東京電力ホールディングス株式会社 社外取締役 新川 麻

略歴

1991年4月 弁護士(現在にいたる)
2001年1月 西村総合法律事務所(現西村あさひ法律事務所)パートナー(現在にいたる)
2019年4月 東京大学大学院法学政治学研究科客員教授(現在にいたる)

当社の社外取締役を引き受けた理由をお聞かせください

弁護士として30年にわたりM&A、証券取引規制、コーポレート・ガバナンス、競争法分野の業務に携わってまいりました。2015年以降は、政府の審議会等の委員としてポリシー・メイキングの場にも参加しました。「3E(安定供給・経済性・環境)+ S(安全性)」というエネルギー政策の基本方針を踏まえながら電力市場における競争政策、エネルギーシステム改革のための諸制度、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた施策を具体化していく作業は、大変良い経験になりました。
電力・ガスの小売全面自由化以降、電力各社は厳しい競争環境にさらされており、これに加えカーボンニュートラル、再生可能エネルギーの主力電源化、電力レジリエンス強化の要請、分散型エネルギーシステムの拡大、デジタル化等の事業環境は大きく変動しています。日本に先行して電力の自由化が行われたヨーロッパ等においては、電力会社が伝統的ビジネスモデルから脱却し、新しいビジネスモデルへの転換を図ってきております。TEPCOグループが、厳しい経営課題を克服し、株主、社会、従業員、消費者等、全てのステークホルダーの期待に応えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を達成できるビジネスモデルへの転換を実現することは、日本のエネルギー政策上も非常に重要であると思い、今般社外取締役を引き受けさせていただきました。

株主や機関投資家からの社外取締役への期待が高まっているところ、その役割についてどのようにお考えでしょうか

会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上という目的を果たすためには、経営陣幹部の指名・報酬・監査それぞれの面において、独立社外取締役が主要な役割を果たすことが必要であるというのが、国際的な共通認識です。指名委員会等設置会社においては、社外取締役が過半数を占める3つの委員会を設置し、業務執行を担う執行役に対する監督機能を果たすことが会社法上強制されており、実務上は社外要件に加え独立性基準も満たした社外取締役を選任する流れになっています。社外取締役の役割の中核は、経営戦略の大枠を考えるとともに、経営陣や取締役と議論することを通じて、業務執行から独立した立場から、経営戦略に即して業務執行が行われているかをモニタリングする点にあると思います。また、異なるバックグラウンドと知見を活かして、世間における水準やベストプラクティスから乖離していると思われる点についてはその是非を議論し、その会社に適した攻めと守りのガバナンス体制を構築・強化する役割を担っていると思います。

株主や機関投資家へのメッセージをお願いします

電力事業等のユーティリティ産業は、国民生活や企業活動に不可欠な基盤を提供する使命を担っていますので、財務的な経営成績の向上だけでなく、社会、従業員、消費者といったステークホルダーの期待と信頼に応える事業運営を行うことが、持続的な発展を実現するうえで、他の産業に増して重要だと思います。TEPCOグループが、ステークホルダーからの信頼を獲得し、サステナブルな社会の実現と両立しうる中長期的な価値創造を実現できるビジネスモデルへの転換を実現できるよう、尽力させていただきます。

東京電力ホールディングス株式会社
社外取締役
新川 麻