ハワイで活きるTEPCOのノウハウ
米国エイドングループに出資参画

2019/12/24

ハワイで活きるTEPCOのノウハウ 米国エイドングループに出資参画

新規事業の創出や投資、運営サポートを行う東京電力ベンチャーズ株式会社は、2018年9月から米国・ハワイ州のエイドン(Adon)グループに出資し(2019年8月出資拡大・当社関連会社化)、太陽光発電・蓄電池事業に取り組んでいます。TEPCOとハワイ。一見つながらないようにみえる遠い地で、東京電力グループは日本の電力事業の将来を見据えています。事業に携わる社員が、事業の経緯や、そこにかける思いを語ります。

東京電力ベンチャーズ株式会社
エネルギーソリューション事業部長

TEPCO Innovation & Investments US, Inc.
代表取締役社長

川嶋 啓靖

1994年、東京電力株式会社入社。火力部、国際部、社外で火力発電に長らく携わり、2017年より現職。

川嶋 啓靖

東京電力ベンチャーズ株式会社
エネルギーソリューション事業部 ビジネスマネージャー

百瀬 純哉

海外の日本大使館勤務等を経て2015年、東京電力株式会社入社。国際室などで海外関連業務に取り組み、2017年より現在のプロジェクトに参加。

百瀬 純哉

東京電力ベンチャーズ株式会社

もともと東京電力ホールディングス内に置かれていた、海外の先進的なベンチャー企業への出資や新規事業開発を行う組織「新成長タスクフォース」が前身となり、2018年に設立(東京電力ホールディングスのグループ会社として)。次世代ユーティリティや新しい社会インフラの創出をテーマに、国内外の企業と連携した事業開発・拡大を行っている。東京電力グループのノウハウを活かしながら、事業を立ち上げ育成し、将来的に事業開発サイクルを確立し東京電力グループに還元することを目指す。社員数44名(2019年11月末現在)。

東京電力ベンチャーズ株式会社ウェブサイト
https://www.tepcoventures.co.jp/

ハワイでの事例が、日本の将来のヒントに?

百瀬「時代の変化に伴い、電力会社に求められるものも変化してきました。新技術が登場し、電力小売全面自由化も始まった今、東京電力グループも大規模発電・大量送電という事業モデルだけでなく、新しい電力事業の姿を模索していかなければなりません。そこで私たち東京電力ベンチャーズは、自然エネルギー、デジタル技術など様々な技術を組み合わせた新しい事業を立ち上げて育成しています。グループの先遣隊のような役割で、『今私たちがやっていることが、将来、東京電力グループの基幹事業になるかもしれない』という思いをもって仕事をしています」

川嶋「私たちのチームが主に取り組んでいるのは、太陽光パネルと蓄電池等を組み合わせたマイクログリッド事業です。太陽光発電や風力発電など、自然に左右され時々刻々と発電力が変化する電源に蓄電池を組み合わせることで、小規模なエネルギーネットワーク(=マイクログリッド)をつくることができますが、今、これを活用した事業機会に恵まれている国のひとつが、米国です。そこで私たちはTEPCO Innovation & Investments US, Inc.という投資会社を設立し、米国企業と協力して様々な事業を進めています」

ハワイでの事例が、日本の将来のヒントに?

百瀬「中でもマイクログリッド事業を進める場として候補地に挙がったのが、ハワイでした」

川嶋「ハワイは、米国本土から離れ、大規模な電力系統に頼ることができない島しょ部です。さらにハワイ州の方針で、州内で使用する電気を2045年までに100%再生可能エネルギー由来とすることを目指している地域でもあります。米国内の再生可能エネルギー事業者の間でよく言われていたのは“New York thinks battery, California wants battery, Hawaii needs battery.(ニューヨークは蓄電池を考えている、カリフォルニアは蓄電池を欲している、ハワイは蓄電池を必要としている。)”ということ。米国内でもハワイは最も蓄電池を必要としている場所なのだから、私たちが役に立てる部分もきっとあるだろうと考えました」

百瀬「市場環境では日本の現状と比べて数年先を行っている状態ともいえるかもしれません。だからこそ、ハワイでのマイクログリッド事業は将来の日本の電力業界にとっても参考になるはずです。周囲と電力系統のつながっていない島しょ部が、どう自然エネルギーを活用していくのか。自然災害が増えている今、停電時にどう対応するのか。そのヒントがあるかもしれないのがハワイだと思います」

