人権尊重
人権デュー・ディリジェンス
東京電力グループは事業活動のすべての局面において人権を尊重します。自らの事業活動によって影響を受ける人々をはじめ、あらゆるステークホルダーの人権が尊重されるよう、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権DDの仕組みを構築しています。
東京電力グループ 人権尊重の仕組み
人権DDを優先的に対応するスコープ
当社グループでは、以下を優先対応スコープとして、人権方針に記載の人権課題を軸とした人権影響評価・エンゲージメントを実施しています。
- ※
自社=東京電力ホールディングスおよび基幹事業会社
「自社(従業員)」の人権影響評価について
「自社(従業員)」に関する人権DDの実施にあたり、当社事業における負の影響の特定(人権影響評価)を行いました。社外の専門家に意見をいただきながら社内ルールや社員への意識調査結果、過去の訴訟事案や人権に関する相談・通報内容等を分析、人権課題を抽出し、「人権侵害の発生の可能性」、「人権侵害の規模」、「人権侵害が及ぼす範囲」、「人権の完全回復の不可能性」の観点から評価しました。
結果、「ハラスメント」、「労働時間」、「個人情報の適正な管理」の項目について特に負の影響が大きいと評価されました。この3つの課題については、かねてより対応をしていましたが、2022年度より、重要人権課題として、更に不適切事例の発生防止や発生した際の影響の最小化に重点的に取り組んでいます。
「自社(事業)」の人権影響評価について
当社では以下のプロセスにより人権影響評価を実施しています。
- ① 国際規範やガイドライン等(国際連合の指導原則、OECDガイダンス等)で示されている、企業が考慮すべき主要な人権課題を設問とした人権尊重セルフアセスメントを実施
- ② 回答結果を踏まえ、外部専門家によるインタビューを実施し、各部門が潜在的に課題として認識している事項を把握
- ③ ①②をもとに、「人権侵害の発生する可能性」・「人権侵害の規模」・「人権侵害が及ぼす範囲」・「人権の完全回復の不可能性」の観点から評価し、重要人権課題の抽出・優先順位付け、行動計画を策定
これまでの人権影響評価のカバー率
人権尊重セルフアセスメントについて、2024年度はHD・各基幹事業会社の本社全組織を対象に実施し、HD・基幹事業会社を合計した実施率は56.0%となっています。
2025年度は、HD・基幹事業会社全社(第一線職場を含む)に展開し、実施率100%を目指します。
HD | 本社全組織に実施 | 100% |
---|---|---|
PG | 配電部、工務部、用地部、電子通信部、パワーグリッドサービス部、内部監査室、秘書・リスクマネジメント室、経営企画室、技術統括室、技術・業務革新推進室、業務統括室、人財開発室、調達室、事業開発室、海外事業推進室、サイバーセキュリティセンター、スマートメーター推進室、系統運用部 | 33.3% |
RP | 水力部、風力部、内部監査室、経営企画室、技術・業務革新推進室、業務統括室、海外事業開発室 | 45.9% |
EP | 法人営業部、お客さま営業部、カーボンニュートラル推進部、新電力営業室、業務統括室、内部監査室、ガス事業部、サービスソリューション事業部、業務革新推進室、カイゼン推進室、運用部、経営企画室、DX推進室、CX向上室、人財戦略・育成推進室 | 59.5% |
これまでの取り組みからは、人権への負の影響が生じた、またはその恐れがある事項、ならびに法令に関わる事項等は着実に対応していることを確認しています。また、指導原則等の国際規範に基づき「望ましい」とされている取り組みについても、関係箇所と優先度や進め方を協議しながら対応を進めています。
今後、社員教育やセルフアセスメントの実施拡大を通じて、「東京電力グループ人権方針」の社内理解を促進するとともに、自社・自組織のみならず、事業活動を通じて関係する社外ステークホルダーの人権尊重を意識した事業運営を実現できるよう取り組んでいきます。
各所の対応事例
-
○ ダイバーシティを意識した発電所内施設の拡充
