新型コロナウイルスへの対応
COVID-19(新型コロナウイルス)の蔓延は、世界規模での重大な公衆衛生・経済の危機をもたらしました。いまだ終息の見通しは立っておらず、電気事業における影響もあらわれています。エネルギー供給事業は、感染拡大下においても、活動継続の責任を負う、重要なインフラ事業の一つです。TEPCOグループでは、現時点において、感染拡大に起因する重大な供給支障は発生していませんが、引き続き社会的責務を果たしていくとともに、今後の予測を踏まえたリスク管理と、事業活動へのさまざまな影響に対する緩和措置を講じてまいります。
取締役会における議論(2020年度)
- 新型コロナウイルス感染症の流行による経済構造の変化について検証のうえ長期的な計画の検討を行うこと
- 新型コロナウイルス感染症の流行中の対応についても検討すること
- 新型コロナウイルス感染症が再流行した場合の電力需要を想定し利益計画に反映すること
- 新型コロナウイルス感染拡大による中長期的な影響については、エネルギー産業構造の変化やESGに関する社会の動向を踏まえてビジネスモデルの見直しを含めて議論していく
ICGN「共同のガバナンス責任に関する声明」
ICGN(国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)は、「この前例のない課題をともに対処し、今後のガバナンス対話の新時代を先取りするにあたっての共通の関心事項」として、「共同のガバナンス責任に関する声明」を、投資家と企業に対して公表しました。同声明における「企業に向けたガバナンスの優先事項」に対応したTEPCOグループの情報を以下に整理します。
ICGNによる「企業に向けたガバナンスの優先事項」 | TEPCOグループにおける影響と対応 | 今後の見通し、アフターコロナにおける対応 | |
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1. 社会的責任 | 正社員・派遣社員も含め、全ての職員の健康と福利の確保 | 新型インフルエンザ蔓延に備えたリスク管理・危機管理対応(BCPプラン)の適用により、正規・非正規社員の健康を確保のうえ、事業を継続 | 「新しい生活様式」に対応した働き方改革を推進。DXの活用による柔軟かつ強靭な新しい業務スタイルを定着させる |
2. 役員報酬 | 従業員の人員削減、給与または賞与削減に関する従業員全体への施策を反映したものでなければならない | 影響なし
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現時点で従業員の雇用や給与水準および役員報酬に影響を及ぼす財務インパクトは見込んでいない |
3. 配当 | 感染蔓延の影響がある中で、配当支払いの重要性は過小評価されるべきではない | 影響なし
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収益・債務の状況、賠償・廃炉に係る当社の支払いの実績および見通しを踏まえながら、原子力損害賠償・廃炉等支援機構による公的資本の回収手法とあわせた検討が必要 |
4. 資本調達 | いかなる新規の資本調達も既存株主に優先して提示されることを選好するが、効率的な資本調達を可能にするための努力を支持 | 影響なし
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今後の財務的なインパクトを見極め、効率的な資本調達計画を検討 |
5. 株主総会 | バーチャルな株主総会においても企業が投資家と対話し、質問に適切に対応されることを推奨 | 2021年度は6月29日に定時株主総会を開催。株主には、書面またはインターネットを通じた議決権行使を推奨 | 「新しい生活様式」に対応した株主との対話のあり方を検討。2022年度以降も感染症の蔓延状況に応じて開催方法を検討 |
6. 企業報告 | 新型コロナウイルス蔓延への対処方法を、できれば年次報告書で公表することを推奨 | 本報告書にて公表 | 新型コロナウイルスに関連した経営への影響については、年次報告書のみならずウェブサイト等でも適時情報を発信していく |
エネルギー供給事業者としての責務
日本国内では、2020年4月7日付で「新型インフルエンザ等対策特別措置法」第32条第1項の規定に基づき、「新型コロナウイルス感染症に関する新型インフルエンザ等緊急事態宣言」がなされました。また、同日「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の改定が行われ、この中では「緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者」として、電力、ガス等のインフラ関係事業者があげられ、4月8日に、電気事業者及びガス事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関等に対して、政府より、電気及びガスの安定的な供給及び現場の安全の確保に万全を期すための事項が要請されました。
TEPCOグループは、エネルギーの安定供給を担うインフラ事業者としての社会的使命に基づき、今般の政府要請への対応はもとより、各ステークホルダーが直面する短期・長期の課題に対して、事業活動を通じてきめ細かく対応してまいります。
政府による要請事項
- 業務計画に盛り込まれた事項を確実に実施するとともに、発電所、中央給電指令所、ガス製造所などの重要施設の職員が罹患した場合における、①代替要員の確保をはじめとする人員計画の精査、②代替施設の活用を含めた対応、③サプライチェーンの混乱が長期化することを見据えた代替的な調達先の確保など、必要な物品・資機材を安定的に調達するための措置を実施するなどのBCP対応を徹底することにより、電気及びガスの安定的な供給及び現場の安全の確保に万全を期すこと。
- 工事会社、設備の保守・点検を行う事業者、警備会社など、電気及びガスの安定的な供給及び現場の安全を確保するために必要な事業者に対して、引き続き、事業を継続するよう要請すること。
- 法令に基づき、安全確保や安定供給に支障を生じない範囲内で、検査や工事等の実施時期の見直し・繰延べ等の措置を講じること。
- 従業員に罹患者が発生した場合には、速やかに経済産業省に報告するとともに、公表等の適切な措置を講じること。
各ステークホルダーへの対応と課題
主なステークホルダー | 従業員 | 顧客 | 投資家 | 政府 | 地域社会 | |
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主なセグメント | 全職場 | 小売 | 財務部門 | コーポレート | 事業所立地箇所 | |
短期 | 課題 | 全社員が在宅勤務できない実態を踏まえた罹患防止、健康管理 | 電気・ガス料金の支払困難 | 業績見通しに関する懸念 | 安定的なエネルギー供給および現場の安全確保に関する要請 | 蔓延防止 地域協力対応要請 |
対応実績 | BCPに基づく対応 (業務実態に応じたシフト再設計、職場の環境整備を含む) |
支払延伸等の特別措置 (最新の状況を踏まえ適宜ご案内) |
財務影響の適時開示 中期経営計画の認定 (2021年8月) |
BCPに基づく対応により、新型コロナウイルスに起因する供給障害なし | 従業員の国内外出張制限、首都圏との往来の制限による、感染リスク低減の取り組み | |
長期 | 課題 | 「新しい生活様式」への適応 | 経済的打撃の長期化 | 中長期的な展望に基づく投資判断 | 情勢の変化に応じたインフラ事業者に対する追加的な要請 | 情勢の変化に応じたインフラ事業者に対する要請 |
対応策 |
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決算発表や統合報告書、エンゲージメントを通じた実績や見通しの開示 | 感染症対応のみならず自然災害にも対処し得る電力インフラのレジリエンス向上の取り組み強化 | 各地域の事情を踏まえ、できる限りの対応策を実施 |