福島第一原子力発電所の状況について(日報)
2021年5月20日
東京電力ホールディングス株式会社
福島第一廃炉推進カンパニー
福島第一原子力発電所の状況について、以下のとおりお知らせいたします。
(下線部が新規事項)
【主な作業実績と至近の作業予定等】
・5月20日午後2時3分頃、発電所構内2号機南側エリアにおいて、作業中に負傷者が発生し、入退域管理棟救急医療室の医師の診察を受けたところ、緊急搬送の必要があると診断されたため、午後2時38分、救急車を要請。
状況は以下のとおり。
・負傷者の所属 協力企業作業員
・身体汚染の有無 なし
・発生状況 作業中、右足の小指を敷鉄板に挟まれ負傷した。
・3月2日午後6時18分、物揚場排水路に設置している簡易放射線検知器(PSFモニタ)の高警報が発生。
なお、敷地境界のモニタリングポスト及びダストモニタ、構内ダストモニタに有意な変動なし。
その後、PSFモニタ指示値は継続して低下傾向にあり、当該警報について午後9時44分、警報はクリア。また、プラント関連パラメータに異常がないことを確認。
警報発生後、PSFモニタ近傍から採取した水を分析した結果は以下のとおり。
[当該、PSFモニタ近傍水]
午後6時45分採取(警報発生後)
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値0.95 Bq/L)
・セシウム137 :16 Bq/L
・全ベータ :890 Bq/L
[参考]
3月1日採取(警報発生前)
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値0.66 Bq/L)
・セシウム137 :1.0 Bq/L
・全ベータ :3.1 Bq/L
モニタ指示値が低下傾向にあること、プラントパラメータに異常がないこと、及び分析結果から、汚染水の漏えいはないものと考えているが、全ベータが高い値を示していることから、念のため排水路ゲートを「閉」する。
3月2日午後11時40分、当該排水路に設置してあるゲートを「全閉」。排水路に溜まった水の回収を3月3日午前0時28分に開始し、移送に異常のないことを確認。
また、当該排水路から直接採取した水を分析した結果は以下のとおりであり、低下傾向であることを確認。
[当該排水路水]
3月2日午後10時45分採取
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値0.78 Bq/L)
・セシウム137 :4.4 Bq/L
・全ベータ :60 Bq/L
3月3日午前7時35分、当該排水路近傍の設備について、パトロールを完了し、漏えい等の異常がないことを確認。
また、継続して当該排水路の水を回収しており、回収した水については、タンクエリアの堰内へ移送している。
物揚場前の海水ならびに当該排水路から採取した水を分析した結果は、以下のとおり。
物揚場排水路近傍海水の分析結果については、通常の変動範囲内の値であることを確認。
また、当該排水路水の分析結果については、継続して低下傾向を示していることを確認。
[物揚場前海水]
3月2日午後11時20分採取
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値0.65 Bq/L)
・セシウム137 :0.64 Bq/L
・全ベータ :24 Bq/L
[物揚場排水路水]
3月3日午前5時5分採取
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値0.52 Bq/L)
・セシウム137 :2.6 Bq/L
・全ベータ :23 Bq/L
物揚場排水路から採取した水を分析した結果、通常の変動範囲内の値であることを確認したことならびに物揚場排水路の清掃を完了したことから、3月9日午後7時5分に物揚場排水路に設置してあるゲートを「開」とした。
ゲート開前後においてPSFモニタの指示値に有意な変動なし。
また、敷地境界のモニタリングポストおよびダストモニタ、構内ダストモニタに有意な変動なし。
ベータ・ガンマ弁別型PSFモニタ(※1)を新設するまでの間は、以下のとおり対応する。
①排水分析の強化(通常1回/日→強化中3回/日)を継続する。
②現行モニタの放射能濃度750Bq/Lで原因調査を開始し、上昇要因がベータ線核種と確認された場合(※2)には、ゲートを閉止する。
③上記②にかかわらず、現行モニタの放射能濃度が1,500Bq/Lとなった場合には、ゲートを閉止する。
(※1)ベータ線、ガンマ線をそれぞれ個別に測定できるPSFモニタ
