カーボンニュートラル社会の実現に向け、実効性の高い監督機能を発揮します

東京電力ホールディングス株式会社 取締役会長 小林 喜光

「責任」と「企業価値の向上」の両立

2021年6月29日に行われた第97回株主総会において、TEPCOグループが福島への責任を貫徹しつつ、企業価値を向上していくといった「責任」と「企業価値の向上」を両立する事業運営や経営改革を主導するにふさわしい13名の取締役が選任されました。これまで1名であった女性の社外取締役が2名に増えるなど、ジェンダーや専門知識、経験等、より多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成され、槍田取締役会議長の退任後、私が取締役会長に着任するとともに、私を含め新任の取締役3名を加えた取締役会として再出発いたしました。
私と当社グループとの関わりですが、まず、2012年から2015年までの約3年間、東日本大震災直後の経営改革を社外取締役として監督してまいりました。
当時は、福島への責任を貫徹するための基盤整備が喫緊の課題であり、それを果たしていくために企業価値を向上させ、「稼ぐ」ための経営改革に本格的に着手したばかりでもありました。また、2015年に社外取締役を退任した後も、東京電力改革・1F問題委員会や原子力損害賠償・廃炉等支援機構運営委員会の委員として、さまざまな立場で10年間にわたり当社グループに関わってまいりました。
このように当社グループの変化を間近で見てきた中、2012年の指名委員会等設置会社への移行、2016年のホールディングカンパニー制の導入を通じ、現在のガバナンスは、体制に加え、その実効性も機能していると考えています。
さらに、グループへのガバナンスについても着実に浸透し、各基幹事業会社の社長を含めて、経営者のベクトルが一致してきたと感じています。具体的には、「カイゼン活動」による業務効率化、既存事業の強化と「稼ぐ」を意識した仕事の進め方の浸透、事業領域の拡大等、旧来における東京電力の企業文化の変革が確実に進んできていることがあげられます。
一方、昨今の原子力に関わる一連の不適切事案や、電話勧誘販売業務に関する業務停止命令等により、社会やお客さまから信頼を失う事案が継続していることは大変残念なことです。
こうした状況を踏まえ、私の責任の下でまず取り組むべきは、継続的な課題である企業文化の改革を通じ、社会やお客さまからの信頼を取り戻すことだと考えています。
今回、新たなメンバーで再出発した取締役会は、独立性と客観性をより高め、実効性の高い監督機能を通じて、当社グループが持続的に成長できるよう、業務執行側の果断な経営を支援していくことが使命と考えており、取締役会長として、その運営を牽引してまいります。

エネルギー事業の新たな創造

いまだ終息の見通せない新型コロナウイルスの影響により、世界的に社会構造が変化し、また、環境問題、とりわけカーボンニュートラルへの関心が急速に拡大し、関連する取り組みにも注目が集まる中、TEPCOグループの事業環境はこれまで以上に大きく変化しています。こうした中、従来の電気事業を継続するだけでは、2021年8月に認定された「第四次総合特別事業計画(四次総特)」の中で掲げる、年間4,500億円規模の利益創出を達成することは極めて困難です。当社グループは、賠償・復興、廃炉といった福島への責任を貫徹することはもとより、日本、そして世界的な社会課題の解決に向けて、エネルギー事業を先導する企業であるべきであり、また、その責任を担っていると考えています。
私自身、特に気候関連の問題は、将来に向けて具体的な手を早急に打たなければならないという危機感を抱いています。これは、株式会社三菱ケミカルホールディングスの経営者として、ダボス会議等の世界の経営者が集まる会議体へ参加し、多くの議論を重ね、問題意識を共有してきた経験によるものです。欧米のトップ企業は、かつて利益を優先することで生じた気候関連の問題に真摯に向き合い、企業の存在価値を、あらゆるステークホルダーのためにあるとの認識に変化させ、社会の持続的成長、すなわち、サステナビリティに真剣に取り組まないと経営が立ち行かなくなるという危機感を10年以上も前から持っていました。一方、日本では、昔から「三方よし」といった言葉に代表されるように、ステークホルダーとの関係を重視する文化が根底にありましたが、利益や資本効率がそれに劣後してしまう傾向があったように感じます。
現在は日本もステークホルダーの利益とともに、企業自体の利益も重視する行動に変化していますが、企業は、まずは稼がなければ、社会に価値を還元することはできません。さらに、「稼ぐ」ことに加え、ESGへの取り組みに対する世界的な関心が高まりを見せる中、トレードオフの関係でなく、両者の最適点を探ることがこれからの資本主義に問われています。
昨今のESG潮流において、日本はこれまで以上に気候関連の問題に対する取り組みを進めていく必要があり、日本全体のCO2排出量の約40%を占めるエネルギー部門における取り組みの進展は、カーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献すると確信しています。今後、さまざまな技術的選択肢を活用し、利益拡大や企業価値の向上につなげていけるよう、内外の技術的動向も見定めながら、グループ一丸となって、カーボンニュートラルへの取り組みを深掘りしてまいります。さらに、当社グループであれば、社会やお客さまにカーボンニュートラルという新しい価値の提供を通じて、日本の経済成長の根幹であるエネルギー事業の新たな創造を実現できる、また世界的なカーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献できるチャンスであるととらえています。
当社グループは、カーボンニュートラルの実現に全力で取り組み、エネルギー事業の新たな創造を通じ、「福島への責任」と「企業価値の向上」を両立させることで、四次総特に掲げた4,500億円規模の利益創出を達成するために、取締役会長として、先頭に立って取り組んでまいります。

東京電力ホールディングス株式会社
取締役会長
小林 喜光