プレスリリース 2012年

国内初「高温超電導ケーブル」の電力系統への連系運転開始

~超電導送電実用化へ~

平成24年10月29日
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
東京電力株式会社
住友電気工業株式会社
株式会社前川製作所

 NEDOの「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」において、東京電力株式会社、住友電気工業株式会社、株式会社前川製作所は、高温超電導ケーブル(注1)を電力系統に連系する、国内で初めての超電導送電の実証試験を開始しました。
 本事業を通じて開発した、超電導送電を可能とする世界最大容量(20万kVA級)の三心一括型(注2)の超電導ケーブルを、東京電力の旭変電所(神奈川県横浜市)内に全長約240メートルにわたり設置、液体窒素を用いた冷却により超電導状態を維持し、電力系統に連系することでケーブルの実系統での運用性や信頼性、安定性を検証します。

 なお、本実証試験で使用するケーブルの線材には、住友電気工業が開発したビスマス系高温超電導線「DI-BSCCO」を改良(注3)し、採用しております。超電導ケーブルの冷却システムの製造・運転は、前川製作所が行います。

1.概要
 このプロジェクトでは、超電導ケーブルを社会の重要なインフラである電力供給システムに適用するために、これまでのNEDOの技術開発によって得られた超電導ケーブルの開発成果などを踏まえ、冷却技術などを統合する超電導ケーブルシステムを構築しています。また、超電導ケーブル単体だけではなく、線路建設、運転、保守を含めたトータルシステムの信頼性を実証するために、実系統に連系した実証試験を実施することによって超電導ケーブルのトータルシステムとしての総合的な信頼性を実証するとともに、革新的な高効率送電技術の開発・検証を行うことを目的としています。
 本プロジェクトの実施により、安定的かつ高効率な電力供給のための技術開発を行い、超電導ケーブルの初期市場形成と新規産業の創出に貢献することを目指しています。

2.今回の成果
 本プロジェクトでは、住友電気工業株式会社の開発による低交流損失型のビスマス線材を用いて、短尺ケーブルによる交流損失の検証および電力系統事故時における健全性の検証等と、これをもとにした30m級の三心一括型超電導ケーブルの設計、製造と大電流接続部である終端接続部、中間接続部の技術開発を行い、これらの各性能評価を行ってきました。
 また、実証場所における超電導ケーブルシステムおよび運転・監視システムの設計と構築、超電導ケーブルシステムと既存系統との接続・切離しを行う保護・遮断システムの構築を東京電力株式会社と共に実施し、株式会社前川製作所が冷却システムの設計と構築、さらに送電を維持した状態でのメンテナンスの手法の検討を行い、実証試験のための超電導ケーブルシステムの設計に反映させて参りました。
 これらを達成した後、66kV、200MVA級の三心一括型超電導ケーブルの製造及び中間接続部、終端接続部の設計及び製造、それらを冷却する液体窒素循環型の冷却システムを製造し、実証場所である東京電力株式会社旭変電所に実証用ケーブルシステムを構築しています。
 そして本日、日本国内で初めて実際の電力系統と超電導ケーブルを接続し、実証試験を開始いたしました。

3.今後の予定
 NEDOは本実証運転を通じて、地球環境問題への貢献が期待できる超電導ケーブルシステムの実用化に向け、引き続き積極的に取り組んでまいります。
 また東京電力、住友電工および前川製作所は、超電導ケーブルの実用化に向けた取り組みとして、通電容量の増大、建設コスト低減、高効率冷凍機開発等の技術開発に、さらに積極的に取り組んでまいります。

4.お問い合わせ先
(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 省エネルギー部 臼井、三津井 TEL:044-520-5281
東京電力株式会社 広報部報道グループ TEL:03-6373-1111
住友電気工業株式会社 広報グループ TEL:06-6220-4119
株式会社前川製作所 広報室 TEL:03-3642-8185

参考資料
「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」実系統連系試験開始について(PDF 748KB)

当社ホームページ
送電技術 超電導ケーブル(高温超電導ケーブル実証プロジェクトについて)

【参考:用語解説】

(注1)高温超電導ケーブル
 超電導は、ある温度以下になると電気抵抗がゼロになる現象。超電導には、液体ヘリウム(-269℃)を使って冷却する低温超電導(金属系超電導)と、液体窒素(-196℃)を使って冷却する高温超電導(酸化物系超電導)とがある。
 高温超電導ケーブルは、その高温超電導の線材を使用した電力ケーブル。低温超電導に比べ高温であることから、冷却に必要となる設備が軽減され、コンパクトな形状となり、冷却にかかるコストを低減することが可能となる。
 ケーブルのサイズがコンパクトになるため、地中送電線の管路の小型化・少本数化につながり、実用化されれば、送電効率の向上に加え、電力流通設備の建設においても大幅なコストダウンを実現するものとして期待されている。

(注2)三心一括型
 3本の高温超電導ケーブルコアを一つの断熱管の中におさめた構造。

(注3)ビスマス系高温超電導線「DI-BSCCO」を改良
 住友電工が、NEDOプロジェクトの成果をもとに平成16年に開発したビスマス系超電導線「DI-BSCCO」(Dynamically Innovative-BSCCO)をさらに改良し、線材をスリム・コンパクト化することで、交流損失の低減化を図っている。
 「BSCCO」はBi2Sr2Ca2Cu3O10と記述される酸化物超電導体の頭文字をとって表記されるもの。ビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、酸素(O)の化合物。


ページの先頭へ戻ります

公式アカウント:
  • 東京電力 公式Xアカウントのご案内ページへリンクします
  • facebook公式アカウントサイトへリンクします
  • Instagram公式アカウントサイトへリンクします
  • youtube公式アカウントサイトへリンクします
  • 東京電力 公式LINEアカウントのご案内ページへリンクします