(※2)全ベータ線放射能の分析結果がセシウム137放射能濃度の10倍を超え、かつ全ベータ放射能濃度が200Bq/L以上となった場合
[物揚場排水路水分析結果]
3月9日午前7時20分採取
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値0.78 Bq/L)
・セシウム137 :0.91 Bq/L
・全ベータ :2.9 Bq/L
物揚場排水路の流域を調査したところ、一時保管エリアW2で比較的線量が高いゲル状物質が発見された。同物質は、保管していたコンテナ下部のアスファルト上に確認されたもので、3月24日、ゲル状物質が70μm線量当量率において、13mSv/hの線量を確認。
また、当該箇所付近に保管していた複数のコンテナのうち、1個のコンテナにおいて、側面下部の一部が腐食していたことを確認。(3月2日に補修済み)
3月25日、腐食が確認されたコンテナの蓋を開けて、上部から調査したところ、震災後の作業で発生したウエス(布や紙)や養生シート、樹脂製配管等の廃棄物がビニール養生されている状態で保管されており、70μm線量当量率において10mSv/hの線量を確認。このことから、当該コンテナには、上記廃棄物以外にも70μm線量当量率の高い廃棄物が保管されていることが考えられる。
以上のことから、コンテナ内に保管されていた廃棄物がコンテナの外に流出した可能性が否定できないと考えている。
このことから、3月25日午後6時25分、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第62条の3に基づき制定された、東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則第18条第11号「発電用原子炉施設の故障その他の不測の事態が生じたことにより、核燃料物質等(気体状のものを除く)が管理区域内で漏えいしたとき。」に該当すると判断。
ゲル状物質については、3月24日に回収し、周辺の地表面上へ除染材(塗膜剥離型除染材)の塗布、シート養生、および土のう設置を実施。今後、準備が出来次第、当該地点周辺の地表面のはぎ取りを行う。
また、敷地境界のモニタリングポストおよびダストモニタ、構内ダストモニタに有意な変動は確認されていない。
当該排水路のPSFモニタ高警報が発生した原因調査を継続するとともに当該排水路における放射能濃度の監視を継続する。
3月31日午前2時33分、降雨の影響により、物揚場排水路に設置している簡易放射線検知器(PSFモニタ)の指示値が、高警報設定値の1500Bq/Lに対して、一時的に750Bq/Lを超えたことから、念のためサンプリングを実施。
サンプリング試料の分析結果については、以下のとおり。
確認時刻:3月31日午前4時40分
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値0.99 Bq/L)
・セシウム137 :5.2 Bq/L
・全ベータ :15 Bq/L
なお、PSFモニタは、午前2時37分に783Bq/Lの最大値を示しているが、それ以降は指示値が下降し、現在は平常値を示している。
また、敷地境界連続ダストモニタ、構内連続ダストモニタ、モニタリングポスト等には有意な変動なし。引き続き監視を継続する。
4月5日午前11時20分、降雨の影響により、物揚場排水路に設置している簡易放射線検知器(PSFモニタ)の指示値が、高警報設定値の1500Bq/Lに対して、一時的に750Bq/Lを超えたことから、念のためサンプリングを実施。
サンプリング試料の分析結果については、以下のとおり。
採取時刻:4月5日午後0時
・セシウム134 :検出限界値未満(検出限界値0.58 Bq/L)
・セシウム137 :8.3 Bq/L
・全ベータ :37 Bq/L
上記の核種に加えて鉛・ビスマスの天然核種も検出されており、これらが今回のPSFモニタの指示値上昇に影響したものと考えている。
なお、PSFモニタは、午前11時29分に約800Bq/Lの最大値を示しているが、それ以降は指示値が下降し、現在は平常値を示している。
ゲル状の物質の付近にあった瓦礫類収納容器を調査したところ、一部に著しい腐食のある瓦礫類収納容器(1基)の中に、水分を含んだ吸着シート等が入ったビニール袋、および容器底部に水が溜まっていることを発見。この水とゲル状の物質を分析した結果、ともにセシウム137に比べストロンチウム90 が有意に高いこと、および化学的性状についても類似していることを確認。
また、同エリアにおいてゲル状の物質の除去、ベータ線量率が高い箇所の舗装の剥がし打替え、飛散防止と流出防止の塗装を実施後、物揚場排水路の全ベータ放射能濃度が上昇していないことを確認。
