健全性評価小委員会の見解と当社の補修の考え方
原子力発電の炉心シュラウドや再循環系配管で見つかったひび割れについて検討するため、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の「原子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会」(以下、健全性評価小委員会という)が昨年11月に設置され、点検方法の適切性の確認、健全性の技術的な評価について検討され、この程、第7回委員会で中間報告がとりまとめられました。
健全性評価小委員会での主な議題
健全性評価小委員会での主な議題は次のとおりです。
- 炉心シュラウド(注1)および原子炉再循環系配管(注2)のひび割れに関する検討の背景について
- 米国の状況について
- 炉心シュラウドおよび再循環系配管の点検について
- 炉心シュラウドの健全性評価について
- 原子炉再循環系配管の健全性評価について
健全性評価小委員会での議論の結果
上記議題での議論の結果を「炉心シュラウド」「原子炉再循環系配管」の2点を中心にまとめると次のようになります。
- 炉心シュラウドについて
応力腐食割れ(注3)の現状とその進展についての既存の知見に基づき、現時点および五年後の構造強度は確保できるとの解析結果を踏まえて、現時点で補修の必要はなく、今後適切に点検を行いひび割れの進展状況を把握していくことが必要である、と評価されました。また、補修をしない場合は、経産省令に基づく「特別の認可」を得て、五年間にかぎり運転できるとの見解も示されました。 - 原子炉再循環系配管について
超音波探傷検査(UT)による測定誤差の要因分析、検出精度の確認などを行い、UTの信頼性を実証することが必要である、と評価されました。信頼性が実証されれば、炉心シュラウドと同様に、ひび割れの現時点での構造強度の評価に加え、五年後のひび割れの進展状況を予測して、五年後においても十分な構造強度を有しているかを評価する評価方法が適切であるとされました。
しかし、検査の信頼性を実証するためには一定の期間が必要なことから、それまでの間に運転を開始する場合には、ひび割れの除去や配管の交換などにより対応を行うことが適切であるとされました。
委員会の結果を踏まえた当社の基本的考え方
当社は、これらの健全性評価小委員会の結果を踏まえ、問題となったシュラウド(炉心隔壁)と原子炉再循環系配管の補修についての基本的考え方を以下のとおりとりまとめました。(平成15年3月11日)
- 炉心シュラウドについて
シュラウドで確認された「ひび」については、健全性評価小委員会において、「現時点で直ちに補修を講じる必要はないが、今後適切な頻度で点検を実施し、実際の進展状況を把握していく必要がある」とされております。これらを踏まえ、ごく軽微なものおよびシュラウドの健全性に影響を与えないものを除き、全ての「ひび」を除去することといたします。 - 原子炉再循環系配管について
原子炉再循環系配管で確認された「ひび」については、改善された超音波探傷試験方法によりデータの信頼性を確認した上で、健全性評価を行うまでの間、一定の期間が必要となることから、配管を取り替えるか、あるいは「ひび」を除去することといたします。(現在点検が終了しているプラントについては、全て取り替えることといたします。)
今後、当社の考え方を、総点検結果や再発防止対策の進捗状況とともに、立地地域の皆さまをはじめ、関係各所に十分ご説明してまいります。
■シュラウド概要図 (BWR4の例)

■原子炉再循環系概略図

- ※1.シュラウド
原子炉圧力容器内に設置されている円筒状のステンレス製構造物。燃料を支持する構造物の一つで、通常運転時にジェットポンプによりシュラウド下部から炉心部に導かれた冷却材の流路を形成するための隔壁の役割を有すると共に、冷却材喪失事故時には炉心を冷却する水の水位を維持する機能をもつ。 - ※2.原子炉再循環系配管
原子炉再循環系 (PLR :Primary Loop Recirculation system) とは、原子炉内の冷却水を原子炉圧力容器から取り出し、ポンプで昇圧し原子炉に戻す強制循環系統。ポンプの回転数を変化させることにより、原子炉出力を増減できる。原子炉圧力容器内のジェットポンプに冷却水を供給する原子炉再循環ポンプと、2 系統の再循環ループで構成されている。 - ※3.応力腐食割れ
溶接による残留応力や、使用時に係る外部応力により材料に引張応力がかかり、これと特定の環境の腐食作用によって材料にひび割れをもたらす現象。