- 山間部にある水力発電所やダム施設では、女性従業員への配慮が不十分なトイレ設備があり、トイレの使用 に負担を感じている状況を把握したため、女性従業員を中心としたワーキンググループによる環境改善を検討し、実施しました。(RP)
-
○ 外国籍の従業員に配慮した対応
- 作業上のリスクを正しく理解し、安全意識を高めるために、「安全重点5箇条」の外国語版(英語・ベトナム語)を作成し、展開しました。(PG 工務部)
- 災害事例等を踏まえた作業上の注意点に関する資料について、写真等を活用して視覚的に理解しやすくするとともに、作業員の母国語にあわせて翻訳したものを作成し、展開しました。(PG 上野支社)
- 海外拠点における相談窓口の理解度、信頼度の向上のため、英語で相談窓口の周知を実施し、海外拠点における従業員の心理的安全性を高めました。(PG 海外事業推進室)
-
○ 太陽光パネルの調達リスクに対する対応
- 太陽光発電による電力調達(FIT制度除く)の対応方針を策定し、方針に沿った対応を展開しています。(EP)
-
○ ビジネスパートナーの人権リスクへの対応
- ビジネスモデル上関係の深い子会社と、発生したリスクを速やかに共有する体制を構築しました。また、リスクに関する積極的なコミュニケーションを行い、バリューチェーン全体に関わる全ての人権が尊重の対象であることを確認しました。(HD エリアエネルギーイノベーション事業室)
-
○ 人権リスクへの対応力を強化する取り組み
- 組織内にリスク担当を配置し、顕在化したリスクへの対処はもとより、潜在的なリスクを早期に発見し、リスク担当を通じて本社リスクラインへ報告する体制を構築しています。(各社)
- 海外の出資先に係る人権に関するリスクの洗い出し・評価を実施し、社内関係者内で認識を共有し、人権に関するリスク対応強化を図っています。(RP)
-
○ 取引先のリスク情報の積極的な取得
- 取引先と定期的に実施している意見交換の際に、意見・要望等を収集し、リスク情報の把握に努めています。(PG 調達室)
-
○ 海外事業における人権尊重に関わる取り組み
- 当社の出資比率が限定的な海外の出資先に対しても、当社指名取締役を通じた人権尊重の働きかけを行っています。(RP)
「連結子会社」の人権影響評価について
- 2021年度に続き、2022年度は、人権方針の適用範囲であると同時に東京電力HDと基幹事業会社のサプライヤー・ビジネスパートナーである主要連結子会社38社を対象に、「人権尊重セルフアセスメント」(72項目-人権尊重の自社体制、サプライヤーに関する人権対応、人権方針でコミットしている9つの人権課題に関する状況や対応等)を実施しました。
- 連結子会社の会社規模、設立年や事業特性によって特徴があることを踏まえ、各社の状況を確認の上、課題を把握し、対策を立案・実施する必要があることから、2022年度より優先順位をつけて個別にインタビューを行っています。
2022年度は7社、2023年度は17社、2024年度は3社を実施し、3年で主要連結子会社を一巡しました。 - 2023年度には、各社に「人権担当」を設置してHDとの連携を強化するとともに、連結子会社各社の自立的な人権尊重の取り組みを促すために「東京電力グループ 人権方針の取り組み推進ガイドライン」を策定しました。
- 2024年度には、ガイドラインに基づき連結子会社各社が実施計画を策定しHDによるモニタリングを開始するとともに、海外子会社向けに英語版のガイドラインを策定しました。
連結子会社の人権尊重推進の仕組み
<参考>
「サプライヤー」の人権影響評価について
サプライチェーンにおける人権尊重を強化するため、「調達基本方針」に人権尊重の要素を追加し、「サステナブル調達ガイドライン」を2022年5月に策定しました。さらに「サステナブル調達ガイドライン」を適切に実施していることを宣言する「確認書」を提出いただくとともに、遵守状況確認のため「サステナブル調達アンケート」を実施する等、サプライヤーの人権尊重を徹底する仕組みを構築し、2022年度より対応を開始しました。
