プレスリリース 2006年

福島第一原子力発電所3号機・6号機のハフニウム板型制御棒のひび等に関する原因と対策について

                             平成18年5月26日
                            東京電力株式会社

 当社・福島第一原子力発電所6号機(沸騰水型、定格出力110万キロワット)
においては、定期検査中の平成18年1月9日、制御棒の動作確認の準備作業とし
て外観確認を実施したところ、ハフニウム板型制御棒*11本の表面に従来の知
見*2を超えるひびが確認されたことから、同型の制御棒(全17本)について外
観点検を実施した結果、計9本の制御棒のタイロッド*3およびシース*4にひ
びが認められ、そのうち1本の制御棒のシースの一部に欠損部を含む破損が確認
されました。(シースの欠損部については、破損が確認された制御棒が装荷され
ていた位置の近傍より回収済)
 本事象に対し、1月19日および2月3日に経済産業省原子力安全・保安院より
指示文書を受領*5し、同型制御棒の健全性や当社原子力プラントにおける使用
状況の確認等、指示に基づく対応を適宜実施して同院に報告するとともに、引き
続きひび等の原因調査を行うことといたしました。
  (平成18年1月10日、11日、18日、19日、25日、2月1日、7日お知らせ済み)

 その後、福島第一原子力発電所3号機(沸騰水型、定格出力78万4千キロワッ
ト)においても、2月22日からの点検停止*6にともない、原子炉内から取り出
した同型制御棒(全18本)の外観点検を実施したところ、4本の制御棒にシース
のひび、1本の制御棒にシースとタイロッドのひび、およびシースの一部欠損を
確認いたしました。
 その後、シースの欠損部を回収*7しましたが、制御棒で確認されたひび等に
ついては、同6号機の事象とあわせて原因調査を行うこととしました。
           (3月3日、7日、11日、20日、4月14日お知らせ済み)

 当社は、福島第一原子力発電所3号機および同6号機のハフニウム板型制御棒
のひび等に関する原因と対策についてとりまとめ、本日、原子力安全・保安院に
報告書を提出いたしました。

 福島第一原子力発電所3号機および同6号機のハフニウム板型制御棒のタイロ
ッドおよびシースに生じたひび等について、発電所および照射後試験施設*8等
にて調査した結果は、以下のとおりです。

【調査結果の概要】
・当社原子力プラントの使用済燃料プール内で保管されている使用済みの同型制
 御棒ならびに停止中プラントで原子炉内に装荷されている同型制御棒(福島第
 一原子力発電所6号機の17本、および同3号機の18本並びに以前に点検を実施
 した19本を含め、13プラントで計268本)について外観点検を実施した結果、
 5プラント・計46本の同型制御棒で、同様のひびが確認された。
・タイロッドおよびシースのひびは、制御棒の上部(上部約1/4の領域)の、
 タイロッドとシースとの溶接部(スポット溶接部)、シースとコマ(ハフニウ
 ム板を固定する部材)との溶接部(コマ溶接部)、および冷却孔の近傍におい
 て多く確認され、ほとんどが水平方向に進展していた。
・タイロッドおよびシースのひびは、熱中性子照射量4.4×1021n/cm以上の制御
 棒にて確認された。この照射量は、ステンレス鋼(SUS316L)において照射誘
 起型応力腐食割れ(IASCC)*9の影響が高まるとされる範囲である。
・タイロッドおよびシースのひびの破面観察の結果、IASCCに特徴的に見られる
 模様(粒界*10破面)が確認された。
・ハフニウム板については、中性子照射による制御棒の軸方向への伸びが確認さ
 れた。
・ハフニウム板とシースの隙間(主にコマ周辺)に腐食生成物*11が付着・蓄積
 していた。
・シースの欠損部の破面には、機械的な力が働いたことを示す特徴的な模様が観
 察された。福島第一原子力発電所6号機のシースの欠損部の破面には、金属光
 沢が認められる一方、同3号機の同破面には、金属光沢が認められなかった。

