TEPCOが挑み続ける!海外の水力発電事業
~挑戦から4年、次のステップへ~
2022/11/29
東京電力リニューアブルパワーは、国内で培った水力発電の技術やノウハウを活用し、2018年のコクサン水力発電所(ベトナム)への出資を皮切りに、ダリアリ水力発電所(ジョージア)、インドネシアの再生可能エネルギー発電事業者であるKencana Energi Lestari(クンチャナ エナジー レスタリ社、以下KEL社)への出資参画を実現し、課題の洗い出しとリスクへの適切な対処や長期にわたる安定操業の実現を図るとともに、収益向上を目指しています。
現地での技術支援やプロジェクト開発の最前線を担う社員3名が、事業の現状と展望について語りました。
▼2018年11月
ベトナムの水力発電事業者Lao Cai Renewable Energy社が保有するコクサン水力発電所(合計出力:2.97万kW)の出資会社の株式36.38%を取得
▼2020年4月
ジョージアの水力発電事業者Dariali Energy社が保有するダリアリ水力発電所(合計出力:10.8万kW)の運営に参画し同社の株式31.4%を取得
▼2022年2月 インドネシアの再生可能エネルギー発電事業者KEL社の株式25%を取得
東京電力リニューアブルパワー株式会社
水力部 海外技術グループ 海外技術チームリーダー
藤原 秀樹
1994年入社。栃木や群馬県内の事業所などで、国内水力発電設備の保守・管理を担当し、総合研修センターで水力発電に関する技術指導などを経て、2020年から海外プロジェクトに携わり、ベトナムをはじめ現地での技術支援・人財育成を行う。
東京電力リニューアブルパワー株式会社
海外事業開発室 プロジェクト開発グループ
臼倉 協
2018年入社。長野県の高瀬川事業所で、水力土木の技術職としてダムの保守などを担当。2021年から海外事業開発室で海外水力業務に携わり、インドネシアのKEL社の運営や、新規開発案件に関する業務を担当。
東京電力リニューアブルパワー株式会社
海外事業開発室 プロジェクト開発グループ プロジェクトマネージャー
戸村 浩之
2020年にキャリア採用で入社。前職で幅広く海外の電力事業開発に携わってきた知見を生かし、KEL社の運営や、同社との開発案件への出資参画に関する業務を中心にインドネシアでの事業を担う。
新規事業としてスタートして4年、その現在地
藤原 「当社が新規事業として海外の水力発電に取り組み、第1号案件となったベトナム コクサン発電所への出資参画から4年。私はそのうち直近3年間で現地発電所の運転・保守などの技術支援と人財育成に携わってきました。ベトナムで水力発電に携わっている方々は技術レベル・向上心ともに非常に高く、技術や知識をたちどころに吸収します。彼らはすでに技能的なことを学ぶ段階から一歩先へ進み、安全かつ、より効率的な全体のメンテナンスや、収益性の高い運営の方法といった『発電所のトータルマネジメント』を検討するフェーズに移っていると感じます」臼倉 「私は2021年に海外事業の担当になり、今年(2022年)6月に初めてインドネシア現地の KEL社を訪問しました。インドネシアでは同社が手がける複数の新規案件が足元で動いており、さらに今後は水力発電以外の再生可能エネルギーによる発電事業も動き出すということで、再エネ分野に対する需要と意識の高まりを肌で感じました」
戸村 「私がインドネシアを担当するようになったここ一年半ほどを振り返っても、3つの海外出資案件の進展に伴い、TEPCOの知名度は徐々に高まっていると感じます。海外における再生可能エネルギー事業者として他社から紹介される案件も増えています。新規案件の開発に関しては、海外案件の引き合いも増える中で、長期的な事業戦略が当社と一致するかどうかを、これまで以上に慎重に見定めなければいけないと思っています」
立ちはだかった壁と、乗り越えた先に見えたもの、得たもの
臼倉 「要求される知識の幅が大きく広がったことと、常に複数部署との調整が必要となることが苦労している点です。加えて海外業務では言葉というコミュニケーションでの壁もあります。しかし、そうした苦労を乗り越え、KEL社の方々と発電所の設計についての協議で、臆さずに議論を進めまとめあげることができた時は、大きな達成感がありました」
藤原
「どうしたら『もっと分かりやすく伝えられるのか』という思いは常にあります。
ベトナムでは英語を話せるスタッフが少ないという事情もありますが、より分かりやすく
親しみをもっていただけるようにと、実務で使うベトナム語をいくつか覚えていきました。
こちらが実際の点検作業をやって見せた後、測定結果の数値や解釈を覚えたベトナム語で伝えたところ、それまでやや緊張した面持ちだったスタッフたちの表情が一転して笑顔になり、その後の休憩時間には、彼らのほうから肩を組んで話しかけてくれ、一気に打ち解けることができました。
私たちの技術を伝えられたことはもちろんですが、例え拙くとも現地の言葉を使うことで、それ以上に、お互いに歩み寄り仲間として信頼を得られた実感がありました」
その国の発展を支える事業として
藤原 「自分が身につけた知見が、TEPCOの技術としてその国の発展に貢献できることは大きな喜びです。先日の出張では、現地の社長やベテランの技術者の方々から『TEPCOは数年前からずっと優れた知見を共有してくれている。我々の国の発展に貢献してくれてありがとう』と伝えられ、嬉しかったですね」
臼倉 「再生可能エネルギー関連の事業は世界中で存在感や注目度が増しており、欧州勢や中国や韓国との競争が激化しています。そうした中でもアジア諸国では日本の技術やクオリティは極めて優れているという印象を持っていただけています。高い技術を求める期待に応えて、これからもその地域・国の発展に貢献していきたいです」
戸村 「現地で高まる電力需要に対し、再生可能エネルギーを通じていかに適切な供給をしていくのかが当社の使命。こうしたインフラを提供することで現地のよりよいくらしを実現する一翼を担い、ひいてはその国の成長に寄与できる事業だと思います」
既存の関係を強化し、さらなる付加価値で次の一歩を
藤原 「日々の業務では、単に当社のやり方を『教える』という姿勢ではなく、互いに水力発電事業を担う技術者同士という仲間意識を持って、双方が成長できる関係を深めていきたいと強く思います。そのために基本となるのは、やはり出資先の企業や現場の方々が何を求めているのか、そしてどうすれば分かりやすく伝わるかを意識しています。特に安全や品質に関わることなどは『なぜそれを遵守することが大切なのか』という背景を丁寧に伝え、過去に当社で起こった具体的な失敗の事例とその改善案を伝えることで、技術者としてより強い共感を持って理解してもらえていると思います」
臼倉 「現時点ではまだまだ多くの方々にサポートをいただきながら学ぶことが多いですが、技術力という自分の土台をしっかり固め、会社の海外展開に貢献できるよう知識と経験を積み上げていきます」
戸村 「KEL社は長期的にはインドネシア国外への展開も視野に入れているので、まずは同社との関係をさらに深化させてその事業拡大に貢献したいですね。当社は将来的に海外へのさらなる事業進出を目指していますが、諸外国や現地企業との競争も激化しています。そうした中で、TEPCOが常に魅力的なものを提供できるよう全力を尽くします」