経営層からの改革

事故前には、原子力安全に対する甘い認識が組織内に蔓延していました。経営層は、原子力安全は既に確立されたものと思い込み、組織内で継続的に安全を高める取り組みは、必ずしも実践されていませんでした。また、経営層は、原子力部門でたびたび生じていた事故・トラブルは、現場の問題と認識していたきらいがありました。
こうした反省を踏まえ、経営層や原子力幹部は、経営層対象の研修や発電所の安全点検を自らするなど、安全意識を高め、現場との対話を繰り返し、原子力安全文化を組織全体に浸透する取り組みを進めています。

経営層からの改革のイメージ写真

原子力幹部自ら海外事例を学ぶ

経営トップから安全意識を高めるため、事故の検証に関する研修等を受講したり、原子力幹部自らが海外事例を吸収したり、研修を繰り返し実施しています。

原子力幹部自ら海外事例を学ぶようす1

原子力幹部自ら海外事例を学ぶようす2

現場第一線との直接対話

経営層や原子力リーダー、タスクフォース事務局と現場第一線との直接対話を繰り返し行っています。

現場第一線との直接対話のようす

原子力部門全員の安全意識・行動をモニタリング

安全文化の醸成活動に向けて、東日本大震災前には「7原則」を定めて、これに沿って行動することを目指していました。福島原子力事故の教訓をより明確に反映し、かつ、覚えればよいと考えがちな「原則」ではなく、日常の実際の行動・ふるまいとして明示し、定着することを目的として、「健全な安全文化の10特性と40のふるまい」に変更。これは世界原子力発電事業者協会や米国原子力発電運転協会の先行特性を参考にしながら作成しています。
毎日、原子力部門の全員が「10の特性」を振り返り、かつ、2週間に一度の頻度でこの特性に基づく行動例と自分自身の行動を比較・評価するツールを開発。組織単位で集計して、安全意識や振る舞いをモニタリングできるようにしています。

毎日、全員が自分のふるまいを振り返る「10の特性」

10特性と40のふるまいに基づく自己評価結果

経営層への監視・支援強化

原子力安全監査室による厳しい監視体制

原子力安全監査室を設置し、原子力部門を独立かつ直接的に監視し、監視結果や提言を社長に報告する体制を整えています。原子力安全監査室の室長には、原子力安全の専門家であるジョン・クロフツ氏を海外から招聘。監査の独立性につながるとともに、客観的視点を組織に浸透しています。

海外専門機関からのメンターのようす

原子力安全監査室による厳しい監視体制

海外専門機関からのメンターによる監査能力向上

原子力施設の規制や運転中の原子炉監視の経験が豊富な海外専門機関から、外部メンターを活用。海外の原子力安全監査に関するベンチマークなど、安全の内部監査の能力向上に努めています。

ミドル層の能力強化

部長級・課長級の役割認識や人材育成能力の向上につとめています。
安全に作業をできる人材を育成する能力の向上研修(TWI)などに取り組んでいます。

能力の向上研修(TWI)の風景写真