 以上の調査結果から、ハフニウム板型制御棒のタイロッドおよびシ-スに発生
したひび等の原因は以下のように推定いたしました。

【推定原因】
(1)スポット溶接部およびコマ溶接部近傍のシースとタイロッドに、溶接時の
  残留応力によるIASCC等が生じ、微小なひびが発生した。
(2)プラントの運転が進むにつれて、ハフニウム板とシースの隙間(主にコマ
  周辺)に腐食生成物が付着・蓄積しハフニウム板とシースの間の摩擦抵抗が
  増加した。そのため、中性子照射量の増加によるハフニウム板の伸びが制御
  棒の軸方向に引っ張る力としてシースに伝わり、上記(1)で発生した微小
  なひびがIASCCにより水平方向に進展した。
(3)上記(2)によりシースのひびが大きく進展すると、スポット溶接部を介
  してタイロッドに制御棒の軸方向へ引っ張る力が働くため、上記(1)で発
  生したタイロッドの微小なひびがIASCCにより進展した。
(4)既に発生していたひびが制御棒操作時に周囲の燃料集合体等と接触したこ
  とにより、シースの一部が欠損した。
   なお、福島第一原子力発電所6号機のシースの破損は、破面に金属光沢が
  認められることから、今回の原子炉停止後に実施した制御棒動作確認におい
  て発生した。また、同3号機のシースの破損は、破面に金属光沢が認められ
  ないことから、前回の定期検査時もしくは原子炉運転中における制御棒の動
  作確認試験等で発生した。

 上記調査結果をふまえ、以下の対策を講じることにより、ハフニウム板型制御
棒のタイロッドおよびシ-スのひびの発生を防止することといたします。

【再発防止対策】
・ハフニウム板型制御棒の取替基準を熱中性子照射量4.0×1021n/cm(当社の従
 来の取替基準は6.0×1021n/cm)とし、次の運転期間中に熱中性子照射量が
 4.0×1021n/cmを超えると予想される同型制御棒については、直前の定期検査
 時に取り替える。なお、現在運転中のプラントにおいて、熱中性子照射量が
 4.0×1021n/cmを超えた同型制御棒については引き続き全挿入位置とする。
・今後、継続して使用するハフニウム板型制御棒については、定期検査において
 健全性を確認するため外観点検を実施する。また、継続使用しない使用済みの
 同型制御棒についても、念のため外観点検を実施する。
・今後、ハフニウム板型制御棒について設計変更を検討する。また、ハフニウム
 板の中性子照射にともなう伸び等のデータを採取して、知見の拡充をはかる。

 なお、今回、ハフニウム板型制御棒以外でハフニウムを使用している別タイプ
の制御棒(ハイブリッド型制御棒*12、ハフニウムフラットチューブ型制御棒*13 
およびハフニウム棒型制御棒*14)についても、知見を拡充する観点から点検を
実施しました。
 その結果、福島第一原子力発電所3号機および同6号機のハフニウム板型制御
棒のタイロッドおよびシ-スで確認されたひびと同様のひびは認められませんで
したが、柏崎刈羽原子力発電所4号機の制御棒(ハイブリッド型)および同7号
機の制御棒(ハフニウムフラットチューブ型)の一部(いずれも使用済)におい
て、ハンドルとシースをつなぐ溶接部近傍のシースにひびが認められました。
 調査の結果、柏崎刈羽原子力発電所4号機および同7号機のシースのひびは、
制御棒の健全性に影響を与えるものではない*15ことを確認いたしました。
 今後も継続的に制御棒の外観点検等の調査を実施いたします。