サプライヤーの人権尊重を徹底する仕組み
- サプライチェーンにおける人権尊重を強化するためPDCAサイクルを適用しています。
- 3年で一巡するPDCAサイクルとして運用します。
契約書への人権に関する遵守事項の追加
サプライヤーに対しては、これまで「サステナブル調達ガイドライン」の精神を遵守する証として「確認書」を取得しておりました。
さらに2024年度からの取り組みとして、契約書の条項に人権に関する遵守事項を織り込むことで、契約上の強化を図っています。具体的には、受注者の義務として、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」の遵守および、自らの責任において契約上のサプライチェーンにおける人権DDを行うことを規定しています。
また、人権DDにより人権への負の影響が明らかになった場合、または受注者の事業活動において人権侵害が判明した場合、速やかに発注者に申し出て是正計画を作成し実施することについて、契約条文で規定し、サプライヤーと合意のうえ契約締結しています。
サステナブル調達アンケート実施結果
人権をはじめ、CSR、コンプライアンス、労働安全衛生、環境、リスクマネジメント、サプライチェーン全体での持続可能な発展と地域社会への貢献に関する約60問について、2022年度は約300社、2023年度および2024年度は約650社から回答いただきました。
その結果、会社の規模が大きくなるほど、すべての項目で概ね均一に取り組んでいることが分かりました。
■全社に回答をフィードバック
回答いただいた全サプライヤーに、人権をはじめ、7領域について、以下の3つ値をレーダーチャートで結果を表示し、フィードバックを行いました。ベンチマークとして、全体平均、類似規模のサプライヤーの平均を示し、回答いただいた各サプライヤーが自社と比較ができるようにしています。
ベンチマーク用資料
ベンチマークとして以下の値を表示
- 「全体平均」
- 「貴社と類似規模の平均」
- 「貴社」
<フィードバックのイメージ>
人権尊重に関する研修資料
サステナブル調達に関する約60の設問・7領域のうち、「人権」の領域については、今後取り組みの余地があることが確認されたことから、解説資料を作成し、各社での研修にお使いいたただけるようフィードバック時に添付しました。
資料では、サプライヤーを含むあらゆるステークホルダーを対象とした「人権に関する通報窓口」を紹介しています。

■対話の実施
サプライヤーに対する人権DDのスコーピングは、「責任ある企業行動のための OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」に基づき、「セクター・事業特性」「製品」「地理的要素」の3つの観点で検討するとともに、UNEP FI Human Rights Guidance ToolやFTSE Risk Exposure等を活用・分析し、2022年度は建設セクターを優先順位【高】と結論付けました。
課題 | 労働安全衛生、多重下請け構造による作業員の搾取、外国人労働者問題等 |
---|
2022年度は、「サステナブル調達アンケート」の回答状況を踏まえ、6社とエンゲージメントを実施しました。
2023年度は、「責任ある鉱物調達」「児童労働」「強制労働」を課題として、蓄電池を取り扱うサプライヤー3社とエンゲージメントを実施しました。
2024年度は、「人権」「環境」「リスクマネジメント」を主な課題として、サプライヤー4社とエンゲージメントを実施しました。
当社としては、以下の取り組みにより自社サプライチェーンにおける人権DDの必要性について働きかけ、フォローしてまいります。
取り組み内容 | 期待される効果等 |
---|---|
サステナブル調達アンケートの結果の個社別フィードバック | 自社の強み・弱みを客観的に認識 |
人権尊重の資料の配布(方針・通報窓口の周知) | 東電グループの人権尊重の姿勢についての理解促進 |
継続的なエンゲージメントの実施 | コミュニケーション強化と潜在リスク把握、人権DD実施要請 |