新潟で働く私たちの思い
~失った信頼を取り戻すために、とことん安全を追求していく

2018/08/20

柏崎刈羽原子力発電所では、福島第一原子力発電所の事故の反省から、災害に備えた様々な安全対策に取り組んでいます。そのなかで、津波・浸水対策に携わる社員が、自ら得た教訓と安全への思いを語ります。

東京電力ホールディングス株式会社 柏崎刈羽原子力発電所
第一保全部建築(第一)グループ(2017年11月撮影現在)

水谷 浩之

1997年入社。長らく地震対策の技術者として、原子力発電所の耐震設計に携わる。

水深10メートルの水圧に耐えられる水密扉

私は現在、主に発電所の安全対策設備の設計などを担当しています。水密扉の設計と監理もそのうちのひとつです。
福島第一原子力発電所の事故では、想定を大きく上回る津波に対する備えが不足していたことが、重大な事故のきっかけになりました。その反省から、柏崎刈羽原子力発電所では、何重にもわたる津波・浸水対策を実施しています。発電所の原子炉建屋は、1~4号機側は海抜5メートル、5~7号機側は海抜12メートルの高さに設置されており、それぞれの敷地の海側に海抜15メートルの防潮堤(図1)を建設し、想定する最大6.8メートルを上回る津波にも備えています。加えて、1〜4号機側の防潮堤は、新しい規制基準への適合性審査での議論を踏まえ、地盤深層部の液状化への対策を検討しています。
それでも万が一、想定を大きく上回る津波が来たり、地盤が液状化して防潮堤が損傷するなどして、発電所の敷地内に水が入ってしまった場合には、重要な設備がある建物の給気口などを覆う防潮壁と防潮板(図2)が、建物への浸水を防ぎます。さらに、これらの設備でも建物への浸水が防げなかった場合に備え、重要な機器がある部屋の入口を密閉するために設置されているのが、水密扉(図3)です。
水密扉の厚さは約20センチメートルで、ただ水が入らないようにするだけでなく、強い衝撃や水深10メートルの水圧にも耐えられるたいへん頑丈な扉です。建物内の部屋の入口をまるで潜水艦の扉のように密閉し、たとえ水が押し寄せても重要な機器を守れるように設計しています。

安全に対する考え方を変えた、福島第一原子力発電所の事故

私はもともと発電所の地震対策の技術者だったので、発電所がどれほど大きな地震に耐えられるかということを考えて設計に取り組んでいました。しかし、東北地方太平洋沖地震の規模は、そんな私の想定を大きく上回りました。福島第一原子力発電所は、その揺れには耐えることができたものの、その後の津波には耐えられず、重大な事故にいたってしまいました。それを見て、私は、地震対策の技術者としてたいへん大きなショックを受け、やりきれなさ、ふがいなさ、無念さが交錯し、言葉に言い尽くせないほどの悔しい思いでいっぱいになりました。そして、何より辛かったのは、それまで築き上げてきた原子力事業者としての信頼を失ってしまったことでした。
福島第一原子力発電所の事故から約7年が経過しました。私は今でも、その思いを忘れてはいませんし、失った信頼はすぐに取り戻せるものではないと思います。しかし、重大な事故を経験した我々だからこそ、事故を反省し、その教訓をしっかり活かして、より安全なものを築いていかなければならないという意識を持つようになりました。そのため、今は、より大きな災害は起こるものだと実感を持ってリアルに想像し、日々の業務に取り組んでいます。そして、ここまで対策していますと、胸を張って言えるまでとことん高いレベルの安全を追求してまいります。

関連情報

  • 柏崎刈羽原子力発電所の安全対策

    「津波による浸水防止」

  • 新潟で働く私たちの思い
    ~責任を持って監視することで、皆さまの安心につなげたい

    柏崎刈羽原子力発電所では、福島第一原子力発電所の事故の反省をふまえて、設備の強化・新設に取り組んでいます。今回は発電所の放射線の管理に携わっている社員に、仕事に対する思いを聞いてみました。

  • 新潟で働く私たちの思い
    ~若い世代の目標となるような「人財」を育てていく

    柏崎刈羽原子力発電所では、福島第一原子力発電所の事故の反省をふまえて、設備の強化・新設に取り組んでいます。今回は発電所で人材育成に携わっている社員に、仕事に対する思いを聞いてみました。

  • 「原子力発電所に質問です」

    新潟市内に住む主婦由美は、ふと目にしたニュースがきっかけで、原子力発電所について知っておかなければと思いはじめる。
    マンガで見る柏崎刈羽原子力発電所の安全対策

ページの先頭へ戻ります

  1. HOME
  2. 東京電力報
  3. 新潟で働く私たちの思い ~失った信頼を取り戻すために、とことん安全を追求していく