安全な廃炉と復興を担って走る“自動運転EVバス”の未来

2018/06/15

廃炉作業が進む福島第一原子力発電所では、日本初となる自動運転EVバスの運行がはじまりました。東京電力グループは総力を結集し、関係者が一丸となってこの新しい技術の実用化に取り組みました。そのなかで、技術支援を担当した社員が、最先端技術への挑戦と思いを語ります。

東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所
技術開発部 次世代電力インフラエリア プロジェクトマネージャー

細田 知秀

1997年入社。電子通信部門で通信ケーブルの保守・管理、通信ネットワーク工事の設計、技術企画・調査などに携わったのち、開発計画部知的財産センターで出願や契約交渉などを担当。2017年7月より経営技術戦略研究所技術開発部に勤務し、9月より自動運転EVバスの研究を担う“ロボットバスプロジェクト”を担当。

東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所
技術開発部 次世代電力インフラエリア

甘利 治雄

1988年入社。変電所の保守などを担当したのち、主に研究部門で遠隔監視技術やヒートポンプの新規開発などに携わる。現在は経営技術戦略研究所で情報通信技術を駆使した研究に従事し、2017年9月より“ロボットバスプロジェクト”に参加。

部門を越えた協力体制で、EVバスの走行を実現!

細田「福島第一原子発電所での自動運転EVバスの運用は、東京電力グループの中で小売りを担当し、EVの普及にも務める東京電力エナジーパートナーが計画し、昨年秋から本格的な準備がはじまりました。私たちはその技術支援を担い、現場で廃炉作業に携わる各部署とも協力しながら実用化に取り組み、4月18日から本格的な運用が開始されました。これは日本ではじめての試みですから、技術開発の責任者としては大きなやりがいを感じています。それと同時に、はじめての挑戦にはさまざまな試行錯誤もありました」

甘利「技術を担う私たちがまず取り組んだのは、廃炉の現場に適した車輌を選定するための評価軸の作成です。雨天での走行可能な降水量や、登ることができる坂道の勾配などいくつもの具体的な項目を設け、それぞれのレベルを検討できるようにするためです。とはいえ、そのすべてが前例のないはじめての試みですから、自分たちの考えた評価の基準が正しいのかどうかと悩むこともあり、自問自答を繰り返す日々でした。しかし、廃炉の現場やEVバスの関係者から多くのデータを提供していただき、協力を得ながら意見交換も重ねたことで、誰にでもわかりやすく、客観的な評価軸を作成することができました」

細田「評価軸の作成のほかには、EVバスがスムーズに走るための運行ダイヤやルートの検証を行いました。そのためには、発電所構内の交通量や、人の行き来などについての現状把握が必要です。ですから、私たちは頻繁に現場へ通い、廃炉作業をよく知る関係部署をはじめ、社内外の関係者と一緒に検証を進めました。また、並行して、構内でのインフラ整備や作業員の方々への周知なども進められました。その過程で、それぞれの役割を担うすべての部署が協力し、力を結集したからこそ、日本ではじめての自動運転EVバスの実用化を成し遂げることができたのです」

運行開始に向け待機する自動運転EVバス。その愛称は“はまかぜe”

福島第一原子力発電所の磯貝智彦所長に、自動運転の技術について説明する細田さん

福島第一原子力発電所 土木保全・総括グループ
木村 忠一

「私たちが担当したのは、発電所構内の交差点にEVバスが曲がるレーンの区画線を引く作業です。準備にあたっては、交差点での安全で円滑な走行を実現するために、関係者との間で協議を重ねました。実際の作業は、事前に規制情報をお知らせしたうえで通行の支障にならないよう休日に行い、関係者のみなさまと力を合わせ、スムーズに進めることができました。今後もEVバスが安全に走行し、誰からも親しまれる存在になれるよう、関係者のみなさまと力を合わせ、道路の補修や信号などのインフラ整備を進めていきたいと思います」

福島第一原子力発電所 建築部建築総合工事グループ
中里 実

「私たちはEVバスの充電設備を確保するために電源の供給元を検討し、コンセントを含む電源盤の設置を行いました。準備期間が短かったにもかかわらず、関係各所の協力により、短期間で効率よく作業を進めることができ、電源盤設置のための夜間停電作業なども経て、運用開始を迎えることができました。今後もそうした協力体制のもとで、EVバスの整備場所の確保や、車庫の建設などにも積極的に貢献できればと思います。そして、自動運転EVバスの導入が作業環境の安全性を向上させ、福島第一原子力発電所のイメージを少しでも良くしていくことにつながることを期待しています」

いつでもどこにでも移動できる、安全で便利な足となるために

細田「まだ走りはじめたばかりの自動運転EVバスですが、将来に向けて多くの期待と役割を担っています。そのひとつが、廃炉の現場での作業員の方々の安全な移動手段となることです。今後は現状分析を行いながら最適な運行システムを開発し、作業員の方々が行きたいところへいつでも移動できる便利な足として、EVバスを利用できるようにしていきたいと思います。そして、今はまだ課題も多く、オペレータが同乗していますが、安全走行へのリスクの対処法などの研究を進め、将来的には完全自動化による走行を目指してまいります」

甘利「実際に自動運転EVバスが走り出したことで、障害を検知した時に止まったままお見合いになってしまったり、他の車輌が近づいてきたときの走行が定まらなかったり、さまざまな課題も見えてきました。今後も、いろいろな状況下で多くの課題が出てくると思います。その一つ一つについてデータを収集し、解析を行いながら、さまざまな解決策を示していくことが私たちの役割です。そうした経験と知見を積み上げることで、自動運転の技術を高め、作業環境の安全性と利便性の向上へつなげていきたいと思います」

自動運転の最先端技術で、福島の復興に貢献したい

細田「福島第一原子力発電所の面積は約350万㎡で、東京ドーム約77個分に相当する広さです。そこに道路があり、交差点や信号機が設置され、約6000人の作業員の方々や多くの車輌が行き交っています。こうした条件下で、実用化を含めた自動運転の実証データを蓄積できるエリアは他にありません。ですから、私たちはその利点をいかし、得られた実績やノウハウを地域のみなさまにもご提供し、発電所のある福島県浜通り地域の交通サービスにも貢献してまいります。その技術開発を担うひとりとして、自動運転EVバスが福島復興の一助となれるよう、これからも力を尽していきたいと思います」

甘利「私も現地へ足を運ぶたびに、福島の復興に向けて、私たちができることを精一杯やっていかなければと痛切に感じます。ですから、公道と同じような環境にある発電所の中で、まずはしっかりとした検証を行い、発電所の外でも自動運転EVバスを活用できるようにしていきたいと思います。自動運転の技術が実用化され、福島第一原子力発電所でその第一歩を踏み出したことは、今後に向けて大きな可能性を秘めています。その可能性をさらに広げ、みなさまのお役に立つことができるよう、日々の研究開発に全力で取り組んでまいります」

関連情報

  • 東京電力報
    日本初! 福島第一原子力発電所で、自動運転EVバスが運行開始

    日本ではじめて自動運転EVバスの操作を担うオペレータ資格を取得した二人の担当社員が、EVバスの未来に託す思いを語ります。

  • 私が、お応えします。
    廃炉の「今」と「これから」
    作業エリアの安全性向上

  • EVのある暮らし

    エネルギーや環境の問題に対しても貢献できるEV。
    私たちは、EVの普及に努めることで、社会の期待に応えていきます。

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