これらの調査結果から、瓦礫類収納容器の腐食部からゲル状の物質が漏えいし、降雨時にこのゲル状の物質に接触した雨水が排水路に到達し、PSFモニタ高警報を発生させ、港湾内に漏えいしたものと判断。
このことから、5月20日午後1時15分、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第62条の3に基づき制定された、東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則第18条第10号「核燃料物質等が管理区域外で漏えいしたとき。」に該当すると判断。
なお、本事案について以下の対策を実施。
・当該エリアのベータ線量率が高い箇所の舗装を剥がして打替え、および放射性物質の飛散と流出を防止するための塗装を実施(4月19日実施済)
・物揚場排水路におけるモニタリング強化(βγ弁別型PSFモニタを追設し、5月21日から本格運用開始予定)
・瓦礫類収納容器からの放射性物質漏えいに関する点検強化
また、物揚場排水路のPSFモニタの高警報が発生した以降の港湾内のサンプリング結果、および敷地境界のモニタリングポストおよびダストモニタ、構内ダストモニタについては有意な変動は確認されていないことから、環境への影響はないものと評価。
【サブドレン他水処理施設の状況】
【地下水バイパスの状況】
【構内および海洋のサンプリング調査の状況】
・海水(港湾内、港湾外近傍、1~4号機取水口内)、地下水(1~4号機護岸、H4・H6タンクエリア周辺、地下貯水槽周辺、地下水バイパス)、排水路等の水質調査を実施した結果、至近の分析値と比較して有意な変動なし。
※サンプリング結果の詳細については当社ホームページをご参照ください。
<福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果>
https://www.tepco.co.jp/decommission/data/analysis/
<福島第一原子力発電所における日々の放射性物質の分析結果>
https://www.tepco.co.jp/decommission/data/daily_analysis/
【原子炉および使用済燃料プールの冷却状況】
<原子炉>
・1~3号機原子炉への注水を継続中(各号機ともに冷温停止状態を継続中)。
・原子炉格納容器水位、温度等のパラメータを監視していたところ、2月18日に1号機の原子炉格納容器水位に低下が見られたことから、他のパラメータを確認したところ、1号機において2月15日以降、3号機において2月17日以降に原子炉格納容器温度計の一部に低下傾向が見られた。このため、2月18日に関連パラメータを評価していたところ、1、3号機ともに原子炉格納容器水位が低下傾向にあると判断。
原子炉圧力容器底部温度、格納容器ガス管理システムの放射能(希ガスモニタ含む)、敷地境界のモニタリングポスト及びダストモニタ、構内ダストモニタに有意な変動は認められていないことから、外部への影響はないと判断。
地震後の点検において、原子炉注水設備のパラメータ及び目視点検では異常が確認されておらず、原子炉への注水は適切に行われていることを確認しており、原子炉格納容器水位低下の要因としては地震による原子炉格納容器損傷部の状況変化も考えられるが、今後もパラメータを注視して監視していく。
原子炉建屋水位については現状では有意な変動は確認されていないが、パラメータの詳細評価及び監視を行っていく。
2月18日に水位が低下傾向にあると判断して以降、水位計および関連パラメータについて慎重に監視を続けているが、1号機の原子炉格納容器内の水位は、緩やかな低下が続き、5月7日午前11時11分、水位計L2(T.P.+5,664mm)の設置位置を下回ったと判断。
1号機原子炉格納容器内の水位については、水位計(接点式)による監視を確保するため、接点の最下端である水位計L1(T.P.+5,364mm)を下回らないよう、念のため、水位計L2(T.P.+5,664mm)を下回った段階で、原子炉注水量を増やすこととしている。これに伴い、午後0時43分、原子炉注水量を以下のとおり変更。
[原子炉注水量変更]
1号機原子炉注水量:3.0 m3/h → 4.0 m3/h
その結果、原子炉格納容器内の水位が温度計T2(T.P.+5,964mm)と水位計L2(T.P.+5,664mm)の設置位置の間にあると評価。
また、午後0時47分現在、原子炉格納容器温度、原子炉圧力容器底部温度、原子炉格納容器ガス管理システムの放射能濃度などのパラメータ、敷地境界モニタリングポストおよびダストモニタ、構内ダストモニタ等に有意な変動はなく、外部への影響がないことを確認。