                                 以 上


*1 ハフニウム板型制御棒
    高い中性子吸収能力を有するハフニウムを使用した制御棒で、ボロン・
   カーバイト型制御棒よりも寿命が長い。
*2 従来の知見
    過去に福島第二原子力発電所3号機および同4号機の制御棒において、
   制御棒のハンドルとシースをつなぐ溶接部付近、ガイド・ローラ部付近、
   およびコマ溶接部付近のシース表面でひびが観察されたが、これらのひび
   については、溶接時残留応力等で生じる照射誘起型応力腐食割れ(IASCC)
   であり、制御棒の健全性や原子炉の安全性に影響を与えるようなひびでは
   なく、継続使用が可能であるとの判断がなされている。
*3 タイロッド
    シース、ハンドル等を接続している構造部材。
*4 シース
    ハフニウムを包んでいる金属板。
*5 指示文書を受領
  [平成18年1月19日の指示]
    福島第一原子力発電所6号機で使用していたハフニウム板型制御棒で確
   認されたひび等に関し、状況および発生原因、運転履歴、健全性評価およ
   び安全性評価について調査を実施し、その結果を報告すること。また、当
   社原子力プラントにおける同型制御棒の使用状況や健全性の確認を実施す
   ること。
  [平成18年2月3日の指示]
    熱中性子照射量4×1021n/cm2を超える同型制御棒は、全挿入位置とする
   こと。また、運転中に熱中性子照射量4×1021n/cm2を超えるものは、同照
   射量に達した時点で全挿入とすること。
*6 点検停止
    原子炉再循環ポンプ(B)軸封部のシール性低下にともない、当該軸封
   部を取り替えるため原子炉を停止。
*7 シースの欠損部を回収
    シースの欠損部については、破損が確認された制御棒の制御棒案内管内
   および気水分離器等貯蔵プール内から回収したが、未回収部分(小片2個)
   があることが判明した。この未回収部分について、原子炉内に残留した場
   合の健全性評価を実施した結果、設備の健全性に影響を与えるものではな
   いことを確認した。
*8 照射後試験施設
    軽水炉で使用した燃料や原子炉構造材の特性を調べるための試験施設で、
   茨城県東茨城郡大洗町にある日本核燃料開発株式会社の施設。
*9 照射誘起型応力腐食割れ(IASCC)
    応力腐食割れ(金属材料の性質と内部に残る応力、腐食しやすい環境の
   3つの複合要因により発生するひび割れ)のうち、中性子照射の影響によ
   り金属の組織が変化することに起因するもの(IASCC:Irradiation-Assisted
   Stress Corrosion Cracking)。ある程度以上の中性子照射を受けた際に
   発生しやすくなる。
*10 粒界
    金属材料は、配列の向きが異なる領域(結晶粒)が多数集まった構造を
   持っており、粒界はこの結晶粒の境界。
*11 腐食生成物
    鉄の酸化物(クラッド)など。
*12 ハイブリッド型制御棒
    中性子吸収材であるボロン・カーバイドとハフニウムとを併用した制御
   棒で、シース表面にハフニウム固定のための溶接部がない構造となってい
   る。
*13 ハフニウムフラットチューブ型制御棒
    シースの中に、扁平状のハフニウム管を納めたもの。シース表面にハフ
   ニウム固定のための溶接部がなく、部品点数が少ないシンプルな構造とな
   っている。
*14 ハフニウム棒型制御棒
    シースの中に、棒状に加工したハフニウムを納めたもの。
*15 制御棒の健全性
    柏崎刈羽原子力発電所4号機および同7号機の制御棒の強度について、
   ひびがシース面(表裏)に進展している等ひびの状況を保守的に模擬して
   評価した結果、地震時やスクラム時にかかる荷重に対して問題のないこと
   を確認。

添付資料
・添付1:ハフニウム板型制御棒の点検状況(平成18年5月26日現在)(PDF 12.6KB) 
・添付2:ハフニウム板型制御棒構造図(PDF 43.0KB) 
・添付3:シースおよびタイロッドにおけるひび発生の推定メカニズム(PDF 35.1KB) 
・添付4:6号機制御棒の外観点検結果(PDF 81.6KB) 
・添付5:3号機制御棒の外観点検結果(PDF 166KB) 


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