  • コンドミニアムの屋根に設置された太陽光パネル
  • フィットネスクラブに設置された蓄電池
  • ワイキキ地区のビルの屋上に設置された太陽光パネル

ハワイは世界的に見ても再生可能エネルギーの導入が進んだエリアだと言われている
(左:コンドミニアムの屋根に設置された太陽光パネル、中:フィットネスクラブに設置された蓄電池、右:ワイキキ地区のビルの屋上に設置された太陽光パネル(※いずれもエイドングループ施工))

エイドングループウェブサイト
https://adon1.com/

ハワイからTEPCOに寄せられる期待

川嶋「パートナーを選ぶ段階で、カリフォルニアやハワイを中心に100社以上に声をかけ、実際に20社以上を訪問し、どの会社と協業するか検討しました。なかでもハワイは、古くから日本人が活躍し、日本企業が多く進出していることもあり、訪れた現地の企業は私たちを歓迎してくれて、全ての会社が『ぜひ一緒に仕事をしたい』と言ってくれました。その中で私たちが手を携えたのが、エイドングループです。すでに太陽光パネルや蓄電池によるマイクログリッドの実績があり、お客さまや地域との関係も良好で収益基盤がしっかりしていたことも魅力でしたし、何よりマイケル社長が『ハワイの大切な自然を守るため、環境に配慮した未来のエネルギー事業のために、最先端のテクノロジーを駆使し様々な課題を解決して成長したい』という強い意欲を持っていました」

百瀬「社長の人柄もよく、私たちの意見を取り入れて事業を拡大したいという思いを強く感じましたね。私たちも、『この会社なら支援したい。一緒に成長していきたい』と思い、パートナーとなることを決めました。今は事業の基盤整備から経営管理に関するアドバイス、営業活動まで一緒に行っています。ありがたいことに、日本の大手旅行会社、JTBグループのJTB Hawaii, Inc.も賛同し、出資参画してくださいました。事業は順調に拡大し、将来的には電動モビリティ分野や水素事業、さらには建物エネルギー効率改善や環境対策などの先端分野にも積極的に挑戦していきたいと思っています」

2018年9月、エイドングループへの出資が決定

2018年9月、エイドングループへの出資が決定(左:エイドングループ マイケル社長 右:川嶋さん)

川嶋「エイドングループと一緒に活動してみて、改めて実感したのは東京電力グループの強みです。グループのブランドはもちろん、これまで国内で様々なエネルギー関連企業とお付き合いをしてきたことで築いた関係性、そして日本での電力事業や、大規模な海外事業で培ってきた実績。その全てがエイドングループにとっては大きな支えとなるとともに自信となり、成長につながっているようでうれしいです」

百瀬「出張で訪問するたびに『次はいつ来てくれますか?』と聞いてくれるので、期待の大きさを感じますよね」

川嶋「大きなイシューは適宜アップデートしてくれて、事業の進め方等を含めて私たちに相談し、私たちの意見を受け入れてくれるおおらかさも、ありがたいですね」

百瀬「でもそのおおらかさには、時に戸惑ってしまうことも…。私たちの感覚でいえば、事業の収支計画を3年、あるいは10年先まで作るのはよくあることです。しかし、彼らに収支計画の報告を求めたところ『10年!?そんな先の予定は立てられないよ』と言われてしまって…。企業の基盤づくりにはまだまだ課題が残っています。エイドングループの良いところは残したまま、深化させていきたいです」

仕事の様子

小さな会社を世界に広がる事業に育てていく

川嶋「私は長らく火力発電に携わってきましたが、これまでずっと再生可能エネルギー事業にも関わってみたいと考えていました。既存の事業とのベストミックスができれば、環境面でも、利益面でも東京電力グループに大きく貢献する事業だと思います。今の事業の利益は、グループの基幹事業と比べればとても小さいものです。しかし、私たちの努力が結果にすぐ表れるので、やりがいは大きいですね。世界中で課題とされている、再生可能エネルギーの不安定性を補い、社会が目指す脱炭素化社会の実現に貢献する方法が、このハワイの地で見つかるかもしれない。大きな期待をしています」

集合写真

百瀬「東京電力グループは、これまでも海外事業を進めてきましたが、今後まだまだ拡大させていかなければならないとも思っています。その中で、私たちが今、世界の最先端といえる現場に携われているのはとてもうれしいことですが、その分責任も強く感じています。エイドングループはまだまだ小さいですし、ハワイも小規模な地域ですが、そこに私たちが寄り添い大きくなることで、日本やアジア地域等をはじめ世界に展開できるような会社に育てることができればいいなと夢見ています」

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