5月7日、水位監視確保の観点から実施した1号機の原子炉注水量の変更に伴い、原子炉格納容器内の水位が上昇し、5月11日午前10時5分、温度計T2(T.P.+5,964mm)の設置位置を上回ったと判断。
これに伴い、5月11日午前11時25分、原子炉注水量を以下のとおり変更。
[原子炉注水量変更]
1号機原子炉注水量:4.0 m3/h → 3.0 m3/h
また、5月11日午前11時27分現在、原子炉格納容器温度、原子炉圧力容器底部温度、原子炉格納容器ガス管理システムの放射能濃度などのパラメータ、敷地境界モニタリングポストおよびダストモニタ、構内ダストモニタ等に有意な変動はなく、外部への影響がないことを確認。
[原子炉格納容器圧力の低下]
1号機については原子炉格納容器内の水位上昇に伴い、原子炉注水量を4.0m3/hから3.0m3/hに変更し、監視強化を実施していたところ、原子炉格納容器圧力が、5月14日午後1時15分より低下傾向にあることを確認。
1.16キロパスカル(5月14日午後1時15分) → 0.79キロパスカル(5月14日午後2時) → 0.12キロパスカルで安定(5月14日午後6時20分)
過去の原子炉注水停止試験においても、今回同様に原子炉格納容器内の水位低下に伴う原子炉格納容器圧力の低下が確認されており、原子炉注水量を変更し、原子炉格納容器内の水位低下に伴い、漏えい箇所が露出したものと推定。原子炉格納容器温度、原子炉圧力容器底部温度、原子炉格納容器ガス管理システムの放射能濃度などのパラメータ、敷地境界モニタリングポストおよびダストモニタ、構内ダストモニタ等に有意な変動はなく、外部への影響がないことを確認。
引き続き、水位および関連パラメータについて、慎重に監視してまいる。
・1号機原子炉格納容器内水位[5月20日午前11時現在]
水位は、水位計L3(T.P.+6,264mm)と温度計T2(T.P.+5,964mm)の設置位置の間にある。
(原子炉格納容器底部はT.P.+4,744mm)
※原子炉への注水は安定して継続実施中(1号機原子炉格納容器から流出した水は、1号機の滞留水として建屋内で回収するため建屋外へ漏えいしておらず、再び原子炉へ循環注水している)
※原子炉圧力容器底部温度、格納容器ガス管理システムの放射能および敷地境界モニタリングポスト等に有意な変動なし
※1号機は、原子炉格納容器水位に応じた注水量の調整を継続しているため、監視強化を実施。なお、水位の変動に伴い格納容器圧力も変化するが、これまでの監視において外部への影響がないことを確認。
・5月10日に延期をお知らせした、1号機の原子炉注水設備における、炉心スプレイ系注水配管の点検に伴う原子炉注水量変更については、現状の水位が、水位計L3(T.P.+6,264mm)と温度計T2(T.P.+5,964mm)の設置位置の間にあり、原子炉への注水は安定して継続していることから、以下のとおり原子炉注水量を変更する。
[原子炉注水量変更実績]
(5月18日午後2時22分)
炉心スプレイ系原子炉注水量 :1.5 m3/h → 0 m3/h
給水系原子炉注水量 :1.5 m3/h → 3.0 m3/h
[原子炉注水量変更予定]
(5月28日)
炉心スプレイ系原子炉注水量 : 0 m3/h → 1.5 m3/h
給水系原子炉注水量 :3.0 m3/h → 1.5 m3/h
<使用済燃料プール>
・1,2,3,5,6号機使用済燃料プールを冷却中(3,4号機は燃料取り出し済み)。
【1~6号機の状況】
※プラント関連パラメータ等の詳細については当社ホームページをご参照ください。
<水位・圧力・温度など>
https://www.tepco.co.jp/decommission/data/plant_data/
以 上
添付資料
参考資料(最終更新日時:2020年12月31日)
参考資料(最終更新日時:2019年12月31日)
参考資料(最終更新日時:2018年12月31日)
参考資料(最終更新日時:2017年12月31日)
参考資料(最終更新日時:2016年12月31日午後3時)
参考資料(最終更新日時:2015年12月31日午後3時)
参考資料(最終更新日時:平成26年12月31日午後4時)
参考資料(最終更新日時:平成25年12月31日午後3時)
参考資料(最終更新日時:平成25年10月22日午後3時)
参考資料(最終更新日時:平成24年4月7日午後3時)
※上記資料の最新版は、【「東北地方太平洋沖地震による影響などについて」実績ファイル】ページをご覧ください。