることが必要であり、そうした大規模投資が適切に官民を挙げて実行されるための計画が不可欠です。私も、そうしたひとつの国のエネルギー戦略にスタートから携わるという、スケールの大きな仕事にたいへんやりがいを感じていました。その過程ではもちろん、厳しい交渉や難しい局面もあります。バングラデシュ政府からは、色々なしがらみや制約もある中で、私たちが描いた計画とは異なる意見をぶつけられることが多かったですし、プランを実行に移して具体的なプロジェクトにまで繋げるよう促すことは、かなり高いハードルでした。それを乗り越えることができたのは、長野さんやバングラデシュの方々と私たちの間で忌憚ない意見交換を行い、それによって信頼関係を構築することができたからだと思います」

長野「将来のエネルギー不足を見据えた新たな計画やその実施は、今のバングラデシュにとっては痛みやリスクを伴います。現在が安定している状況なだけに、しっかりと変革の必要性を理解してもらい、自ら政策を策定・実行してもらうことはとても難しい。それでも、私にはいつも、東京電力さんならきっとやってくれる、小林さんにおまかせすれば大丈夫だという安心感がありました。なぜなら東京電力さんには、長い歴史のなかで培われてきた世界に比類ない技術と知見があり、またバングラデシュにおける様々な貢献を通じて強い信頼を勝ち得ていたからです。その期待どおり、小林さんは、JICAや東京電力さんが求める技術的な水準には妥協せず、他方でバングラデシュの人々が自分たちのものとして未来の絵を描くために、言葉では言い表せないような困難な調整を粘り強く行ってくださいました。私たち二人の間でも厳しい議論を重ねましたが、小林さんは電力技術の専門家であるにもかかわらず、年の離れた私の意見も同等の立場で聞いてくださり、本当に頼れる存在でした」

小林「そう言っていただけるとうれしいですが、頼りにしていたのは私の方で、実行力のある長野さんにいつも引っ張っていただいていました。確かにかなり突っ込んだ話し合いもしましたが、互いにバングラデシュが好きで、この国の幸せな未来を願うという共通の思いがあったからこそ、本音で向き合いながら、同じゴールを目指して歩んでくることができたと思います」

長野「私はバングラデシュの人々と触れ合う度に、成長しようとする彼らのエネルギーを肌で感じ、この国のために何かをしたいという思いに駆られました。そういう気持ちは小林さんも同じ。途上国でのエネルギー開発というのは、国創りそのものでもあり、そこに日本の看板を背負って関与できることは職業人として本当に幸せなことです。東京電力さんのご尽力も踏まえ、日本政府はJICAを通じて、初の深水港や最大規模の発電所、基幹送電網など、エネルギーセクターを一変させるような協力を行っています。私たちがまいた種が芽を出し、大きな花を咲かせることができるよう、JICAはこれからもバングラデシュという国をサポートしていきますし、その中で、日本が世界に誇る高い技術や豊富な経験・人材を有する東京電力さんとも、色々な形で協力していければと思っています」

小林「バングラデシュは、さまざまな経験をとおして私自身を育ててくれた国です。その恩返しができるよう、私もこの国のエネルギー政策をしっかりと担っていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

世界の人々とつながるための電力事業を

水力発電の調査で入ったソロモン諸島で、村の子供たちと

バングラデシュの方々と家族ぐるみで交流

みなさまのもとに滞りなく電気をお届けする。それは、ひとりひとりのお客さまとつながることであり、私たち東京電力は国内だけでなく、世界中の人々ともつながり、電気のある豊かで安心な暮らしに貢献したいと思っています。
私自身がその思いを強くしたのは、はじめての出張でソロモン諸島を訪れたときでした。水力発電所の調査で入った現地では、村の子供たちが「夜も勉強したいから早く電気を作って」と言って私たちを取り巻き、お母さんたちは「電気が来れば冷蔵庫で魚を冷やしておけるわ」と話し、お父さんたちは「テレビを見ることができるぞ」と喜んでくれました。それだけなく、冷蔵庫があれば、村の診療所ではワクチンを保存することができます。その体験は、今の私の原点になっています。

これからの私たちの目標は、コンサルティングに留まらず、電源・送配電インフラの計画から設備の建設、その後の保守運営にまで一貫して一国の電力供給に携わり、それを東京電力の国際事業として確立していくことです。しかし、どんなに壮大な開発事業であっても、その第一歩はソロモン諸島で私が体験したような人々との触れ合いであり、それがなくては何ごとも成し得ないと思います。だからこそ、そのことを忘れないよう心に刻み、これからも途上国での電力事業の開発と貢献に邁進していきたいと思います。

関連情報

  • 東京電力報
    「収益の拡大と国際貢献を目指す、海外での新規水力発電事業への挑戦」

    海外での新規水力発電事業を担当する二人の社員が、はじめて挑戦する海外事業への取り組みについて語ります。

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